第43話

高層階の部屋の窓の外は、真っ青な海が広がる絶景だった。



窓際のベッドの上に座り、瀬里香はぼんやりと海を眺めている。



陸斗はトランクを運び入れると、窓辺のテーブルの上にカードキーを置いた。


瀬里香が何気に目をやると、カードキーと重なり 朝食券が2枚見えた。

陸斗が無造作にその朝食券だけを抜き取り、ズボンのポケットに突っ込んだ。



「今夜は何食べたい?」


その後で、陸斗は何事もなかった様に尋ねる。



「あんまり食べれないと思う。お昼に沢山食べたから」


私は見なかった振りをして素気なく返事した。



何で 朝食券を隠したの?…



「ここのレストラン、食事が美味いので有名なんだ」


陸斗は関係なく私の機嫌をとり続ける。



「じゃあ1人で食べてくれば?」



どうしよう…私、今日はまったく可愛げがない。



「そんな淋しいこと言うなよ。

あっ、さては まだ機嫌が直ってないな?」


陸斗は隣りに座ると、自分の方へ私の肩を優しく抱き寄せた。


「わかった。じゃあ この近くのコンビニで何か買って、今夜は簡単に済ませるか。

…それでいい?」


そう言って、陸斗は私の髪を撫でた。




「…ねえ陸斗、もしかして 浮気してない?」



ついに言ってしまった。




陸斗の顔が一瞬、引き攣った様に見えた。



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