第47話

ー翌日ー



陸斗がチェックアウトをしている間、私は車の中で待っていた。



遅い…



昨夜、陸斗は何度もトイレに起きていたのを私は知っている。

いつも そういうのはないのに。



そして部屋に戻って来ると、その度にスマホを見ていた。


と言うより、チェックしているみたいだった。


多分、メールを気にしていた。


あんな深刻な顔をした陸斗を見たことがない。




陸斗が車のドアを開け、運転席に乗り込んできた。


「要領悪くてさ、フロントのスタッフが。思いの外時間かかっちゃったよ」


何も言ってないのに時間がかかった理由を私に説明すると、陸斗はエンジンをかけ、車を発進させた。



「12時に会う約束してるから、丁度いい時間の電車があって良かった。お腹、空いてない?」



私は黙って首を横に振った。




駅に着いたのは11時40分だった。

50分に電車が着く。




「私、ここからもう 1人で帰れるよ」


と陸斗に言った。



「えっ、切符買って改札口まで送ってくよ」



「いいよ。12時に約束してるんでしょ? 間に合わなくなるよ。帰って来る時には連絡してね」



「ああ。今日中にはムリだけど、明日は早く帰るつもりにしてるから。またLINEするね」



私は車から降りると、後部座席を開けて 荷物を取り出した。



「気をつけて帰れよ」


運転席の窓を開け、陸斗が言った。




自分で言っといてこういうのも変だけど、妊婦の奥さんが重いめの荷物を持って行くのに、気にもならないのね。



ダメだ、またイラッとしてきそう。



「じゃあね」


私はそのままスタスタと駅に向かって歩いて行った。 後ろも振り返らずに…。



駅構内に入ったところで、私はふと後ろを振り返ってみた。



えっ?



陸斗の車は駅の横にある駐車場に入っていった。

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