第8章
第21話
『はい、お好み焼き屋 みっさんです!』
久しぶりに聞く、父 光洋の声だった。
「俺だけど…」
『おお、元気でやってるか? おまえ、結婚式から全然音沙汰無しじゃねぇか。嫁さんも連れて来ねぇし。1度くらい嫁さん連れて、うちのお好み焼き食べに来いよ。ああ、何ならそちらの家族も一緒に来てもらって、わしの自慢の腕を振るってもいいんだぞ。…仕事、忙しいのか?』
「話が早くて助かった。そのことだけど、向こうの家族が親父に会いたがってんだよ。近々俺の休みの日に行こうと思ってんだけど。あんまり長居はしねえけどな。多分、盆休みくらいになると思うけど その頃って、店忙しいのかな」
『ああ、店のことならなんとでもなるさ。自分とこでやってんだ。いくらでも融通効かすさ』
「あのな、親父。向こうの家族には、母さんの話は自分からしないでほしいんだ。で、もし聞かれても、病気で亡くなったってことにしてもらえないか? それ言っときたくて、電話した」
『おまえが中学生の時に男つくって家を出た…じゃ、流石にかっこ悪いか。大変だな、おまえも。あんな立派な家のお嬢さんと結婚したともなると、うちの恥はさらせねぇってわけだな』
光洋は太い声で笑った。
「とにかく! 言った通りにしてくれればいいから… ところで、徹はいる?」
『あいつは今、配達に行ってるよ。わしも58にもなると、最近は思うように体が動かんでな。徹は20代の若さだから、何かとわしの代わりによくやってくれてるんで 助かるよ』
「…そうか。 じゃ、まぁそういうことで。
あ、行く日がはっきりしたら また連絡するよ。
じゃあな」
陸斗はそれだけ言うと、電話を切った。
これでどうにか示しはつきそうだ。
今度は瀬里香に電話をし、盆休みに父と会えるように予定が組めたと伝えた。
次に緑に電話をし、マンションに来るように誘った。
青井家の婿としての役目を果たす傍ら、陸斗は隙を見ては 緑との逢瀬を重ねていた。
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