第35話
家の前に建つクリニックの方へと、瀬里香は回り込んだ。
が、誰もいない。
お盆休み期間の貼り紙を見て 帰ったのかな?…
緑は家の近くの海岸で ぼんやり海を見ていた。
部屋の中に居る気分ではなかった。
心の中を波に委ね、洗い流したい気持ちだ。
そして 心ごと 波に連れ去ってもらいたい。
スマホからLINEの着信音が鳴った。
陸斗だった。
鞄からスマホを取り出し 画面を開く。
【元気にしてる?】
緑は、気持ちの整理がまだついていなかった。
だから 何て返せばいいのかさえわからない。
なのに どこかで陸斗からの連絡を待っていた。
自分でもどうしたいのか解らなくなっている。
ただ1つだけ言えるのは、どこかで終わらせないといけないということ。いや、終わらせる。
【元気ではないよ】
適当な言葉が思いつかず、緑はそう返した。
好きという気持ちが完全になくなったわけではないが、少しずつ冷静さを取り戻しつつある。
この恋に身を委ねたところで未来はない。
セフレだとか愛人だとかと割り切って付き合う程、プライドは低くない。
ずっと 仕事で生きてきたのだ。
やはりこれからも、そうやって生きていくのが妥当かもしれない。
陸斗から返信がきた。
【色々と辛い思いさせてごめん。明日、地元に帰ろうと思うんだ。もしよかったら…だけど、
緑も来ない? 1日だけ、2人で一緒にいたいな。明後日くらいはどう? 何か予定入ってる?】
不倫旅行をしよう…ってこと?
緑は考え込んだ。
その時に、別れを告げようか…と ふと思った。
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