Side.A-2:一般プレイヤーAさんの今

時系列的には2-5と2-6の間です。

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「おっ、エーさんまだログインしてるのか?リアルはもう深夜だぜ?」


「そういうビーさんこそ人のこと言えないのでは?」


「それはそうだ」


「「アッハッハッハ!」」


 Re:FW楽しすぎて辞めれないんだ。仕事?今の時代在宅ワークが基本で勤務時間も自由だから問題ない。与えられた仕事を期間にちゃんとこなせればだけど。


「こんばんわー。お二方もログインしてたんですね」


 冒険者ギルドの片隅で談笑してるとシーさんもやってきた。シーさんも俺らのお仲間だったようだ。折角冒険者ギルドに集まったのだから、メニューからではなく、ギルドに設置されてる依頼ボードから何か受けようという話になった。


「ん?『再開発地区の清掃』?なんだこれ。報酬も何も書いてないな。他は書いてるのに」


「確かに変ですね。他はちゃんと書いてありますし。聞くだけ聞いてみます?」


「聞いてみましょう。掲示板で見た感じ、現地にしかない依頼は受けれるなら受けたほうがいいみたいなので」


 シーさん曰く、好感度システムというものがあり、それに応じてNPCの応対も変わってくるんだとか。好感度を上げれば良くなるのはもちろんだが、下がったら対応が悪くなり、場合によってはモノを売ってくれなくなるとかあるらしい。既にそれで一人被害に合っているとかなんとか。とりあえず普通に接していれば問題ないだろう。


「すみません。この依頼なんですけど、報酬欄が空欄なのは何でですか?」


「あぁ、それは報酬が現時点で確定してないからですね。偶にあるんですよ。とにかく早く済ませて欲しいから依頼だけ出して報酬は後で提示するとか、依頼内容が曖昧で何をもって依頼達成とするか定まってない時なんかですね。こういう場合はギルドの方で最低限保証してくださいっていうラインがありますので、報酬が出ないなんてことはないですよ」


「へぇ、でもそれだとギルド側が損するんじゃないですか?」


「その辺はちゃんと審査してますから大丈夫ですよ。ここだけの話、この依頼は街からの依頼ですので、良い働きをすれば家と土地をセットで貰える可能性とかもありますよ」

 

 家に土地!そういうの貰えるかもしれない依頼もあるのか。これは現地の依頼は受けていくのも楽しそうだな。


「なるほど。それは面白そうですね。今日はずっと討伐ばかりしてましたし、こういう作業系を受けてもいいんじゃないです?」


「いいんじゃないか?何がもらえるかはわからないが面白そうだ」

 

「ですね。それじゃぁ、この依頼受けます」


「かしこまりました」


 そういうと受付の人は何かを書いた後、依頼票というものを渡してきた。これをなくすと依頼失敗という扱いになり、信用も下がるそうだ。俺らはインベントリがあるからなくすことはないと思うが、気を付けるとしよう。



「うっわぁ、すっごいことになってんな」


 再開発地区と呼ばれる南西エリアは本当に凄いことになってた。何かもう色々と凄い。家も道も塀も色々なものが巨大な何かに吹き飛ばされたかのようだ。


「お、あんたらは依頼受けてくれたのかい?依頼票は?」


 その場を眺めてると現場監督のような人に声を掛けられた。


「えぇ、そうです。依頼票はこれです」


「おぉ、良かった。見ての通り酷い荒れっぷりでな。人手がいくらあっても足りん。闘技祭がなけりゃぁもうちょいゆっくりできたんだがな。それがあるから急がないといかん。という訳で、お前らにはあの教会近辺の片づけを頼む。真っ白な鎧を着た騎士がいるから、そいつに依頼票を見せて指示を貰うといい」


「わかりました。では、行ってきます」


「おう、頑張ってこいよー!」


 その後、俺らは指示された場所に行き、騎士に依頼票を見せて片付けを行う。瓦礫の撤去作業中、同じエリアで作業していた人に何でこんなに荒れたのかを聞いた。なんでもとある冒険者と賊が大暴れしたらしい。


 1区画を殆ど瓦礫の山に出来るとか恐ろしいなとビーさんが言ったら、これでもまだ大人しい方だと言われた。本当にヤバイ奴は街一つを一瞬で消し去ったりもできるそうだ。そして今度ある闘技祭にはそういう奴らが多数出てくるらしい。


 ……腕試しに来訪者・再生者・現地人NPC部門に出ようと思ってたけどやめよう。そんな人外どもとはやり合いたくない。


「おっ、噂をすればなんとやら。あそこに黒髪のガキがいるだろう?今回の一件で暴れた冒険者の一人だ。主犯を討伐したのは奴なんだが、他の結構な人数を取り逃していてな。そのせいで1区画丸々潰れるような大事件になったのよ。ま、その取り逃したのは俺ら冒険者で叩いたわけなんだがな」


「へ……へぇ」


 おっちゃんが指さした先では、頭に白い犬のぬいぐるみを乗せた黒髪の少年が、真っ白な鎧を着た騎士にむち打ちされながら瓦礫の撤去を行っていた。あれいいのか?虐待では?


「あの姿が気になるか?あれは自業自得だから気にするな。代官に大見え切って自分で始末するといったくせにこの有り様だからな。しかも名誉貴族とか神聖騎士団の隊長だとか何か色々な立場持ってるときた。そりゃぁ失敗した時の揺り戻しは大きいさ」


「だが主犯は潰したんだろう?」


「そりゃ一介の冒険者とか平民ならそれでいいが、あいつは違う。噂じゃぁ伯爵と同等の立場を持つって言われてる。そんな奴が『主犯は潰しました。けど街壊れました許して』なんて言えるわけないだろう?だからああなってるんだよ」


「へ……へぇ」


 貴族社会こわっ。権力ってこえぇ。なんか色々気を付けよう。


 ゲーム内で日が暮れる頃にはだいたいの瓦礫が撤去されたので、これで依頼は完了となった。後日報酬を渡すとのこと。流石に長時間のプレイで疲れたので俺らは解散して各々ログアウトすることになった。ログアウトの直前、何やら男性の叫び声が聞こえた気がしたが、疲れてるが故の幻聴だろう。今日は楽しかったな。また明日も楽しみだ。



——儂別に壊しとらんのにいいいいいい!!!何故じゃあああああ!!!

 


———あとがき————————

 ソフィアちゃん組がログインした際に、グレース君が死ぬほど疲れていたのは夜通し瓦礫の撤去作業をしていたからでした。目的達成してはい終わりって戻るのが悪い()

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