1章:Re:FakeWorldサービス開始

パーティ結成

No.1-1:アバター生成とチュートリアル

「ふっふっふ、ついに届いた!Re:FakeWorld!!」


 俺、鷹池迅(25歳)はRe:FakeWorld(略してRe:FW)の発売メールが届いた翌日にプロボクサーを引退。これまで過ごしてたボロアパートも引き払い、タワーマンションのペントハウスを一括で購入しそこに引っ越した。あ、お金については問題ない。タイトルを総なめしてファイトマネーとか広告料?とかなんか大量に貰ったおかげで一生ニートでも生きていけるくらいの金はある。まぁ、ゲーム内での動きが悪くなったら嫌なのでこれからも運動は続けるけど。


「っと、そんなことよりも早く始めるぜ!」


 早速Re:FWを起動し、仮想世界の中に入っていく。



『鷹池様。Re:FakeWorldの世界へようこそ。お久しぶりです』


 意識が覚醒し、目を開けると真っ白な空間。そして目の前には金髪ロングに真っ白な羽を生やした色白天使がいた。OriginWorldで見慣れたキャラ作成ルームだ。


「ん?俺のこと知ってるのか?オリワ(OriginWorldの略)と同じAIなの?」


『全てのAIで共通の記憶を持っているといったほうが正しいでしょう。同じであり別であるともいえます』


「ふーん。まぁいいや。とりあえずアバター作成から始めればいいのか?」


『はい、アバター作成からお願いします。一度作ったアバターの外見は課金などしない限りは基本的に固定ですので気を付けてください。それから前作とは異なり、死んだら作り直しでもログアウトしたら作り直しという訳でもないので、じっくり作ることをお勧めします』


「お、おう。わかった」


 前作は初期アバターで固定だったもんなぁ。ログアウトするたびに作り直しとか面倒だったし。ま、折角だしじっくり作りますか。


 

 30分が経過した。


『……』


「な、なぁ。何かあるならいってくれない?遠慮しなくていいから」


 天使ちゃん(俺命名)がこちらをじっと見つめてくる。何が言いたいのかはわかるが、ハッキリと言ってほしい。


『では遠慮なくいいますね。よくこんな不細工が作れましたね。ある意味才能がありますよ』


「ぐうっ!いや、わかってるんだ。酷いことは。ただどこをどう弄ればいいのかわからなくてだな……」


 色々言い訳はしたが、とにかくセンスがない。もはや人間じゃない。顔も体も何もかもがアンバランスで汚い。絶世の美男子ならぬ絶世の不細工が出来上がった。システム的なサポートが入っていてこれだ。まじでどうしてこうなったというレベル。


『私が作りましょうか?』


「い……いや、もう少し頑張ろう……かなって……」


『そうですか。では私が作りますね。化け物をRe:FakeWorldの世界に誕生させるわけにはいきませんので』


「まさかのスルー!?!?」


 そうしている間に、天使ちゃんが俺のアバター生成画面の操作権を奪い、瞬く間に編集していく。ジェバンニもビックリの作業速度だ。


『迅様。完成しましたよ』


「お……おう……」


『何か問題でも』


「いや、これお……」


『問題ありません』


「いや、女『問題ありません!』……そう」


 天使ちゃんが完成したといって俺の前に出てきたアバターはどう見ても女の子。ただシステム上の性別は男性になっているから男の娘と言えばいいのか。とにかく超かわいい。胸はないがそれ以外が女だ。顔も小さく、骨格も女・・・いやよく見たら男か。でも服着たらわからなくなる位には女だ。


 ピンク髪のポニーテールに、キリっとした凛々しい目つき。整った顔。気の強いスポーツ女子といったイメージが近いかもしれない。普通に可愛い。


「あー、一つ質問いいか?」


『はい、何でしょう』


「骨格が細いから力があまりでないと思うんだが、戦いには問題ないのか?」


 正直アバターは何でもいいのだが、OriginWorldの時と同じように戦えないのでは困る。そもそも前作をプレイしたのはリアルな戦闘のためであり、それが出来ないのであれば申し訳ないが変えて欲しいというのが本音だ。


『身体の造りが違えば差は出ますが、それでも私は問題ないと判断いたします。OriginWorldの世界で、これに近い身体であなたと同じような戦い方をしていた人がいました。そしてこの世界の造りはOriginWorldと同じです。故に、戦闘面は問題ありません。当然、鍛える必要はありますが』


 ほー。こんな細い身体でも俺と同じように背丈ほとある大剣をぶん回してた奴がいたのか。そりゃすげぇな。


「わかった。ならこれで行くよ。ありがとう」


『いえいえ、これが私の仕事ですので。では次に種族の選択に移ります。選択可能種族は人間、エルフ、ドワーフ、獣人とありますが、どれに致しますか?』


「人間で頼む」


『かしこまりました。では次にプレイモードを選択ください』


 天使ちゃんがそういうと『ゲーム / リアル』と書かれたパネルが表示される。


「あー、プレイモードの違いって何だ?」


『はい、まずモード・ゲームではレベルがあり、ステータスがあり、スキルなどがあるモードです。メリットとしては、他のVRゲームと同様にPSが無くてもある程度の力を付けることができます。デメリットとしてはレベル差により有利不利が発生することです。


 対してモード・リアルはOriginWorldとほぼ一緒です。違いはリスポーンがあり、掲示板・チャット・配信といったシステムが使えることですね。デメリットとしては前作をやり込んだ人以外にはオススメ出来ないことですね』


 それはプレイする側のデメリットじゃなくて運営の都合じゃない・・?まぁわかるからいいんだけどさ。


『ついでにゲーム内での双方の扱いですか、モード・ゲームを選んだ人は来訪者、リアルを選んだ人は再生者と呼ばれますので覚えておいてください。あ、あとNPCは来訪者か再生者かの違いは見分けられるようになってますのでそこも抑えておいてください』

 

 本当についで要素だな。まぁ大事といえば大事か。

 

「なるほど。そしたらプレイモードがゲームの人とリアルの人とで戦ったらどういう方式になるん?」


『その場合はレベルによるダメージ補正が無くなりますが、そのほかは一緒です。なのでゲームモードの人としては同レベルの人との戦闘、リアルの人としては熟練の戦士との戦闘という感覚になるでしょう。もっとも、PSが熟練に達していればですが』


 なるほど。そこはリアル側に都合を寄せてるのね。


「あとはログアウト中はどうなるの?」


『リアルモードの場合はゲーム内に身体が残ります。宿屋などの安全な場所でログアウトすれば問題ないですが、外でログアウトした場合は外敵に襲われる危険があります。安全エリア外でログアウトする場合は警告が出るようになってますので、それで判断するといいでしょう』


 さすがにそこまで厳密ではなかったか。これならリアルでいいかな。


「じゃぁリアルで」


『はい、そういうと思ってました。あ、ゲーム内で使用する名前を忘れてましたね。好きなのを入力してください』


「んー、じゃぁジーk『却下します』……ジ『かわいい名前にしてください』……えぇー」


 前と同じようにジークにしようとしたら天使ちゃん権限で却下されてしまった。好きなのって言ったじゃん!。……しかしどうするか。


「じゃぁソフィアで」


『おぉ!迅にしてはとてもいい名前だと思います!』


「迅にしてはって酷くない!?」


『気のせいです。では名前はソフィア・フローレスで決定いたします』


「まってそのフローレスはどこから!?」


『ソフィアでは重複があったので、失礼ながら勝手に苗字を付けさせていただきました』


「本当に勝手だね!?まぁいいけど!?」


『ちなみに前作で登場したアレス王国女王グレース・アレスの旧姓です。この世界のどこかに生き残りがいますので是非探してみてください』


「その情報必要だった!?」


 最後まで助けられなくて心残りではあったから、生き残りがいるという情報は嬉しいけどね!頑張って探してみよう。


『ではアバター作成はこれで以上です。続けて戦闘チュートリアルがありますが、こちらはどうしますか?』


「やるよ。アバターに慣れておきたいし」


『かしこまりました。では戦闘用平原フィールドに移動します』


 天使ちゃんがそういうと、周りの景色が一瞬で平原に切り替わる。


『こちらの端末から好きな武器を呼び出して使うことができます。ただし、ゲーム開始時に持ち込めるものは先頭に"〇"が付いているものだけですのでご注意ください』


「了解」


 そして端末を弄る。先頭に"〇"が付いてるのは大剣、片手剣、槍、弓、戦斧、戦槌、杖、盾の8種類。このほかにも双剣とか刀、ハルバード、魔法銃、大鎌、鞭、ヌンチャク、斬馬刀など色々あった。とりあえず大剣からいくか。ぽちっとな。


—―ブォン


 すると横の武器立て?に大剣がセットされる。そして俺はそれを持とうとしたところで手が止まる。


「そういや魔法とかも前作と一緒?」


『はい、一緒です』


「了解。ならOK」


 危ない危ない。何もせずに持ってもこれは持てない。前作でも魔力による身体強化を使ってたしな。というわけで前作と同じ要領で身体強化を掛けて大剣を持つ。そして素振りをする。


「んー、ちょっと大剣がデカすぎるな」

 

 このアバターの身長は158cm。対して大剣のサイズは持ち手を含めて190くらいはある。さすがにデカすぎるな。


『サイズの指定も可能ですよ』


「お、なら調整するか」


 天使ちゃんに言われて大剣のサイズを調整。だいたい持ち手含めて165cmくらいが俺の限界で同時に丁度いい感じだった。実に7年ぶりの仮想世界ではあるが、身体強化を含めて思った以上に違和感がない。どころか明らかにキレが増してる。ボクシングやった効果もあったか?


「よし、魔物を出してくれ」


『はい、どうぞ』


 天使ちゃんがそういって出したのは黒魔狼と呼ばれる魔物の中でも中位くらいに位置する強さ。とはいえ、魔族には及ばないのでかつての俺基準でいえば雑魚も雑魚である。


「おー、わかってるね天使ちゃん。リハビリには丁度よさそう・・だなっ!」


 召喚された黒魔狼は早速俺を襲ってくる。俺はステップで回避して首を狙って切り上げる。が、距離感を誤り外してしまった。


「おっと。前の感覚と一緒じゃダメだったな。もっとよく見ねぇと」


 そして再びこちらに向かってきた狼。それにタイミングを合わせて勢いよく斬り下ろす。


——ザンッ!


「これよこれ。この感覚。最高だな。天使ちゃん。次もお願い」


『はいどうぞ』


「おっ、次は2体同時か!最高のサービスじゃねぇか!イヤッホー!!」


 テンションが上がった俺はそれから30分。全力で戦闘を楽しんだ。戦いを繰り返すごとに自分がこのアバターに適応していき、どんどん洗練された動きになっていく。最後には黒魔狼×20が相手でも物足りなくなってしまった。が、まぁ楽しかったから問題ない。


「ふぅ。ありがとう天使ちゃん。もう十分だ」


『はい。お疲れ様です。ではこれでチュートリアルは終了となります。そちらの大剣とこちらのマジックバックを初期装備としてプレゼントいたします。バックの中には前作プレイヤーに対する特典が入ってますので、後程ご確認ください。それではRe:FakeWorldの世界へお送りいたします。どうぞ楽しんで来てください』


 天使ちゃんのアナウンスと共に俺の視界は真っ白になり新たな世界へと旅立っていった。

 

———あとがき—————————

 普通の男性アバターでいこうと思ったのに結局美男娘びなんしアバターになってしまった。TSとか男の娘が好きすぎる呪いはいつまでも解けそうにないです。


 2023/03/31 転生者→再生者に変更しました。

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