第17章

第48話

電車の到着を知らせるアナウンスで我に返った私は、心に疑問を持ったまま、急いで切符を買った。




車内は思いの外、空いていた。

適当に空いてある座席を見つけると、荷物をよこっらしょっと網棚に乗せ、座席に腰を下ろした。



それにしても、何で陸斗は駐車場なんかに入っていったんだろう・・


そう思いながら、ふと窓から外を見ると そこから丁度、その駐車場が見えた。

しかも、



あの車、陸斗のじゃない?



偶然にも私が座った席から、停まっている陸斗の車を発見した。



もしかして、この駐車場で友達と待ち合わせなのかな。 

それとも、車を置いて 駅の近辺で待ち合わせ?



あれっ?



車の中に、陸斗がいる。


運転席に乗ったまま、電車の中を見回している様にも見える。



あ! もしかして、私がオッチョコチョイだから ちゃんと乗ってるかどうか確認してるのかな?



その時、一瞬 陸斗がこっちの方を見た気がした。


私は陸斗に向けて、大きく手を振った。

気付いてくれるかな。


でも、陸斗は気付いていないみたい。



その内、電車がゆっくりと動き出した。


私は手を振るのを止め、諦めて座席の背にもたれた。


電車の動きは段々と早くなり、駐車場も遠ざかっていった。



バカみたいだったね。

心の中で呟き、私は ふとお腹に手をあてた。

ごめんね、赤ちゃん・・ママ、悩んでばかりで 落ち着かないよね。

でも・・なんか、パパのことが わからなくなってきちゃってさ。


はっきりした理由もないのに、なぜか涙が零れた。

ダメだ、しっかりしないと。


小さな頃、イタズラをすると 母によく言われた。

『神様は、ちゃんと見てるのよ。だから悪いことすると、教えてくれるものなの』



そうだ。もし何か悪いことをされているのなら、神様は ちゃんと教えてくれる。


・・なんて、30も過ぎた大人が 笑っちゃうよね。


でも、信じたいな。




「電車が通過します。暫くお待ちください」


車内放送が流れると、電車がゆっくりと停まった。



少しすると、横の車両を電車が反対方向へ走り過ぎて行った。


瀬里香はスマホを見て時間を確認した。




走り過ぎた電車の中に、緑が乗っていた。





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