第3話
病院の近くにあるフレンチレストランで、
私達はお昼を食べた。
「しっかり食べなよ。好きなものは俺の分も食べていいから」
いつにも増して 陸斗は私を気遣ってくれる。
私は牛フィレ肉のステーキを小さく切って、
口に入れた。
「ん〜、おいしい! お肉柔らかぁ〜」
陸斗を見ると クールな表情でパンをちぎり、
口の中に放り込みながら 黙々と食べている。
彼は時々、遠い目をする。
まるで 心ここにあらず…みたいな。
「仕事、忙しい?」
私はわかりきっている質問を、陸斗に投げかけた。
「そりゃまあ、ね。休憩時間でも 考えないといけないことだらけだから… あ、それより 子供ができたって、お義父さんはもう知ってるの?」
「まだ知らないよ。帰ってから話すつもり」
「今から行く? 瀬里香の家に。お義父さんに、報告をしに…」
「えっ? 午後から病棟を回るんじゃないの?」
「今 目が離せない程重篤な患者もいないし、
時間なら作れるよ。早いほうがいいんじゃない? 一緒に行って、喜びの報告をしようよ」
「まあ、私は別にいいけど…」
大事な仕事を後回しにしてまで 、
なぜ そんなに急ぐのか、
その時の私には わからなかった。
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