No.2-6:ギルドマスターからの頼み事

「つ、疲れたぁ……」


 グレースがヘスト捕縛の件をスマートに解決してくると言い切った後、俺とシイラはほどほどの時間で切り上げた。そして翌日の朝。俺がログインすると、丁度グレースが帰ってきた。どうやらとても疲れた様子だ。


「お帰り。ちゃんと解決したのか??」


「当たり前じゃろぉ。ヘストは冒険者ギルドにおるぞぉ。儂は疲れたので寝る……。おやすzzzz」


 本当の本当に疲れていたようで、言う事言って即眠りについたグレース。


「戻りましたーってあら?グレース君も戻ってきたんですね?」


 そのタイミングでログアウトしていたシイラが丁度戻ってきた。


「おう、ついさっき帰ってきて、報告だけしてすぐに寝たぞ。ヘストは今冒険者ギルドにいるらしいけど、今からいくか?」


「あらそうなんです?それなら行きましょう。交渉するなら早い方がいいでしょうし」


「だな。じゃぁいくか」


 ということで俺らは冒険者ギルドに向かった。



「何か混んでるな」


「混んでますね」


 冒険者ギルドの中に入ると人がかなり多かった。俺が最初にログインした時の3倍くらい多い。今は朝方なんだが何があったんだ?


「ソフィアさん、シイラさん。お待ちしてました。奥の部屋に来ていただけますか?」


「お??」


 中で受付が空くのを待っていると、奥から出て来たギルド職員に呼び出された。何事??


 

「よお。昨日ぶりだな。お前ら。まぁ座れや。茶でも出そう」

 

 中にいたのは相変わらずにピカピカスキンヘッドなギルマス。茶を入れる姿はとても似合わないが、何故か様になってる……気がする。


「ズズゥ……あぁ、うめぇ。やっぱシンプルな紅茶が一番いい。お前らもそう思うだろ?」


「水分補給できれば何でもいい」「身体に入れば全部一緒では?」


「……聞いた俺がバカだったよ」


 俺とシイラの感性は同じなようだ。実際食事も飲み物も胃の中に入れちまえば全部一緒だしなぁ。多分グレースも似たような感じのはずだ。類は友を呼ぶというが、そういうことなのかもしれない。つまりギルドマスターは友ではないということだな。……ちょっと可哀想だから知り合いくらいには入れてあげよう。


「何かお前の中で変な扱いを受けてる気がするんだが……」

 

「気のせいだ」


「そうか。まぁいい。お前らに、というか正確にはソフィアに頼みたいことがあってな。それで呼び出したんだ」


「……頼み事って何だ?」


 俺はグレースから、『冒険者ギルドにヘストがいる』という情報しか聞いてないんだがな。まぁ、あいつ本当に疲れた様子だったし忘れてたとかだろう。


「一つ目はヘストをお前らのパーティに入れてやって欲しいということ。二つ目はヘストが依頼を受けることを許可すること。3つ目がエイダ聖闘技祭への参加。以上だ」


 ????


「あー、一つずつ頼む。まず俺らのパーティにヘストを入れて欲しいっていうのは?」


 最初から誘うつもりではあったから別に構わないんだが、何か思惑でもあるのか?まさか俺の許可なしに依頼は受けないとかそんなこと言ったわけじゃあるまい。


「ヘストがお前のパーティに入りたいと言っていてな。それを許可してやってほしい」


「あー、まぁいいけど、それは本人と話して決める。で、二つ目の依頼を受けるのを許可しろっていうのは?」


 何か想像ついてきたな・・・


「とある貴族が家宝の剣のメンテナンスを依頼したら『パーティリーダーのソフィアの許可なしに依頼を受けるわけにはいかない。依頼を受けて欲しいならまずソフィアの許可を貰ってからにしろ』といっていてだな。冒険者ギルドとしてその貴族には何かと贔屓してもらってるから断られると困るんだよ……」


 そんなことある???巻き込まんでくれません??


「ってか、まだうちのパーティーメンバーじゃないだろ?それに冒険者ギルドに所属してもいないんじゃないか?」


「いいや、ヘストは冒険者ギルドに形だけだが所属してる。そしてその依頼主はヘストの所属するパーティのリーダーがソフィアだと思っている。これがいっぱしの冒険者とか商人なら嘘でしたとか勘違いだったとかで押しとおせるだろうが、貴族相手にそれは流石にまずい。ヘストは大丈夫だがうちがまずい。形だけとはいえ冒険者なんだ。ヘストがやらかしたとなれば、その責はギルドに及ぶ。しかも相手が相手なだけに結構ヤバイ」

 

 えぇ……まじかぁ。いやまじかぁ。これ元女王のグレースが仕込んだことだったりしない?ヘストに依頼した貴族って実はグレースのことだったりしない?というかそうであってくれ。こんな面倒なことが俺のあずかり知らぬところで起こるとかやめて。せめて身内の仕業であってくれ。頼むー!


「えぇっと、ちなみにその貴族様の爵位は?」


「公爵」


 うわぁ、マジで勘弁して。本当に勘弁して。ヘストも何で断っちゃうの?何で俺の名前だした?貴族って基本面倒なのしかいないから関りたくないんだけど。


「ところでこれをグレースは知ってるのか?」


「無論、グレースにも伝えてある。そしたら好きにしろだってよ」


「はぁ、分かった。とりあえず本人と話してからだな。3つ目は元々参加するつもりだったんだが、何かあるのか?」


「いやなに、再生者の数が想像以上に少ないらしくてなぁ。大会の枠として取ってある以上は誰か出てくれないと困るから、それで誰か紹介してくれって大会運営者から言われてたんだよ。ソフィアが出てくれるなら十分だ。何ならシイラも出てもいいんだぞ?」


「僕は生産職なのでお断りです。でも武器制作依頼なら受け付けますよ?作業場を用意してくれるのであればですが」


「あー、そういや鍛冶ギルドから拒否された奴がいたって聞いたな。あれお前か?知り合いが泣いてたぜ。『腕がいいと見ただけでわかったのに、女という理由で弾かないといけないのが辛い』ってな」


「グレースさんから何となく聞いてます。確か女人禁制っていう暗黙の了解があるからとか」


「ここだけの話、鍛冶場の仕組みの問題で女人禁制の所があるから、あながち嘘でもねぇんだけどな。それがギルドにとってかなり重要な施設だから、かなり神経質になってるんだよ」

 

 へー。意外とちゃんとした理由?だったんだな。それにしてももう少しやりようはあると思うけど。


「とりあえず頼み事はわかった。ヘストと話させてくれ」


「おう、じゃぁ呼んでくるわ」





「よう、久しぶりだな兄ちゃん。パーティに入れてくれるってことでいいのかい?」


「まず何でそうなっ「私があんたに興味あるからだ」・・・そうか」


 なんだろうな。こいつから言われてもビビっとこないっていうか、色気『あ”あ”っ!?』おっと、これ以上変なこと考えるのは止めよう。まずいことになりそうだ。


「そもそも何でおれの名前だしたんだよ。あんたならもっと他に候補いたんじゃないのか?」


 ってか話に聞いていた限り、元Sランク鍛冶師という立場で跳ね除けられそうなものだけどな。公爵となると流石に無理なんかね?


「勘だな!お前なら許してくれるっていう勘が私をそうした!!」


「そ……そうか」


 そんな適当な理由かよ。んー……んー……どうしよう。いいかな?いいか。そうだグレースに押し付けよう。あいつなら上手く手綱握ってくれるだろう。俺らがログアウトしてる間一人にするのは可哀想だしな。うん、そうしよう。


「俺はいいと思うがシイラはどう思う?」


「依頼を完遂するまでは仮メンバーということにして、依頼を完遂したら正式にメンバーとして迎えるとかでどうです?」 


「確かに。そしたら俺の剣を無料で作ってもらうのも条件に加えようか。それでいいか?」

 

「了解した。しかと達成してみせよう。と、いうことだギルドマスター。先ほどの依頼受けると奴に言ってくれ。私も聖剣に触るのは久方ぶりでな。肩慣らしには丁度いい」


「ふぅ。受けてくれるようで良かったぜ。ありがとよ」


 それにしても聖剣のメンテナンス?が肩慣らし扱いか。鍛冶に関しては本当に凄い奴なんだな。


「あぁそうだ。お前の剣を作るなら、魔金と鉄、あと聖銀ミスリルがあるといい物ができるぞ。つい昨日だったかに廃坑型のダンジョンが出来たと聞く。運が良ければ集まるんじゃないか?」


 あぁ、俺らが見つけたところか。丁度いいから後でいくか。


「今は鉄と魔鉄、銀ならあるが、魔金と聖銀は手元にない。別にその二つが無くても問題ないんだろう?」


「まぁな。聖剣や魔剣が欲しいならその二つは最低限必要だが、無くてもそれなりの物にはなるからな。では私は依頼を済ませてくるとしよう。一週間ほどかかると思う。連絡はギルドを介してでいいか?」

 

「あぁ、構わない」


 一通りの用事を済ませたあと、俺たちはギルドを出ることにした。その途中、ギルマスからついでに依頼受けてけということで適当な依頼を受けることになった。


「あの、もしお二方の手が空いてるならこちらを受けてくれませんか?」


 何を受けるか悩んでいた所、受付嬢から受けて欲しい依頼があると言われた。その内容はダンジョンの調査だった。


 これ俺らが見つけたところだな。鉱石もほしいし丁度いいから受けることにしよう。


———あとがき——————

 いつのまにか4人目のメンバーが増えてました。書いてるとキャラが勝手に動きだすんですよね。不思議ですね。

 

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