第17話
緑が夜勤の日は、陸斗も当直の日にあてた。
なんとしてでも緑を堕とすために…。
今度は抜かりなく、瀬里香に当直の日と伝えて。
いくつかの偶然を重ね、会う回数を増やす毎に、緑との距離は少しずつ縮まっていった。
そして…
ようやく願っていた日が訪れた。
陸斗は緑と2人で会う約束に漕ぎ着け、休日の夜、カフェバーで待ち合わせをした。
先に着いた陸斗はカクテルを注文し、飲みながら緑を待った。
暫くして、緑が店に入ってきた。
綺麗にメイクをし、小洒落た服装をした緑は、また一段とセクシーだった。
「お待たせしてしまって、すみません」
「いや、そんなに待ってないよ」
緑は陸斗が手に持つグラスを指差し、
「これと同じものをください」
と、カウンター越しにバーテンダーに言いながら 陸斗の隣の席に座った。
「私服姿もまた、魅力的だね」
冗談めかして陸斗が言った。
「やめてくださいよ。
香坂先生、もう酔っ払ってるんですか?」
「ここではその呼び方は勘弁…
もっとくだけた感じで話してね。
息抜きになんないから」
「じゃ、どう呼べばいいですか?」
「呼び方は陸斗か、陸でいいよ。
こんな感じで座ってたら、周りからは恋人同士にしか見えないと思うよ」
そう言い、陸斗は意味深な目で緑を見た。
やはりこの目はヤバい…と緑は内心思った。
「緑さんってさ、1人暮らしなの?」
陸斗は緑のことを知りたかった。
「いえ、母と2人暮らしです。父は早くに亡くなっているので…」
バーテンダーが緑の前に、カクテルの入ったグラスを置いた。
「そうなんだ…俺と逆パターンだね。俺のところは母が先に亡くなって、俺と弟は 父1人の手で育てられてきたから」
「そうなんですか…なんか境遇が似てますね。
私には、姉が1人いるんです。
もうお嫁にいっちゃってるけど」
「似た境遇同士って、相性がいいんだって」
陸斗の言葉に緑は返答に困り、カクテルを半分飲んだ。
「彼女とか、いないんですか?」
言ってしまってからしまった! と緑は焦った。
なぜそんなことを聞いてしまったのだろう。
「気になる?」
陸斗は悪戯っぽく笑いながら、緑の目を覗き込んだ。
緑は残りのカクテルを一気に飲み干した。
「いないよ、残念ながら。今までいいなと思うような人には中々巡り会えなくてね。でも…」
緑は胸が激しく高鳴るのを感じた。
早くも、酔っているのだろうか。
「今、やっと巡り会えたかなって気がしてる」
緑の手の上に、陸斗の手が重なった。
緑は頭の中がぼおっとなり、そこから記憶が
途切れてしまった。
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