第31話
引っ越しも無事に終わった夜、両親と陸斗と私は4人で夕食を食べた。
テーブルの上には、母に教わった私手づくりのビーフストロガノフをメインに、腕をふるってつくった手料理が所狭しと並んでいる。
「凄いご馳走だな」
陸斗は、いつになく豪華な夕食に 驚いた顔をしている。
「陸斗さんに美味しく沢山食べて貰いたいんだって、瀬里香が一生懸命つくったのよ」
と、母が言ってくれた。
「今夜は陸斗君の新しい門出を祝う日でもあるからな。さあ、早速食べようじゃないか。
母さん、ビールをもう1本持ってきてくれ」
父も、いつにも増して 嬉しそう。
「お父さん、飲み過ぎは駄目ですよ」
母が注意をしても、
「いいじゃないか。休みにも入ったことだし。
陸斗君も飲みたまえ。遠慮しなくていいぞ。
もう、ここは 今日から君の家なんだから」
「はい、ありがとうございます」
陸斗、嬉しそう。
陸斗と住める。
これでようやく、本当の夫婦らしくなった。
気持ちが安定しているせいか、体調も落ち着いているから不思議だ。
私達家族は歓談しながら、和やかな夜を過ごした。
陸斗と2人きりの部屋。
ベッドの中。ふと横を向くと 愛する夫がいる。
「ねぇ、陸斗」
「うん?」
「私のこと、愛してる?」
「当たり前じゃないか。嫁さんなんだから」
陸斗は手を伸ばし、私と手を繋いだ。
「嫌っ、ちゃんと口で言って」
私はそう言うと、陸斗の胸に寄りかかった。
「愛してるよ」
「ずっと…愛していてね。私も愛してるから。
歳とっても…死ぬまで、ずっと…」
「どうしたんだよ。甘えたくなったの?」
「だって…暫く抱きしめてもくれなかったし」
陸斗は優しく私を抱きしめた。
そして、久しぶりにディープキス。
陸斗に強く抱かれたい…という衝動が走る。
「もう少し落ち着いたら…ね」
陸斗は私の気持ちを察したように言った。
「私、陸斗が初めて愛した男の人で 初めて抱かれた人だった。…それでいいの。充分満足」
「当たり前でしょーが、そりゃ」
陸斗の言葉に2人で笑った。 楽しい。 幸せ。
「さっ、そろそろ寝よっか」
陸斗が、私の頬を両手で包み込んで言った。
「うん」
私が頷くと、陸斗はルームライトを消した。
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