第25話
陸斗は緑に正直に話した。
これまでのいきさつも、結婚の理由も…。
緑は一見、落ち着いたかのように見えたが、
「なんだかまだ頭の中がごちゃごちゃしてて、冷静に考えられない。とにかく、今日は帰る。
暫くは連絡してこないで。私もしないから」
そう言って部屋から出て行った。
(まいったな…)
陸斗はグシャグシャッと頭を掻きむしった。
ー帝王病院ー
廊下を歩いている小島を見つけると、陸斗は急いで駆け寄り、小島の手を引っ張って男子トイレの中に連れ込んだ。
「な、何… どうしたんですか」
驚いた顔の小島に陸斗は小声で言った。
「おい、約束が違うじゃないか。あれ程言っておいたのに…」
「何がですか? 僕、何も言ってませんよ。何を焦ってるんですか。何か…あったんですか?」
陸斗はハッとした。緑にバレたとは言えない。
「香坂先生こそ、ちゃんと話しておいてくださいよ。陣ノさんと付き合っているってこと」
陸斗は驚きで目を見開いた。
「知ってんの!?」
小島は自分の口に人差し指を立て、陸斗にシーッと言った後で、小声で話しだした。
「昨夜の当直の日、陣ノさんも夜勤だったんですよ。珍しくバタバタした日じゃなくて。彼女、座ってスマホを見てたんです。そしたら看護師長さんに呼ばれて、陣ノさん慌てたらしく、立ち上がる時にスマホを床に落としちゃって…で僕が拾ったんですが お2人のLINEのトーク画面が開いてて…すみません、見ちゃいました」
陸斗は あちゃー、と額に手を当てた。
「えっ、でもそれがなぜ彼女に俺が結婚してるのがバレたことに繋がるの?」
「えっ、バレたんですか?」
マズイ!と陸斗は自分の口を塞いだが、時 既に遅しだった。
「その後 陣ノさんと戻ってきた看護師長さんが、僕に声をかけたんですよ。『小島先生、もう香坂先生から引き継ぎは受けられたんですか? …香坂先生、青井クリニックの後継者になられるんですってね。香坂先生の奥様は院長のお嬢さんですものね。逆玉ってとこかしらね』とまで付け足して。恐らく一緒にいた陣ノさんも、その話を聞いてしまったんじゃないでしょうかね」
陸斗は心が痛かった。
話を聞いた緑は、もっと心を痛めただろう。
そう思うと、どうしようもなく辛かった。
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