第46話

一瞬浴室に入ってガウンを着ると、私は部屋に戻り 陸斗に声をかけた。



「ねえ、誰にメールしてるの?」



陸斗の背中が一瞬、ビクッと揺れた。



「えっ? ああ、偶然あの後 高校の時親友だった奴がうちの店に来たみたいでさ。俺が帰ってるって知って、明日会えないかってメールがきたんだ」



…嘘だよね…



私の声で、すぐにスマホを置いたもん。


まるで 隠すように。



「で? 会うようにした?」



「うーん…嫁と来てるから、とは伝えたものの、会える機会なんて そんなにないしな」



「会ったら?」



「えっ?」


陸斗は驚いた様に、私の方を振り返った。




「親友だったんでしょ? 折角だから、会えば?

私もお母さんのことが気になってるし。明日はもう、早い時間に家に帰ろうかと思ってたの」



「あ、そうだよな! お義母さんの状態、心配だよな…でも、1人で電車で帰るの 大丈夫?」




「大丈夫だよ。初めてじゃないんだし」



「そっか。ごめんな、じゃあ瀬里香の優しい気持ちに甘えさせて貰って、明日会ってくるわ」




       誰に?  


しかも、何で どこか安心した顔なの?




「じゃ、ちょっと待ってね。今 電車の時間を調べてみるから」


陸斗は早速 スマホで電車の時間を調べだした。




なんか、嬉しそう。




陸斗…… 結婚してから、初めてだよ。




あなたのことが




こんなに憎らしく思ったのは…。




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