第37話
店の引き戸に 【本日休業】と張り紙がしてある。
「今日、店をお休みにしてるの?」
と、陸斗に尋ねた。
「俺らが来るから、その間だけな」
そう言うと 陸斗は店の引き戸をガラリと開けた。
「らっしゃい! …おお、来たか。おかえり」
店内には美味しそうなお好み焼きの匂いが充満している。
お義父さんが鉄板の上で 手際よくお好み焼きを焼いていた。
「こんにちは! ご無沙汰していました」
「いらっしゃい、瀬里香ちゃん久しぶりだね。
そろそろ来る頃かと思って、腕をふるってたところさ。…あ、どこでも好きな所に座ってて」
「ありがとうございます。…あ、そだ。両親も来させていただく予定だったんですが 母が…」
「ああ、お母さんの具合が悪くなったんだってね。陸斗から聞いたよ。大丈夫なのかい?」
…知ってたの?…陸斗、私にはお義父さんにはもう伝えたってこと 何も言ってなかったのに。
「これ、つまらないものですけど どうぞ」
私は父から預かっていた、お土産の入った紙袋をお義父さんに差し出した。
「悪いね、気を遣って貰って。そこに置いといて。ありがたくいただくよ。さっ、椅子に座ってよ。焼き上がったから、今から運んでくよ」
「はい」
私が傍にあるテーブルの椅子に腰を掛けると、陸斗も向かいの椅子に腰を掛けた。
自分の家に帰って来たのに、陸斗はずっと無言のままだ。
「おかえり、兄さん。瀬里香さん、いらっしゃい」
陸斗の弟、徹君がカウンターに姿を見せた。
「ご無沙汰、徹君。お邪魔してます」
徹君は爽やかに笑って、私に軽く頭を下げた。
まだ20歳の彼は、幼さは残るものの 流石に陸斗の弟だけあってイケメンだ。
「さ、みんなで会食といこうじゃないか。徹、オマエもこっちへ来い。足りなきゃ じゃんじゃん焼くから、みんな遠慮なく食っていけ」
お義父さんはお好み焼きを乗せたお皿を、いくつもテーブルに運んできた。
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