第3章

第7話

ー 夜 ー


病棟のナースステーションには数人の看護師らが集まり、ミーティングを行なっていた。


「それでは 今夜もよろしくお願いします」


婦長がそう言ってナースステーションを出ると、他の看護師達は一気に緊張感が解ける。




「…あれやれ これやれってさ、ただでさえ少ない人数でやってんのに。自分もやってよって…

ねえ」


年配の看護師小沢 裕子おざわ ゆうこが愚痴を零しながら、もう1人の年配看護師、瀧田 真澄たきた ますみに目配せをする。


「まったくね。こっちをストレスのはけ口にされたんじゃ、たまったもんじゃないわね」



看護師の陣ノ緑が黙々とカルテを整理している。




そこへ陸斗が入って来て、


「みなさん、お疲れさまです」


と、爽やかな笑顔で看護師達を労った。




「あ、先生もお疲れさまです」


小沢も瀧田も、わかりやすく媚びた声色に変わる。



陸斗がちらりと緑を見る。


緑は難しい顔で カルテに何か書き込んでいる。




「あ、そうだ」


陸斗はロッカーから紙袋を取り出し、机の上に置いた。


「よかったら食べてください。僕からの差し入れ」



「わぁ、ありがとうございます!早速開けてもいいですか?」

と 小沢。



「忙しくならない内に、どうぞ」


「先生、女性におモテになるの わかるわぁ」


瀧田がそう言いながら包装紙を外していく。


「あらま、おいしそう! じゃあいただきます」


小沢が菓子を1つ取る。




「陣ノさんも よかったらどう?」


陸斗が緑に声をかけると、


「ありがとうございます。私は今、いいです」


緑はカルテを書きながら答えた。




ナースコールが鳴った。


「私、行ってきますね」


そう言うと 緑が出て行った。

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