第13話

ー翌朝ー


俄かに病棟が動き始める。




当直を終えた陸斗は白衣を脱ぎ、ロッカーのハンガーに掛ける。



職員専用の出口で、陸斗は 同じく夜勤明けの緑と出くわした。


「お疲れ様でした」


緑が陸斗に頭を下げ 通り過ぎようとしたその時、後ろで何かがぶつかるような音がした。


緑は驚いて振り返った。



見ると、陸斗が階段の手すりに捕まり、うずくまっている。

緑は慌てて陸斗の側に駆け寄った。


「香坂先生! 大丈夫ですか?」



陸斗はうずくまったまま暫く動かずにいたが

やがて顔を上げると、


「大丈夫。少しめまいがしただけだから」


と、ふらつきながら ゆっくりと立ち上がった。



緑が陸斗の片腕を支える。


「お疲れなんじゃないですか? 無理しないでください」



「父の体調が優れなくてね。実家に様子を見に行ったりした後だったから。…ちょっとオーバーヒートしちゃったかな?」


そう言って陸斗は笑った。



「もしよければ 私、送っていきますよ」




陸斗は俯いたまま、ニヤリと笑った。


「いや、陣ノさんも夜勤明けで疲れてるのに、悪いよ。多分もう大丈夫だと思うから」


と言いながら、陸斗はわざとよろけた。



「やっぱり送っていきます。井上さんの時に助けてもらったお礼だと思っていただければ…」



「悪いね…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」



陸斗と緑は駐車場に向かって、ゆっくりと歩いて行った。

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