第10章

第27話

私は思った。


最近、陸斗の様子がおかしい。 前とは違う。



瀬里香は出産本をパタンと閉じた。


なんとなく…勘だけど。



アレは今、大事な時期だから控えてるのはわかるけど……普通に抱きしめてもくれないし。


考えてみたら、電話も私からばっかだし。


LINEの既読も遅いし。



…なんか…私に隠してることでもあるのかな…



やめた! 明日は検診の日だ。 


余計なことは考えずに、もう寝よう。



私は部屋の灯りを消した。





ー翌朝 ・ 帝王病院(産婦人科)ー


「うん、順調ですよ。暑いですけど、あまり体冷やし過ぎないように気をつけてくださいね」


と 担当医が言った。



「はい、ありがとうございました」


私は深々と頭を下げて、診察室を後にした。



(陸斗、今日 外来の日だな。会えるわけないだろうけど、ちょっと診察室の前を通ってみよう)



消化器外科前の待合の椅子には、大勢の患者さんが座っていた。


(うゎ、すごい人だな。大変だな、陸斗も)



受付横のドアが開き、緑がカルテを持って出て来た。



(帰るか…)



緑が瀬里香の前を足速で通り過ぎた時、瀬里香は思わず両手で口を押さえた。


(うっ、気持ちワルイ)


突然、吐き気が襲った。


瀬里香は緑より先に 両手で口を押さえたまま、女子トイレに駆け込んだ。



ゲェーッ  空えずきだ。



私は涙目になった自分の顔を鏡に映し 思った。


(悪阻が始まったんだ…)




そこに緑が入って来て、瀬里香に声をかけた。


「あの…大丈夫ですか?」


「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます」


そう言った後に、またしても吐き気が襲った。



緑は瀬里香の背中をさすりながら、


「もしかして…おめでたですか?」


と優しく瀬里香に尋ねた。



「はい。どうやら悪阻が始まったみたいで…」


私はなんだか恥ずかしいなと思いつつ、そう言った。



「少しの間は大変でしょうけど、時期がきたら治まりますよ。赤ちゃんが元気な証拠ですね」


緑は笑顔で言った。



「はい。お忙しい中すみません、ありがとうございます」


ハンカチで口元を押さえながら、瀬里香は緑を見て礼を言った。




ん?…この人 どこかで会ったような…

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