No.2-34:準備
「なぁ、道程。装備はそれでいくのか?」
「む、法衣の用意が出来なんでな。
「あ、それなら僕が作ろうか?防具として成り立つ程度の物ならできるよ?」
「だが金がない」
「いいよいいよ。お金については苦労してないから。代わりに珍しいもの見つけたら譲ってほしい」
「むぅ……」
考えこむ道程。流石にただはやり過ぎだと思うが、良いのだろうか。シイラがそういうからいいんだろうけど。
「これを加工できるだろうか?」
「こっ、これってもしかして!!」
しばらく悩んだ末に、懐から拳大の鉱石を取り出した道程。俺にはそれが何かはわからないが、シイラ的にはテンションが上がるもののようだ。
「うむ、
「えっ!?いいの!?」
「うむ」
・なになになに?
・魔皇鉄って何?
・解説プリーズ!
「あっ、配信つけたまんまだったね。えっと、
「うむ、千年前に拙僧を育ててくれた母親の形見だ」
「えっとぉ、そんな貴重なものを使っていいの?」
「無論だ。むしろ法衣として身に纏えるならとても嬉しい」
・おっ、おう……
・これはコメントに困る。
・前の配信で赤ちゃんプレイを繰り返す人がいたってソフィアちゃん言ってたような?
・↑いやいやいやまさかね
・マザコン……なのか?
・いや、でも、まぁほら。千年立っても家族を大事にしてるっていいことじゃん(遠い目)
・確かに?
・そういうことにしておこう。
これは確かに反応に困るな。いや確かに遺品を何らかの形で身に着けておきたいというのはわかるけどさ。シュロウも心なしかちょっと引いてる。てかお前いつの間にグレースの頭の上にいたんだ。戦ってるときはいなかっただろうに。
「えっと、他に人来そうにないから配信は止めるね。またね」
・え~!
・もっと見たかった!
・けど仕方ないね。乙~
・お疲れ!
・え-!!
・お疲れ様ー!
・またねー!
そして配信は閉じられた。
「ところで装備はどれくらいで出来るんだ?」
「ん?1日あれば出来るよ。さっきはあぁ言ったけど、コツさえつかめば素直な素材だからね」
「ふーん、そういうなら任せる。どんな装備にするかは二人で話し合って決めてくれ」
「もちろん!」
そういって道程とシイラはどういう装備にするかの話し合いを始めた。
「で、グレース。来てもらえるかもって言ってたやつはどうだ?」
「残念ながら来れないようじゃ。代わりの者を出発までには間に合うよう向かわせてるとは聞いたがの」
ふーん。あっ、そういえばクラトスっていうAランク冒険者と知り合ってたのだからそいつの連絡先聞いておけばよかったな。失敗した。まぁいいか。
「ところで呼ぼうとしてたのはどんな奴なんだ?」
「儂の師匠じゃよ。戦い方を始め、生き方とか常識とか色々と叩き込んでくれた師匠じゃ。育ての親と言ってもよいな。儂よりも強いし性格はいいし美人だしで文句なし。その師匠の代わりを務められる人物をよこしたというのだから、心配することもなかろう。ではソフィアよ。今からデートするぞ!シイラよ、先に街に戻っとるぞぉ!シュロウ!」
「グルゥ!」
「はーい。楽しんで来てくださーい」
「えっ、ちょっ、まっ!」
まさに一瞬。ボーっとしてた俺はグレースとシュロウの巧みな連携によって連れ去られた。
「ぬふふふ、デート!デートなのじゃあああ!」
その後、日が暮れるまでずっと俺の手を離さずに街中を歩き回った。
——あらグレースくん、その子はお嫁さんかい?そうかい。それじゃサービスしないとね
——おうソフィア。グレースと結婚したのか?おめでとう!
——ついにグレースも結婚かぁ。お嫁さんも美人だし……なに?自分は男?恥ずかしいからってそんなウソをつくことはないぞ。自信をもて!ガハハハ!
街を歩いていると、住人たちは何故か俺たちが結婚したものとして声をかけてきて、もの凄い恥ずかしかった。しかもその話が掲示板にも上がっていたようで、家に帰るとシイラたちに詰め寄られた。さらに使用人たちの手によって、成婚記念と称したちょっとしたパーティまで開かれた。
解せぬ。いや本当に解せぬ。外堀の埋まり方が早すぎるって!!!おかしいでしょうこれぇ!!!プロポーズどころか告白だってまだだよ!?せめて手順は踏もうよ!!
———あとがき———————
結婚前提で話しかけてきた住人はだいたいグレースの手下です。そういう雰囲気を街中に作ることで、一般市民にもそうなんだと思わせて既成事実を作ってしまおうという魂胆ですね。使用人にパーティの依頼をしていたのもグレースです。流石前世を女王として生きた男。やることがえげつないですね。
果たしてソフィアちゃんは逃げられるんでしょうか?いいえ逃げられません(断言)
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