No.3-5:廃墟となった街
翌朝、予定通りシュロウに馬車を引いてもらって空を飛んでの移動を開始した。ちなみに馬はシイラの魔法で飛ばせて運んでいる。初めての空の旅に馬も興奮している。
「どの辺で降りるんだ?」
「そうじゃのぉ。下手したらこの先一帯は既に魔王教とやらの支配下の可能性もあるからのぉ。どうしようかの」
「そういうことならこれを使いな。透視機能が付いた望遠鏡さ」
どの辺で降りるのか悩んでいたところ、ヘストがどこからか望遠鏡を取り出した。本人の言う通り透視機能がついており、わざわざ窓から顔を出さなくても外が見える。しかも透視したいところを指定できるようで、建物の中まで丸見えだ。しかもかなり遠くまで見える。凄いなこれ。鍛冶師って何でもありかよ。
「おぉ、凄いなこれ。まぁ、俺が見てもわかんねぇからグレース、確認してくれ」
「どれどれ……おぉ!すごいのぉこれ。楽しいぞ!むむ!美人が裸で湯あみしとるぞ!」
「なに!?それは見たい!」
「私にも見せてくれ!」
「あのぉ、それは玩具じゃないんですから真面目に探してくださいね」
ちょっと中ではしゃいでたら、シイラにガッツリ注意されてしまった。言葉は丁寧だが圧が凄い圧が。
「シュロウ、よく頑張ったの。ゆっくり休むとよい」
「グルゥ」
30分ほど空を飛び、街からそれなりに離れたところに降りた。この辺一体に人は見受けられなかったので、魔王教とやらに絡まれる心配もしばらくないだろう。
「ホース君もよろしくねぇ」
「ブルゥ!」
シュロウが疲れてダウンした代わりに、馬はといえばやる気に満ちていた。名前については気にしてはいけない。
「むっ?」
馬車での移動を開始して数時間後、望遠鏡を除いていたグレースが何かを見つけたようだ。
「どうした?」
「次の街が見えたのじゃが、その街は完全に廃墟になっておってな。街を囲う外壁も中の建物や道路もボロボロじゃ。見た感じつい最近何かに襲われたみたいじゃな」
「魔王教とやらの仕業じゃないのかい?」
「うーん、そう考えるのが自然なのじゃが、あそこは南のサミロ王国とエイダ聖国を繋ぐ商業都市で警備は分厚かったはずじゃ。騎士が在中しているのはもちろん、近くにダンジョンがある影響で力のある冒険者も多数いたはずじゃ。じゃからちょっとやそっとじゃ街が滅びることなんぞないはずじゃがなぁ」
「グレースの元に街が滅びたっていう情報は来てないのか?」
「来てないのぉ。となるとスパイによる仕業かのぉ?」
かなぁ。俺らの想像以上に事態は深刻なのかもしれないな。この先もこの調子だと、戦争が始まったころには敗北確定なんてことになりかねないな。どうにかしないといけないんだが、さてどうするか……。
「とりあえず街に入ってみましょう。街には人はいないんでしょう?」
「うむ、見た感じ街に人はおらんの」
「なら、街の中に入って何があったか調査すればいいだろ。運が良ければ魔王教について何かわかるかもしれないしな」
「確かにそうじゃな。それではこのまま街に入るとしようかの」
「だな」
そして俺たちは廃墟となった街へと入っていった。街は荒らされ、建物は多くが半壊、ないし全壊していて原型を留めている建物が少なかった。
「うぅむ、随分と凄いことになっとるのぉ」
「なんというか、大規模な戦闘が起こったような感じですねぇ。これだけのことが起こったのに他の街に情報が流れてないんですか?」
「移動中に通話魔石でその辺の貴族とかに確認してみたが、そういう情報はなかったようじゃ」
「んー、この様子だと事が起こったのは数日前。それこそ宣戦布告が為されたのと同時くらいじゃないかい?」
その辺の瓦礫を拾って観察してたヘストが言う。何してるんだろうと思ったが調査してたのか。
「そういうこともわかるんですか?」
「ふふふ、これでも色々と経験してきてるからねぇ。その物の過去を見るくらいは出来るのさ」
「元S級鍛冶師がそういうなら間違いないんじゃろうな。もう少し詳しく調べようぞ。何があったのかわかれば教えて欲しいと色々な人から言われてるのでな」
「まぁ、魔王教が関わってるかもしれないし賛成だな。どこかに記録を残した資料がないか探すって感じか?」
「うむ、そうじゃの。あとは何かしらの痕跡がないかじゃな。まぁ、探すのは難しいじゃろうが」
そんなこんなで俺たちは街がこうなった原因を調査することに。といっても俺は調査に関しては素人同然なので出来ることと言えば何かの資料を見つけるくらいだ。グレースは冒険者としての経験からどこで何があったかを予想することができるし、シュロウという追跡のプロもいる。シイラとヘストは生産職の技術を応用して魔王教に関する痕跡を探すことができる。
……こう考えると俺って戦闘以外無能かもしれない?まぁ気にしなくていいか。俺は俺のやるべきことをやろう。
『聞こえるかの?まさにビンゴな資料を見つけたから領主の屋敷跡に集まって欲しい』
「うぉ!?何の音!?あぁ、通話魔石か。ビックリしたぁ」
そういえばそういうのもあったなぁと思い出し、グレースに了解と返事を返して指定された場所に向かった。
(ほぼ)デスゲーム出身のプレイヤーが(比較的)普通のVRMMOをやるとこうなる 雪乃大福 @naritarou_sinnabe
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