第41話
「おおっ? どした どしたぁ。
お前、まさか瀬里香を好きになったのかぁ?」
陸斗は徹に顔を近づけ、意地の悪い口調で煽った。
「そ…んなんじゃ、ないよ」
徹はオドオドしながら陸斗から目線を外す。
「ただ お生憎さま。おまえの過去は一切知らず 医者になれなかったおまえには、瀬里香は興味を持たないと思うよ。ま、せいぜい このイケてねぇお好み焼き屋を一緒に手伝ってくれる従順な彼女を早く見つけることだな。頑張れよ!」
徹は唇を噛み、拳を握り締めた。
「お待たせ」
瀬里香が戻ると、陸斗は何事もなかった様にポーカーフェイスを繕った。
「ありがとう、徹君。短い時間だったけど 楽しかった。お好み焼きも凄く美味しかったって、お義父さんにもくれぐれもよろしく伝えてね。また来るよ。よかったらうちにも遊びに来て」
「はい。瀬里香さんも体には気をつけて」
徹がちらりと目をやると、陸斗が徹を見てニヤニヤしながら笑っていた。
「それじゃあ、お邪魔しました」
陸斗と瀬里香が引き戸を開け店を出て行った後、
「あっ」
テーブルの上に、瀬里香がハンカチを置き忘れているのに気付いた。
徹はハンカチを持ち 慌てて外に出たが、陸斗の車は既に発進して行った後だった。
徹はハンカチを持ったまま、その場に佇んでい
た。
「サイテーだね」
助手席に座った瀬里香が独り言の様に呟いた。
「えっ?」
陸斗が驚いて瀬里香を見る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます