No.0-3:『OriginWorld』サービス終了
「はぁ……、結局魔王を倒せずBadEndで終了かぁ。せめてリスポーンがあったらもっとやれた気がするんだけどなぁ」
俺、
OriginWorld。これは世界初フルダイブVR技術を駆使したゲームで、ジャンルでいえば異世界人生シミュレーションになる。プレイヤーは人・エルフ・ドワーフのいずれかの種族を選択し、人類の敵対者である魔王の討伐を目指すというのがこのゲームの大枠のストーリーだ。
そしてこのゲームは作成したキャラが死ぬか、ログアウトを使用するまで帰ってくることは出来ない。ちなみにログアウトしたらキャラが死んだ扱いとなる。
リスポーンシステムがないため、一度死んだらキャラ作り直し。それはログアウトしても一緒というクソシステム。インベントリとかステータスというものもなければ、痛覚の遮断もないし動きを補正するようなアシスト機能だってない。その変わりにグラフィックは超絶綺麗でNPCに搭載されているAIは人間と遜色なく、五感も完全再現されている。とにかくリアルにこだわったシミュレーションゲームというのが一般的な評価だ。
とはいえ、そのゲーム難易度は一般人はもちろん、コアなゲーマーでも忌避するレベルであり、最初こそ世界初のフルダイブVR技術を使用したゲームということで話題になったが、その話題は実体が知れ渡ると共に一瞬で下火となっていった。
そのためこのゲームをプレイしている人はどんどん減っていき、3年が経った今、このゲームをプレイしていたのは掲示板で知る限り4人しかおらず、その四人は最終日は都合があるとかで、プレイ出来なかったそうだ。
ところでゲーム内で15年も過ごして大丈夫なのかという疑問があがるだろうがそこは心配無用。謎技術のオンパレードにより、ゲーム内で1秒過ごそうが100年過ごそうが現実ではきっかり6時間になるように調整されている。
そして今、俺の通算432回目のプレイを最後にこのゲームはサービスを終了したのだった。
「はぁ~、次何するかなぁ」
このゲームは何においてもリアルだった。戦闘はもちろん、生活様式から何から何までリアルだ。トイレはスライムを使用したぼっとん式が一般的で、調理場では薪を使用し、水は魔法で出すことが多かった。風呂に入るどころかシャワーすら珍しいレベルで、普通の人は水とタオルで洗い流す程度だった。
このゲームほどリアルな物はないだろう。そしてこのリアルにハマった俺が他のゲームで満足できるかというと否としか答えられない。今ではフルダイブVR技術を使用したゲームはたくさん出てきているが、リアリティという面ではOriginWorld一強だ。これにゲームらしいシステムが付いていれば大人気だったろうにと思う。
「いいのないなぁ~。まぁいいか。スポーツで紛らわせばいいや」
その後、鷹池迅(18歳)はゲームで鍛えた戦闘技術を駆使して様々なスポーツでその才能を発揮。19歳の頃にプロボクサーとしてデビューし、そこから6年でフライ級~フェザー級まで無敗での5階級制覇達成。24、25の頃には二年連続でPFPに選ばれた。そして今後はどんな活躍を残すのか誰もが期待した7年目。突然の引退を発表し、ボクシング界から姿を消した。
後にこの6年間は”幻のスポーツ世代”と呼ばれ、ボクシングのみならず、様々なスポーツで飛びぬけた成績を残す選手が誕生し、その全員が突然の引退を発表したことでそう呼ばれた。色々な憶測がなされたが、誰もOriginWorldの次作が発売されたからという事実には至らなかった。
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