No.2-33:現ゲームモード最強プレイヤー

「それじゃぁ最後は俺だね。もう大丈夫かい?」


「うむ、いつでもよいぞ」


 そして最後の一人、アインの実力確認試験が始まった。アインの武器はそこそこよさげな片手剣一本。防具として革鎧を身に着けている。盾を使わずにどんな戦いかたをするのか見ものだ。


「『身体能力強化Ⅳ』『魔力性能強化Ⅳ』、それじゃぁいくよ。『瞬身』!」


 まず初めにステータス向上系のスキルと思われるものを使用したのち、また別のスキルを使用。一瞬でグレースの後ろをついた。


「ぬっ!?」


「『豪撃Ⅲ』!」


——ズガアンッ!


 背後から強力な一撃がグレースに放たれる。グレースは氷の盾を咄嗟に作り出すことで防御するも、盾は粉々に砕かれて吹き飛ばされる。


「どんどん行くよ!『アースランス×10』!」


 そこに土塊で出来た槍が10本、連続で放たれる。


「ハァッ!」


「来ると思ってたよ!『パリィ』!」


——キン


 それらの追撃を回避していつの間にかアインに近づいていたグレース。そのまま双剣が振るわれるが、アインはそれを予期していたかのようにスキルを使用して攻撃を弾く。


「『二段突き』!」


「くうっ!?」


 がら空きとなった身体に強烈な二段付きが放たれ、グレースに深々と突き刺さる。


——パリン


「!?!?」


 かと思えば、グレースの身体は氷となって砕け散った。


「こっちじゃよ」


「何!?」


 なるほど、先ほどのは身代わりだったようだ。いつの間にか用意した身代わりと入れ替わり、グレースはアインの背後から攻撃をしかける。


「ハハッ、なんてね」


——ドオオオオン!!!


 突如、グレースの足元が爆発した。アインはいつの間にか足元に爆弾を設置していたようだ。いつの間に。


「ケホッ、ケホッ。げっ、土が口に入った」


「気を緩めるにはちと早いのぉ。まだ終わっておらんぞ?」


「ゲッ!?『フルガード』!」


——ガアアアン!!


 爆発にまきこれたグレースであったが、しっかりと防御していたようだ。気の緩んだアインに向けて強烈な一撃が放たれれた。アインはスキルでガードしていたようだが、それでもアインは吹き飛ばされた。


「先ほどのお返しじゃ『氷十槍』」


 アインがグレースにやったように、グレースもまた吹き飛んだアインに対して氷の槍を10本連続で飛ばす。


「っ!『瞬身』!」


 アインはスキルを使用して強引に方向転換してこれを回避。が、グレースはアインが移動した先で待ち受けており、双剣が振るわれる。


「セヤッ!」


「くっ『オートガード』!」


——ザンッ!


 アインはガードスキルを使用するが、グレースの攻撃はガードをすり抜けてアインに突き刺さった。


「えっ!?」


「型通りの動きが二度も通用する訳ないじゃろう。相手の動きを読む力、組み立て方も上手かったが、どんな技が使用されるかあらかじめわかっていればいくらでも対応することができる。ということ儂の勝ちじゃな。来訪者にも強い奴がいるのじゃな」


 アインの身体からは血が流れ、首には剣があてられていた。これは誰がみてもグレースの勝ちだろう。


「ハァ……、俺の負けです」


・88888888

・アインって来訪者だったの!?

・ってことはゲームモードプレイヤーってこと!?

・めっちゃ強かったやん!

・俺らの希望の星や!

・ゲームモードでも強くなれるんや!

・でも負けたぞ

・↑水を差すなボケェ(怒)!!!!


「で、アインについてどうするのじゃ?」


「一つ教えて欲しいんだが、アインは未来予知的なスキルを持ってるのか?」


「いえ、特にないです。グレースさんの動きを事前に見てたので、多分こうだろうっていう読みですね」


「となると初見の敵には弱いか」


「ですねぇ。事前情報を集めてから戦うのが俺のスタイルなので」


 いくら事前に情報を集めてるとはいえ、それを実行できるのは相当なセンスが必要だろうに。というかサービス開始三日くらいでよくここまで仕上がったな。天才っていう部類か。


「じゃぁ今回は無理じゃの。今回の任務では、初見で儂より強い奴がおる可能性も高いからのぉ」


・グレース君より強い?

・それって大丈夫なん?

・だから協力者求めてるのか

・道程が何とかしてくれるさ

・ソフィアちゃん単騎で何とかならんの?

・↑数が足りないっていってただろ

・ってことは最低でもグレース君並みに強い敵が複数体出てくるってこと?それなんて無理ゲー?

・あ、あくまで可能性だから(震え声


「そうですか。あ、良かったらフレンドコード交換しません?」


「ふれんどこーどとはなんじゃ?」


「来訪者・再生者用の連絡手段だな。距離とか関係なく念話が出来るようなものって感じか?」


「ほう、通話魔石のようなものか。では儂からは通話魔石を……といいたいところじゃが在庫がないのでな。代わりに冒険者番号を教えてやろう。ギルドで手紙を出す際にこの番号を指定すれば儂に直ぐ届くからの。ちょいと手間じゃろうが、何かあれば連絡するがよい。都合が合えば対応してやる」


「ええっ、いいんですか!?ありがとうございます!」


 それに大きく喜んだのはクライス。このショタコンめ。顔がニヤケまくってるぞ。


 その後、俺らはフレンドコード(グレースとだけは冒険者番号の交換)を行い、アインとクライスはその場を去った。道程は他に用もないようなので、出発まで俺らと共に行動することになった。


「改めて、拙僧、武蔵坊道程と申す。よろしくお願い申し上げる」


「うむ、よろしく」「あぁ、よろしく」「えぇ、よろしく」


 さて、後はグレースが声を掛けてるという一人がくるかどうかか。それまで時間もあることだし、道程の装備を整えたいな。そうと決まれば提案してみるか。




—―—あとがき—————

 今までゲームモード=弱いみたいな印象が強めだったので、ちょっとテコ入れを。別に弱い訳ではないんですけど、始まったばかりでスキルを使いこなせてないというのと、育成が終わってないというだけです。今後時間が立てばアインくらいに戦えるプレイヤーは結構出てきます。アインがこのまま順調に育てばグレースに勝てるくらいにはなるでしょう。





 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る