第5章

第12話

美愛子が洋服に着替えてきた瀬里香を見て、

驚く。


「どうしたのよ、その格好!」



「陸斗のことが気になって…もしかして、体調とかが悪くなったんじゃないかって。ちょっと陸斗のマンションへ様子見に行ってもいい?」



「何時だと思ってるの? 明日にしなさいよ」


美愛子が壁に掛けてある時計を見て言う。



瀬里香も時計に目をやる。

11時を過ぎている。




「病院から急に呼び出されたのかもしれないし。勤務医って、そういうのはよくあるわよ。

お父さんも勤務医時代はそうだった。

何人も患者さんを抱えているんだもの」



「そっか…言われてみれば、そうだよね」



美愛子は元気がない瀬里香の側に来て、優しく肩を抱いた。


「それも、陸斗さんがうちに来たら解放されるわ。それまでの辛抱よ。瀬里香は何も心配しないで、どっしりと構えていればいいの。お腹の子に障るわよ。お母さんになるんだから、しっかり赤ちゃんを守ってあげないと…でしょ?」



「そうだよね。胎教にも悪いよね」


瀬里香はそっと自分のお腹に手をやった。


「マンションへは明日行ってみる。陸斗がいるかどうか、わかんないけど。

じゃあ、今夜はもう寝るようにするね」



「そうしなさい。何も考えずにゆっくり寝なさい。体、あんまり冷やし過ぎちゃ駄目よ」



「はーい。おやすみなさい」



瀬里香は階段を上り、自分の部屋に戻って行った。

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