No.2-26:玉虫色

 卵から現れたジ・ラオと名乗った男は、魔族特有の黄金の眼に額から角を生やしていた。それ以外は普通の人間と変わらない。肌の色は浅黒く、髪の色は黒。身体は引き締まった立派な肉体をしていた。


「ハハハハハ!!!おい!!」


 かつて戦ったジ・ラオそっくりの男に、ソフィアは真っ先に襲い掛かった。


「ヌッ!?」


 だが、ソフィアが振った剣をジ・ラオと名乗った魔族は難なく受け止め、ソフィアの腹に蹴りを入れた。


「ガハッ」


「おいソフィア!」


 強烈な蹴りが突き刺さり、猛烈な痛みが身体を襲う。しかし痛みよりも喜びの感情が勝っていた。こいつは本物だということがわかったから。理屈なんてない。ただの直感だ。吹き飛ばされながらも、ソフィアはかつて自分を殺した強敵とやり合えることを喜んだ。


「ふむ。剣を取るか。上級魔族である我を目の前にして剣を取るか。ハハハハ!それもよし!格の違いを見せてやろう!」


「お前みたいな化け物を世に放つ訳にはいかねぇんだよ。お前らぁ!死んでも殺すぞぉ!」

 

「ハハハハハ!果てしてその威勢がいつまで持つか、楽しみだな!」



 上級魔族ジ・ラオ vs 神聖騎士団 第八天使部隊10人の戦いが始まった。


「ヒャハハハ!『迅雷』!」

 

 最初に仕掛けたのは隊長のジュウ。全身からバチバチと雷を発生させ、ドオン!と立てながら強烈な突きがジ・ラオに襲い掛かる。


「ヌウン!」


 ただ腕を一振りするだけで、ジュウの攻撃は弾かれた。空いた身体に強烈なパンチが放たれる。


「隊長ぉ!」


——ガン!


「グゥッ!」


 そこに副隊長が割り込み、盾で防御する。


天羽流抜剣術あもうりゅうばっけんじゅつ『聖火ノ御剣せいかのみつるぎ』」


 その隙に他の隊員がジ・ラオに向けて攻撃する。目にも止まらぬ一瞬の斬撃。真っ白な線が現れたかと思えば、いつの間にか切られていた。切り口からは真っ白な聖なる炎が燃え盛る。


「ヒャハハハ!」


「ヌゥン!!」


 更なる追撃を与えようとするも、ゴウッ!という音と共に振り抜かれた腕の風圧だけで、3人まとめて吹き飛ばされる。


「「「「エイダ神聖術『焼命ノ白炎』!」」」」


 近接職の3人と魔族の距離を空いたところに、4人の魔法使いが準備していた大魔法が放たれる。


「ヌオオオオ!!」


 生命の女神エイダの権能を借りて発動させた、対象の命を直接焼く強力な魔法。ジ・ラオの身体は真っ白な炎に包まれ、命そのものが焼かれていく。


「ハハハハ!心地の良い炎だ。貴様らにも味合わせて『魔法反射マジック・リフレクト』」


「「「グアアアア!」」」


 ジ・ラオの身体を覆っていた白炎は、発動者した元へと帰っていく。発動者の4人は瞬く間に老いて老人となり、ミイラの如く干からびて死亡した。


「お前らぁ!」


「さて、さっきのはこうだったかな。『魔法模倣マジックコピー・焼命ノ黒炎』」


 Aランクの魔法使い四人で発動した魔法を意図も容易くコピーし、残った6人へと襲い掛かる。


「戦場流大剣術『魔法破斬』」


 パリン!!


 そこにソフィアが戻ってきて、発動された魔法を叩き切る。更にそのままの勢いでジ・ラオへと突進し、攻撃を仕掛けていく。


「ほう、良く生きていたものだ」


「ハハハハ!まだまだお楽しみはこれからだろうが!」


「治癒術を使える奴はソフィアに使え!その他近接戦闘員は俺と共にソフィアの援護!いいな!」


「「「はい!」」」


 残った騎士団のうち、治癒術を使えるのは2名、残りの4名は全員が魔法を使えない近接戦闘職である。隊長のジュウはソフィアに活路を見出し、彼を軸に戦うことを決めた。


「ハハハハハ!オラオラオラァ!」

 

「ぬぅっ!?」


 ソフィアを軸に、要所要所で騎士団の攻撃が飛んでくるため、ジ・ラオは反撃のタイミングを中々掴めずにいた。ソフィア+神聖騎士団の連合が攻め、ジ・ラオが受けるという戦闘が長らく続いた。




「なにっ!?!?」


「ハハハハ!『絶斬』!」


 終わりは突然に訪れた。ジ・ラオの右腕が突如灰となり崩壊したのだ。僅かな隙をつき、ソフィアはあらゆる物を断ち切る必殺の一撃を放つ。


——ガキン!


「あぁっ!?またかよてめぇ!」


「全く、貴様らとは何かと縁があるようだな」


 それを防いだのは、以前このダンジョンで研究者と戦っていた際に乱入してきた、真っ黒いローブを来た男であった。


「同族?いや、我らの子孫か」


「将軍閣下。その不完全な体では長く持たないでしょう。今は退却を」


 そうこうしている間にも、ジ・ラオの身体は徐々に崩壊していた。


「……確かに。よかろう。此度の戦いは我の負けだ。また会おうぞ英雄諸君」


「ヒャハハハ!逃がすかよぉ!」


 ジュウは逃がすまいと攻撃を行うが、ブウン、という音と共に、魔族とローブの男は消えていった。



「ちっ、また中途半端なままかよ」


 ソフィアは最後まで決着がつかなかったことに不満を覚えていた。



——あとがき———————

 やっと戦闘が終わりました。思ったより長引いてしまいました。(;´∀`)


 PS.思ったんですけど、ソフィアちゃんのメイド服が今ボロボロじゃないですか。多分ほぼ全裸なんですよね。傷だらけの男の娘……閃いた(ФДФ) カッ

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る