No.2-32:二人目の同胞
「次は拙僧であるな。よろしくお願い申し上げる」
「うむ、いつでも来るがよい」
「では、お言葉に甘えるとしよう。タァッ!!」
少し休憩したのち、武蔵坊道程VSグレースの模擬戦が始まった。『タァッ!!』という掛け声と共に全長2メートルはあるであろう薙刀を軽々と振るう道程。キレもいいが、それ以上に間合いの調整が上手い。グレースが詰めようとしたときには、既にその先に薙刀が置かれているため中々距離を詰めれない。かといって大きく弾いて、その隙に詰めてようとしても瞬時に薙刀を引いて対応されており、気づけば再び距離を取られてしまう。とにかく近づかせず、自分の間合いで戦うことに専念した戦い方だ。
「純粋な近接戦闘では相性が悪いのぉ。ではこれならばどうじゃ!『雹弾』!」
近接戦闘では分が悪いと判断したグレースは魔法を使い始めた。直系3cm~5cmほどの氷の球が道程目掛けて襲い掛かる。
「『
道程はそれに対して、薙刀をものすごい勢いで回転させ、盾のように扱うことで弾幕を防ぐ。当然その間は身体ががら空きになるため、その隙にグレースは道程に近づいて攻撃をしかける。
「ぬうん!」
「くぅっ!?」
しかし、道程はなんと片手で薙刀を回したまま、その太い足をグレースに蹴りつけた。体格差もあってかグレースは大きく吹き飛ばされた。その間も弾幕を維持し続けたため、道程は追撃することは出来なかった。
「この弾幕は厄介であるな!ならば!『大炎上』!」
技を唱えると、道程の身体が発火。大きく燃え盛り、氷の弾幕は道程に当たる前に燃え尽きていく。
「ゆくぞ!『炎線』!」
その状態で薙刀を振るうと、燃え盛る炎の斬撃がグレースに襲い掛かる。対するグレースも自身の固有魔法で防御しているものの、氷があっという間に溶かされてしまうためかなり苦戦していた。
「ぬぅ、厄介な炎じゃ。して、その炎はいつまでもつのかの?」
「無論、グレース殿を倒すまで続くとも。ハァッ!」
押されているのはグレースだが、道程の炎は長くは持たないように見える。氷を瞬時にとかすだけの熱量を常時発生させてるのだから当然だとは思う。それをわかってか、グレースは持久戦に持ち込むようだ。
——30分後
「ぬぅ、その炎、一体どういう仕組みじゃ。それだけの熱量を維持するとなればそれ相応の魔力を消費するハズじゃがの」
「教える訳がありませぬ!ハァッ!」
・何かずっとこの調子だな
・いい加減決着つかねぇかなぁ
・てかこれ以上見る必要ある?実力の確認でしょ?
・確かにそれはそうかも
この配信を見ている視聴者もずっと同じ光景が続くため飽きてきたようだ。コメントにある通り、実力の確認をしたいだけなのだから、道程のあれは十分合格だと思う。相性の問題もあるのだろうが、グレース相手に終始攻め続けられるだけの実力はあるのは分かった。じゃぁもう止めるか。
「あー、二人とも。実力の確認という点ではもう十分だと思うから辞めてもいいぞ」
「それはそうじゃが、せめて決着は付けたいのぉ」
「拙僧も同意です。では次の一撃で決着ということでどうでしょう?」
「そうじゃの。それがいいかの」
二人の間で次の一撃で終了ということになったようで、二人は一度距離を取った。
「では、参りますぞ『
道程が思いっきり薙刀を縦に振るうと、穂先から大量の炎が放出される。それはまるで赤龍のような形をしてグレースに襲い掛かる。
「『
対してグレースが発動した魔法はあらゆるものを凍らせる極寒の風。その風が通った後には草木や地面はもちろん、空気中に含まれる水蒸気すら凍りダイヤモンドダストが発生した。その風は道程の放った赤龍とぶつかりあい、物凄い蒸気が発生して周囲が視えなくなる。
・どうなった?
・見えなーい!
・厨二心がくすぐられるなぁ
・技名が恥ずかしいと思うのは俺だけ?
・↑何を今さら。そんなもの全員が乗り越えてきたんだから問題ない。
・↑それな
コメントも何やら盛り上がっている。技名が恥ずかしいとあるが、ゲームでそんなこと一々気にしないだろう?そういうことだよ(?)
大量の蒸気が発生したあと、強烈な風が吹いて霧散する。残ったのは一面が氷で覆われた世界と、一面が炎で覆われた世界の二つ。丁度二人の技がぶつかったところに境界線があるため、決着はつかなかったようだ。
「引き分けかの」
「ですな」
・88888888888
・相変わらず盛り上がるな!!
・よかった!!
・で、判定は?
「道程なら連れて行ってもいいと思うが、グレースはどう思う?」
「うむ、儂も十分じゃと思うぞ。ところで道程は千年前を経験した再生者かの?」
「む、確かにそうであるが、何故それを?」
そっか。こいつ前作経験者か。そりゃぁ強いわ。ってか前作はソロゲーだったような……実はオンラインマルチゲームだったのか?あっ、それとも天使が記憶共有してるとかいってたから、今作を作る際に、前作プレイヤーのデータを共有させて千年前のことをいい感じに調整したのかな?ならありえそう?
「いやなに、かつて
「そうであったか。確かにその二つ名で呼ばれたこともあったが、そうか。遠い国まで拙僧の名は轟いておったのか。それは嬉しい話であるな」
炎鬼?当時の掲示板で、美人なママに拾ってもらうまで延々と赤ちゃんスタートするってコメントしてた猛者の名前が”Enki”だったような。流石に音が同じというだけの偶然だよな?この大男が赤ちゃんプレイとか考えると……ウッ!アタマガッ!
「どうしたのじゃ?」
「いや、何でもない」
よし、何も考えないでおこう。気にしない気にしない!
———あとがき———————
GWのせいで更新時間が12時から20時頃にずれてしまった。生活リズムを戻さないと!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます