No.1-2:最初の街
「おおー、人がいっぱいいる」
初期スポーンした場所は広場にある噴水の前。街並みは前作と同じく中世ヨーロッパといった感じ。建物は基本レンガか石のどちらかで出来ており、街全体を覆う外壁がある。道は石畳で、その真ん中を馬車が走っているのが見える。
「早速外へ・・・と行きたいところだけど、まずは街の探索からしようか」
冒険者ギルドとかそういうのがあったら登録しておきたいし、情報収集はしっかりしておきたいのもある。前作は初見殺しのオンパレードだったからな。こういうのは今作もその可能性がないとはいえないので、戦闘前にちゃんと準備をしたい。
「おう嬢ちゃん。串焼き食うか?」
「もらう」
「お嬢さん、花はいらないかい?」
「今はいらない。また今度な」
情報収集ついでに歩いていると、屋台のおっちゃんとか、花屋のおばさんとかから色々と声を掛けられる。何故だ。俺の身長が低いからか。まるで近所の子供に対するような対応なんだが??それに加えてプレイヤーからの視線が凄い。
『あの子超かわいいんだけど』『おっほ、最高でござる』『女アバターの初期衣装ってあんなんだっけ?』『さぁ、あれで男なんじゃね?』『なに、カマってこと?さすがにキモイ』『私は一向に構わん!』とか何か色々聴こえてくるし。
と、こんな感じでどうやら俺のアバターのクオリティが高くて噂されてるらしい。とりあえず最後の奴は全力でお断りさせてほしい。キモイって思われるのはしゃぁない。俺も口にはしないが正直気持ち悪いとは思う。中身髭生やしたおっさんだし余計に違和感があるし。
「そういや何か特典がどうこういってたな。確認しよう」
天使ちゃんからマジックバックを貰ったのを思い出して、近くにあったベンチに座り中身を確認する。
「うおっ、これめっちゃ性能いいやつじゃね?」
マジックバックの中に手を突っ込むと、中に何が何個あるのか、容量がどれだけあるのかが頭に浮かんできた。容量は10kgでちょっとしたポーチの形をしているので大したことはない。
中には『通貨10万ゴル』『旧冒険者ギルドカード・ランクB』『傭兵団・暁ノ剣のバッジ』『ジーク・ハイルディン名誉伯爵の短剣』『ポーション(C)×100』『マジックポーション(C)×100』が入っていた。
「おお、凄いなこれ。前作のラストプレイで受け取った物も入ってるのか。粋な事してくれるねぇ」
今も使えるのかわからないけどな!とりあえず冒険者ギルドにいこうか。あるか知らんけど。
「すまない、この辺に冒険者ギルドとかそれに準ずるものはあるか?」
「来訪者・・・じゃないね。再生者かい?それなら中央通りを北側に進んでいけばあるよ。職員さんが声かけしてるから行けばわかるわよ」
「その二つでいうなら再生者だな。ありがとう」
「いえいえ、良い旅を。楽しんでらっしゃい」
たまたま通りかかったおばさんに話を聞き、冒険者ギルドに向かう。言われた通り中央通りを北側に進むと人だかりが見えてきて、『冒険者ギルドの窓口はこちらでーす』という声が聞こえてくる。他にも薬師ギルドとか錬金ギルドとか商業ギルドとか、何か色々なギルドが勧誘活動?を行っていた。
俺の目的は冒険者ギルドなのでそちらの建物に向かっていく。サービス開始直後なので人が多いのではと思ったが意外とそうでもないようだ。といっても中には現地人も含めて100人はいそうだが。とりあえず受付に並び、俺の番が来るまで待つ。
「あなたも冒険者ギルドに登録ですか?」
「あぁ、そうだが?」
待っていると俺の後ろに並んでいた女性から声を掛けられた。
「おと……こ?」
俺を女性と思って声を掛けたら、声が完全に男で混乱させてしまったようだ。
「あー、俺がアバター作るのあまりに下手でな。見かねた天使が作ったらこうなったんだ。俺の趣味じゃないぞ?」
「……!男の娘!?男の娘ヤッター!!!スクショいい!?いいよね!?取りますね!!ありがとう!!ヤッター!!」
「あっ、ちょっ??」
突然彼女のテンションがぶちあがり、一人で盛り上がっている。勝手にスクショ取られたが、まぁいいだろう。許す。
「おい、うるせぇぞ。静かに出来ねぇんなら帰んな」
しかし、ギルドの職員は許さなかったようで、奥の部屋にドナドナされていった。『あ”-、私の男の娘があああ!!』って叫んでる。いや俺はお前のじゃないから。反省してくれ。
「迷惑をかけてすまんな。あいつにはきつく注意しとくわ」
「いえいえ、あなたが謝ることじゃないですから」
「そうか。まぁ、これからも冒険者ギルドをよろしく頼むよ。それじゃ」
そしてギルドの職員さんは俺に一言謝ってから奥に消えていった。
「次の方どうぞー」
ひと悶着あってから数分後。俺の番が回ってきた。
「登録ですか?」
「あぁ、登録だ。それとここに来るときにこんなのを受け取ったんだが、まだ使えるか?」
手元から旧冒険者ギルドカードを取り出して受付に見せる。すると受付は目の色を変え、『確認しますので少々お待ちください』と言って奥にいく。そして誰かに連絡したのち直ぐに戻ってきた。
「申し訳ないですが奥の部屋にお越しいただけますか?」
どうやら何かのフラグを踏んだらしい。けど何が来るか全然想像つかない。何だろう。
「ん?あぁ、構わない」
「ありがとうございます。では右にある通路を奥に進み突き当りにある部屋に入ってください」
受付に言われたとおりギルドの奥にある部屋に向かう。当然プレイヤーから何だあれって感じでじろじろと見られたが、まぁ仕方ないだろう。前作のプレイヤー自体数が少ないだろうしな。
「おう、あんたがソフィアか。早速だが、天使様から受け取ったっていうカード見せてもらえるかい?」
部屋に入ると筋骨隆々でスキンヘッドなおじさんが俺を迎えた。
「あぁ、これだ」
おじさんにカードを渡すと何やらブツブツと考え始める。そして『勲章とか剣とかそういうの受け取ったりしてねぇか?』とも言われたので前作プレイ時にアレス王国で爵位を貰った時の短剣と暁ノ剣の団長であることを示すバッジを渡す。
「ありがとう。最後に、あんたは傭兵団暁ノ剣の団長ジークで合ってるか?千年前に旧人大陸にあったアレス王国で活動してたっていう」
突然のことで一瞬フリーズしたが、何とか耐えて返答する。
「あー、まぁ、再生前?それとも前世?といえばいいのか?とにかく千年前に活動してた時のことはあんたが今いったことで合ってるぞ。何でそれを知ってるんだ?」
前作と何らかの関係があるとは思っていたが、まさかいきなりとは。っていうか千年経ってるのか。旧人大陸って何?色々気になるな。結局あのゲームは最後どうなったのかわからんし。
「その時代から転生してきた奴がここのギルドに所属しててな。そいつからジークと思われる奴が来たら確認してくれって言われただけだ。俺自身がそれらについて知ってる訳じゃない」
「ん?転生した人間ってよくいるのか?」
「偶に見かける程度にはいるな。大きな街なら10人くらいはいるだろうさ。まぁ、ハッキリと転生前の記憶を保持してる奴ってなるとそうそういないがな」
「ふーん。で、確認が終わったわけだがどうするんだ?」
「別に俺はどうもしないさ。ただ依頼されただけだからな。そのうちお前の元に『グレース』っていう男が行くだろうからよろしくしてやってくれ」
グレースってあの女王グレースか?しかし今世は男か。どんな姿してるんだか。早速前作NPCと会えそうなのは純粋に嬉しいな。楽しみだ。
「わかった。それじゃ、俺は出る・・・って待て。ギルド登録しに来たんだが?」
「おぉ、そうだった。とりあえずFランクからでいいか?これにはBって書いてるが、流石に千年前でしかも別大陸基準のランクじゃどうしようも出来ないからな」
それはそうとしか言えないので、承認してギルドカードを作ってもらう。そして直ぐに俺の名前とFと刻まれた銅で出来たギルドカードを渡された。
「首に掛けたりなんなりして無くさないようにしてくれよ。基本的に無くしたら再発行は出来ないからな。まぁ、お前は問題ないだろうが」
「わかってる。ありがとう。ところで、図書館とかあるか?この国とか大陸とかについて知りたいんだが」
「図書館はあるが、爵位持ちか冒険者ならBランク以上の奴しか入れないから今のお前には無理だな。一般常識レベルでいいなら教会に行けば教えてくれるから、そこにいくといいぞ。場所は中央広場から西に向けば真っ白な塔があってそこが教会だ」
「なるほど。ありがとう」
「おう、これから頑張れよ」
そして本来の目的である登録を終えた俺はギルドから出る。そういやあのおっさん何でおれのソフィアって名前知ってたんだ?名乗ったっけ?
ちょっと不思議に思いつつ歩いてると後ろから声を掛けられた。
「すみません、少しよろしいですか?お聞きしたいことがあるのですが」
そして振り向くといつの間にかプレイヤーたちに囲まれていた。怖えよお前ら。宗教勧誘か何かかよ。
———あとがき—————————
<補足>
リアルモードでは、プレイヤーとNPCを明確に見分ける方法がありません。ただし、サービス開始時点であれば全員恰好が同じ白のシャツとジーパン or スカートなので直ぐにわかります。主人公はそれで見分けていました。
2023/03/31
転生者→再生者に変更しました。それに合わせて少し文言を修正しました。 再生者=前作プレイヤー、転生者=NPCと思ってください。
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