第13章

第36話

車で2時間弱。 陸斗の故郷に着いた。


別世界に来たのかと錯覚する様な田舎町だが

海や山に囲まれ、自然に恵まれたいい所だ。 幸い、悪阻にも悩まされずに来れた。



「気分どう? 大丈夫そうなら、このまま家に向かうけど。丁度もうすぐお昼だし」


陸斗は助手席に座っている私を気遣った。



「うん、いいよ 私は大丈夫。お腹空いたぁ〜」



陸斗は笑って頷き、そのまま車を走らせる。




「ねぇ、お昼はお義父さん手作りの あの美味しいお好み焼き、食べさせてもらえるのかな」



「ああ。 その日を首を長くして待ってるみたいだったからな、親父は」



…やっぱり陸斗は家の話になると なんか暗い。



飲食店が数軒建ち並ぶ住宅街の一画。

その少し外れた場所に、陸斗のお父さんが営むお店と、隣接して 陸斗の家がある。



お店と家の狭間にあるカーポートに、陸斗はバックで車を入れた。


車から降りて後部座席を開け 荷物をおろそうとしたその時、


「あ、荷物はそのままでいいよ」


と 慌てて陸斗が言った。



えっ? 陸斗のお家に滞在するんじゃないの?




陸斗はさっさと店に向かって歩いて行く。


私も早足で陸斗の後ろを付いて行った。





勇次郎が青井クリニックに向かって歩いてきた。


(確か、咳止めの水薬があったな)



クリニックの扉の鍵を開けようとして、


…ん?



取っ手ハンドルに、封筒のようなものが丸めて挟み込まれているのに気付く。



…何だ? これ…



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