第12章
第33話
ー翌朝ー
私と陸斗は 共に暮らし始めて最初に迎えた朝を、穏やかに過ごしていた。
ダイニングテーブルの上にフレンチトースト。
そして…2人の思い出のマグカップには、
温かいカフェ・オ・レ。
「ね、いよいよ明日だね。陸斗ン
「ああ…そうだったな」
何でかよくわかんないけど、この話になると、陸斗はどことなく 浮かない顔をする。
私の親も一緒だし、緊張するのかな?
そこに父が入ってきた。
「おはようございます」
陸斗は椅子から立ち上がり、父に朝の挨拶をした。
「おはよう。ああ、座っててくれ」
「お父さん、明日だよ 陸斗の家に行くの。お母さんも、準備はしてる? お土産とかは…」
「それなんだがな…」
ん? …父の様子がおかしい
「昨夜から、母さんの体調が思わしくないんだよ」
「えっ? どんなふうに?」
私は食べかけのトーストをお皿の上に置いた。
「ずっと咳が止まらなくてな、あんまり睡眠がとれてない」
「お風邪かなにか引かれたんでしょうかね…」
陸斗も心配そうな表情になった。
「ふむ…わからん。熱はないんだがね。
ただ 体調が思わしくないんで、道中が心配だ。悪いんだが陸斗君、今回は瀬里香だけ連れて行くようにして貰えないかな」
「あ、…勿論です。お義母さんの体調が悪化でもしたら、大変ですからね」
あっれぇ?…陸斗、なんだか弾んでない?
「先方に差し上げる土産は、もう用意してあるんだよ。それを持ってわしらの代わりに瀬里香、今回は頼むよ。そして、向こうのお父さんには くれぐれもよろしく伝えておいてくれないか。落ち着いたら また必ず伺います、とな」
「お母さんは今 どんな感じなの?」
「今朝になって少し落ち着いたから、ようやく眠りに入ったよ。よく寝てるから、取り敢えず今は安静にさせておいたほうがいいと思う」
「僕の引っ越しや何やらで、お疲れが出たのではないでしょうか。本当に、申し訳ないです」
陸斗が父に頭を下げて言った。
「いや、それはそうじゃない。50も過ぎれば、体のあちこちは弱ってくるものだ。きみのせいとかではないよ。…ま、とにかくそんな訳だから、今回わしらは遠慮しておく。すまないね」
「とんでもないです。それより、お義母さんには早く元気になって貰わないと。お任せください、父には僕からもちゃんと伝えておきます」
「よろしく頼むよ。じゃあわしは部屋に戻るから、後は2人で適当にやっといてくれ」
そう言うと、父はドアを開けて出て行った。
陸斗は心の中でガッツポーズをした。
(よっしゃあ! これで思い通りに動けるぞ)
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