No.2-22:鼓動(シイラ視点)
物語はソフィアがヘストを向かいに行くところまで戻ります。
それではどうぞ。
———————――
「おっ、薬の効果切れた」
「シイラよ。もう一本持ってないか?」
「残念ながらないんですよね~」
ハンス君を鍛え初めて一週間後、廃坑ダンジョン前の廃村で休憩していている最中に、ソフィアさんに飲ませた語尾にゃんを強制する薬の効果が切れてしまいました。もうちょっと見ていたかったんですけど残念です。
ちなみに暗器付きメイド服ですが、そもそもソフィアさんが戦う機会がなくて暗器を一度も使わなかったんですよね。残念です。使い心地とか聞いてみたかったんですけどね。……今度のイベントでどうにか使ってもらえないか考えておきますかね。僕が作る武具の宣伝も兼ねてお願いしますとか言ったら了承してくれないかな?
「あっ、ヘストから電話だ。おう、久しぶり。そうか、わかった。ヘストの依頼が終わったそうだから迎えにいくわ」
「うむ、行ってくるがよい」
「やっとヘストさん合流ですか。いってらっしゃい」
ソフィアさんはヘストさんを迎えに一人で始まりの街へ向かいました。
一瞬電話って何だろうって思いましたけど、通話魔石がありましたね。すっかり忘れてました。それはそれとして、ヘストさんがようやく合流ですか。私より鍛冶師の腕が上と言われるヘストさんがどんな鍛冶をするのか、楽しみですね。
「あのぉ、ヘストってどなたですか?」
「む、そういえばお主は知らなかったか。元S級鍛冶師でな。儂等のパーティに所属してるんじゃが、最近は依頼でおらんかったのじゃ。そ奴が戻ってくるということで、ソフィアが迎えに行ったのじゃ」
「へぇ!凄い方が所属してるんですね!!」
「そうじゃろうそうじゃろう。ちなみに勧誘したのは儂じゃぞ」
「えええ!グレースさん凄いですね!」
「お二人とも、休憩はそろそろ終わりにして、ダンジョンに行きますよ」
「はい!シイラ先生!」
この一週間、僕がハンス君に魔法を教えたりしてたんですけど、いつの間にか先生と呼ばれるようになっていました。僕別にショタコンではないんですけど、こんなに可愛い子から先生って言われると胸がキュンキュンします。最高です。ショタコンではないですよ、本当です。
「せいっ!はぁっ!」
ハンス君もだいぶ強くなりました。ゴブリン、コボルト相手では大分余裕そうです。それこそ同時に3体くらいなら問題なく対応出来てます。本当にセンスがいいですね。教えれば教えるほど伸びていきます。子供の成長は早いっていいますけど、本当に早いですね。
ソフィアさんは頑張ってもCランク行けるかどうかって言ってましたけど、僕はCランクくらい余裕で到達しそうな気がしますね。Bランクに手がかかるくらいでしょうか?条件が整えばBランク相当の実力を発揮するくらいにはなりそうです。
「そろそろ次のエリアに言ってもいいと思うんじゃが、シイラはどう思う?」
「僕もいいと思いますよ。もうこのエリアではこれ以上は厳しそうです。ハンスくーん、そろそろ次のエリアにいきますよ」
「はい!シイラ先生!」
僕たちはダンジョンの最初のエリアを抜け、廃坑がある手前まで移動しました。ここで活動する冒険者が増えたことで、赤線が引かれている廃坑も増えてきて、まだ未攻略の廃坑は残り数個という状態です。
どうやらあの赤線は一度廃坑が攻略されたら線が引かれるようになってるみたいです。誰がとかは関係ないんですね。これ僕はリアルモードだからいいですけど、ゲームモードの方たちはどうなるんですかね?試練みたいに、いつでも挑戦できるとかそんな感じになるんでしょうか?まぁ、考えても仕方ないですか。
「さて、どれを選びましょうか?」
「そうじゃな。段階を踏むならゴブリン廃坑かコボルト廃坑のどっちかじゃろう。
「どっちも大差ないんですか?」
「大差ないじゃろうなぁ。どっちがいいとかあるかハンス」
「えっと、それならコボルト廃坑でお願いします。コボルトとやる方が若干苦手なので」
確かに少しやりづらそうにしていましたね。しかし自分から苦手な方を選ぶなんて偉い子ですね。よしよししてあげましょう。
「??」
「では行くぞ。この先は剣や鎧を身に着けたコボルトから出てくるからの。気を引き締めていくのじゃぞ」
「はい!グレース先生!」
そして僕たちはコボルトメインの廃坑へと進んでいく。ちなみにこのルートは等にクリア済みです。
「早速出てきましたね。ハンス君、任せましたよ」
「はい!うおおおお!」
登場したコボルトは片手に剣を持ち、鎧を身に着けた個体が一匹。ハンス君はいつものように攻撃しますが、いつもよりも若干動きの良いコボルトに翻弄されています。更にコボルトが武装していることで、大分戦いにくそうにしてます。
「はぁ!くぅっ!」
特に鎧があることに慣れないようです。普段ならとりあえず身体に当てればよかったですが、鎧があると、どこに攻撃してもいいというわけではないですからね。鎧に阻まれて攻撃の手数が減ってきてます。対応としては、鎧の隙間を狙うか、鎧を剥がすか、鎧ごと叩き切るか、ですかね。さて、ハンス君はどうするのでしょうか。
「ここだぁ!!はぁっ!」
「コボゥッ!?」
「はぁぁぁぁ!!」
ハンス君は鎧の隙間を狙うことを選択したようです。上手いこと隙間に攻撃を通して相手の勢いを止め、そこから身体強化の魔法を使ってラッシュですか。悪くはないでしょうね。戦闘に詳しくないので僕にはよくわかりませんが。とりあえず僕が教えた身体強化の魔法を実戦で使ってくれて嬉しいです。魔法の出来はまだまだですけどね。
「終わり、だぁ!!!」
「コボゥ!」
——ザンッ!
そうこうしているうちに終わったようです。何だかんだ初見の魔物相手でもまだ負けてないんですよね。本当に対応力とセンスがあります。この子優秀ですね。
「はぁ、はぁ、疲れました」
「お疲れ様。良かったと思いますよ。この調子で行きましょう」
「はいっ!シイラ先生!」
——ドドドドド……
「むっ、何の音じゃ?」
「っ!グレースさん下がって!『
休憩中、奥から大量の魔物が来ることを察知した僕は、地水火風の四属性全てを合わせたブレス攻撃を発動させ、奥からくる魔物に先制します。
「ハンスっ、こちらにこい!『絶零ッ!』」
——カキンッ!
「全く、面倒なことだ。こうも計画を邪魔されるとはな。しかもそのすべてが強者と来た。嫌になってきたぞ」
僕の探知魔法をすり抜けた奴がいたのかっ!グレースさんナイスです!
「何者じゃ!」
「お前らが知る必要のないことだ」
「『獄炎』!」
誰だか知らないけど、僕たちに敵対するなら全力で燃やします!
「うっとしい」
「なっ!」
純銀も用いずにこれを弾いた!?そんなバカな!?
「グハッ!」「ガァッ!」
——ドクン、ドクン
!?!?何が起こった。身体が、動かない。心臓の音が、やけに響く。何、これ。
「シイラ先生!グレース先生!!」
「お前も少し眠れ」
「クッ」
「用は済んだ。帰還する」
意識を失う直前、僕が見たのは全身を真っ黒なローブで覆った男が、ハンスを連れ去る瞬間だった。
———あとがき——————
安心してください、生きてますよ。
次からまたソフィア視点に戻ります。
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