No.2-35:突入
「道程、出来たよ!」
「左様か!おぉー、これは凄い。ありがとう」
「ふふふ、貴重な魔皇鉄を使えたから大丈夫だよ」
翌朝、始まりの街の北門でグレースが呼んだ人が来るまでの間、各々自分の装備を確認したりして時間を潰していた。
「で、俺の装備は?」
「大丈夫!忘れてないよ!」
今回俺が暗器をお願いしたのは、戦いの最中で大剣が壊れる、もしくは大剣を振り回せるような広さがない場合に対応するためだ。服もそれに合わせて作業服のような形状になっていて、クナイや鉄串などを取り出しやすいようポケットが沢山ついている。
「ありがとう、というか伝えたの夜だったのによく間にあったな」
「ふふーん!これくらい朝飯前だよ!」
本当に仕事が早いな。出来も急造とは思えないくらいにいいし。うん、これなら大丈夫だな。
「で、後一人はいつ来るんだ?」
「もうすぐ来ると聞いとるがの」
「失礼、冒険者パーティCrossの方々であってるかな?レイズの代わりに来たんだけど」
と言っている間に待ち人が来たようだ。黒髪に赤いメッシュの入った背の高い女性だ。背に盾を背負い、腰に片手剣をぶら下げ、防具に上質な革鎧を身に着けている。
「うむ、合ってるぞ。メリルというのはお主かの?念のためギルドカードを見せてもらえるかの?」
「はいこれ」
「確認した。流石師匠じゃな。Sランク冒険者を簡単に動かすとは」
「Sランクなのか?」
そりゃ心強い。メンバーとしては十分だな。
「えへへ、まぁ頑張ってますから」
「じゃろうな。で、メンバーは揃ったから向かうとするかの?」
「だな。移動手段はどうするんだ?」
「シュロウに特別製の馬車をひかせる。楽しい空の旅じゃぞ?あっという間に終わるじゃろうがな」
グレースに案内され、馬車の元へと向かう。外見も中身も極々普通の馬車だ。広さは成人男性4人が余裕をもって座れる程度。このメンバーなら特に狭いとは感じないだろう。
「よしっ、ではいくぞ!」
「いってらっしゃーい!」
シイラに見送られて、俺、グレース、道程、メリルの四人は馬車にのり、大きくなったシュロウが馬車をひいて空を飛ぶ。
「おおおお、これ本当に飛ぶんですね!」
「おお……これは凄い」
道程とメリルの二人は空を飛ぶことに驚き声を出す。俺はというと、驚いてはいるが、べったりと身体をくっ付けてくるグレースのせいでそれどころではない
「ぬふふ~、ソフィア成分を補充するのじゃぁ」
俺成分って何だよ。
「あの、お二人って付き合ったり結婚とかされてるんですか?」
「い「うむ!近い将来結婚式を上げる予定だぞ!」」
「いy「おお!そうなんですね!おめでとうございます!」」
「絶対に逃がさぬからのぉ(ボソッ」
いや何でお前ら悉く俺の発言を邪魔するんだよ!?あとグレース怖い!その発言はマジで怖い!いや本当に背筋が凍るって。え、まって何か物理的に凍ってない?ちょっ、はっ、どこ触ってんだ!あんたら二人も目を逸らすなぁ!目の前で襲われてるんだから助け、ぎゃあああああ!!!
「はぁ、はぁ、酷い目に合った」
「ぬふふ~♪ぬっふふ~♪絶好調なのじゃぁ~♪」
「とても素敵な関係なんですねぇ」
「ぐ、グレース殿が羨ましい(ボソッ」
「グルゥ……」
数十分後、目的について馬車を降りた。グレースは何か変な鼻歌を歌い、メリルは何故かニッコニコだし、道程お前本当に羨ましいって思ってる?さては童貞だなお前!シュロウだけだよ俺の味方してくれるの。あぁ、このモフモフ気持ちいい癒される~。
「して、敵はどこにおるのだ?ただの森の中にある広場にしか見えぬが」
降りた場所は道程がいうとおり、森の中にできたちょっとした広場的な場所。馬車の都合で目的地から一番近いところがここだったのだろう。ここからは徒歩になりそうだ。
「シュロウ、案内を頼む」
「ぐるぅ」
いつのまにかごく普通の狼ほどのサイズになったシュロウが森の中を進み、その後ろ俺らはついていく。馬車についてはグレースが持っていたマジックバッグに収納済み。あのサイズの馬車が入るって相当でかいバッグだな。ちょっと羨ましい。
「ぐるぅ」
数分ほど歩いて付いたのは極々普通の洞窟。特になにかあるようには見えないが、シュロウはこの先だと言っている。
「この洞窟の先にあるようじゃな。準備はよいかの?」
「あぁ」「えぇ、大丈夫ですよ」「うむ、問題ない」
「では行こう」
4人とも特に問題ないのでそのまま洞窟の中へ進んでいく。洞窟の中は外見に反して綺麗に整備されており、明らかに誰かが使っているような雰囲気が漂っている。
「いかにもといった感じのドアじゃのぉ」
洞窟の奥には真っ白な金属製の扉が設置されていた。
「で、どうするんだ?」
「むぅ、開錠できる人はこの場にはおらぬよな?」
「無理だな」「できませぬ」「私も出来ないですねぇ」
残念ながら、鍵を開錠するスキルを持つ人はこの場にはいないようだ。
「じゃぁもう壊すしかないだろ。俺がやろうか?」
「いや、お主がやるとうるさすぎるのでな。儂がやる『
グレースは魔法で扉を凍らせ、更に続けて魔法を使い凍った扉を音もなくチリに変えた。そんな器用なことできるなら開錠云々聞く必要なかっただろ。
「ふふん、では行こう。気を引き締めるのじゃぞ」
「何者だ!?」
音もなく扉を破壊し、俺の方を一瞬向いてドヤ顔していたグレースであったが、直ぐに敵がやってきた。結局誰がやっても変わらなかったようだ。グレースのドヤ顔はあっという間に崩れ去った。どんまい。
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