第11話

瀬里香はベッドの上に仰向けに寝転がり、考えていた。




陸斗、何してるの? 

なぜ電話に出ないの?



そう言えば 陸斗のお父さんって、お好み焼き店を経営してるんだったな。

高校出て、大学へは行きたがらなかった弟さんが手伝っていて、2人でやってるって言ってた。





陸斗と付き合っていた頃…


〜cafe 『blue snow』〜


「母は俺が中2の時に病死して、それからは父が1人で店をやってたんだ。母が亡くなった時に、俺は医者になろうと決めた。母のように、病気で苦しんでいる人の命を助けたいと思って…」


陸斗は淋しそうな目をしてた。




「えらいね。ちゃんと立派に夢を叶えることが出来たんだね。亡くなったお母さんも、きっと喜んでくれてると思うよ。

弟さんは、大学には行きたくなかったのかな」




「あいつは勉強嫌いだったから。だからって どこかに就職できるわけでもなかったし。せめて高校だけは卒業してくれと説得して、卒業したら父さんの店を手伝えばいいさと言ったんだ」




「色々と…大変だったね。でも みんなきっと、最後は幸せになるよ。頑張った人には、必ず幸せが来るようになってるから」


私がそう言うと、陸斗が言った。



「俺は今もう、充分幸せだよ。

 …瀬里香に会えたから」



「えっ?」


私は飲もうとしたカフェ・オ・レの入ったカップを持ったまま、陸斗を見つめていた。




その時のことを思い出すと、思わずにやけた。



次の瞬間、心に不安が過った。


…もしかして! 急に体調が悪くなったとか…




瀬里香はガバッとベッドから起き上がった。

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