第40話

「もちろん、幸せだよ。陸斗はこんな完璧な人だけど、33歳で何の取り柄もないオバさんの私を愛して、奥さんにしてくれて。しかも父の後継者にまでなってくれるんだもん。

感謝してるんだ」


そう言って瀬里香は無邪気な顔をして笑った。



陸斗は瀬里香の言葉にドヤ顔をしている。



「そうですか…良かった。俺は瀬里香さんのような人が兄貴の奥さんで、本当に良かったと思ってます」


徹は澄みきった瞳で瀬里香を見つめて言った。

素敵なひとだな…と徹は思った。



「やだ、なんか照れる! でも、ありがとう。

嬉しい」



「さてと、そろそろ行くか」


と、陸斗が椅子から立った。



「この後、どこへ行くの?」



「リゾートホテルを予約してる。今夜はそこに泊まろう」



それも初耳だな。私はてっきり陸斗のお家に居させて貰えるんだと思ってたから。

知らない間にホテルを予約してたんだ…。


「じゃあ、食器だけでも洗い場に運ぶよ。それから、お義父さんに声かけてから行こうよ」



「いや いいよ、そんなことしなくても。このまま行こう。…徹、ありがとな。食い散らかしたままで悪いけど。チェックインの時間もあるから」



「いいよ、行って。 親父には俺から言っとくから」



「ちょっと、お手洗い借りるね」


私は急いで立ち、トイレに向かった。




「兄さん」


徹に呼ばれ、陸斗が振り返った。



「瀬里香さんを、泣かせるようなことはしないでね。…そんなことをしたら 俺が許さない」



陸斗はきょとんとして 徹の顔を見た。

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