No.1-9:シイラの薬草解説

「はい、薬草採取ですねー。少し先に森が見えてるので、そこで採取してこようと思います。薬草について解説しますが、あくまで前作—ゲーム内で今から千年前—の知識ですので、もしかしたら違う部分があるかもしれませんが、ご了承ください」


・了解

・あい

・はーい

・わかった


 ここからはシイラにバトンタッチして、俺は裏役に徹することにする。


・ところで夜だけど大丈夫?

・夜の森って怖くない?

・気を付けてね!

・ソフィアちゃんの大剣じゃ森の中は不利じゃない?


「あはは、心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫です。この辺に強い魔物はいないですから」


・まぁ第一エリアですしおすし

・それもそっか

・リアルに見えるけどゲームだもんな

・ソフィアちゃんなら木ごとぶった切りそうw

・ありえるww


「森の中でこんなデカい剣振り回すわけないだろ。拳で十分だろ」


「んー?それは何か違くないですか??」


・草

・脳筋族だった

・ワロタ

・実際それでも勝てそうなのが草なんよ

・ソフィアちゃんしてるなぁ


「あっ、まだ森じゃないですけどいい薬草見つけたので取りますね。皆さんこれ何かわかりますか?」


 シイラが地面から採取したのは葉が三日月の形をした草だった。ちなみに俺はこれが何か知らない。清らかな魔力を感じるので薬草だとは思うが。


・雑草にしか見えない。

・雑草

・草

・面白い形してるね。

・三日月草っていう名前だったりして

・そんな見たまんまなことある?


「おっ、そうです。三日月草って名前です。見たまんまですね」


・当たってて草

・まじかwww

・そのまんまじゃんwww

・草だけに草生えるwww


「この薬草は主に魔力回復ポーションの効果を高めるのに使われる薬草で、夜であれば割とどこにでも生えてます。対して昼間に生える日輪草と呼ばれる真ん丸な葉をした薬草があるのですが、そっちは主に体力回復ポーションの効果を高めるのに使われたりします。どちらも売ればそこそこの金になるので、見かけたら採取しておくことをお勧めしますよ」


 ほへー。日輪草って日光草のことかな?名前似てるけど違うんだろうか。機会があったら聞いてみよ。


・まじか知らんかった

・色んなところに生えてるらしいから役に立つな

・今の所一つ1000ゴルで売れるみたい

・いい金策になりそう

・まじかいいな

・薬草を見つけるコツとかってあるの?


「薬草を見つけるコツですか・・・。僕は草に含まれる魔力を識別して薬草なのか毒草なのかっていうのを判断してますね。この方法なら見つけるのは早いですが、実用できるようになるまで結構時間がかかると思います。あ、でもゲームモードでプレイしてる方ならスキルとしてそういうの補助するモノがあったりするんじゃないですか?」


・採取スキルとかか?

・一応鑑定っていうスキルはあるけど、どれが薬草かを見分けることはできないな

・何かありそうだよね。

・複数のスキルを組み合わせたら出来るようになるとかそういうのかも

・いうてまだサービス開始初日だしな。これから色々出てくるかもしれん


「確かに、サービス開始初日ですから、これから色々と出てくるんでしょうね。とりあえず魔力でも判別できるんだってことを覚えておいてくださいね」


「補足だが、魔力で薬草がどこにあるかを判別とか普通はしない。大抵は地に生えやすいとか、ある薬草の周りの地形はこうだとか、水場が近いとかそういった地理的特徴からどこに薬草が生えてるかを予想して探すのが普通だぞ。俺が前作でかかわったNPCたちはそうしてた」


「え……?僕の関わった人たちは普通に魔力でどれがどれだって見分けてましたよ?」


 「……多分お前の周りが異常だっただけだろう。類は友を呼ぶというからな」


・草

・なるほど

・魔力で見分けるとかしねぇよな。良かったそんな無理難題じゃなくて。

・むしろ安心した

・類は友を呼ぶ。つまり二人がパーティ組んでるのはそういうことなんですね。

・なるほどなー、ためになるなー


「そ、そうですか?あっ、回復草ありましたよ!」


・逃げたな

・認めたということで

・シイラもそっち側かぁ

・知ってた

・可愛いなおい


「ななな何を言ってるかわかりませんね?さて、回復草についてですが、これは体力回復ポーションの素材です。これもどこにでも生えてます。見て分かるように葉がクローバーの形をしていて、茎が真っ白なのが特徴です。サイズは5~10cm。取るときは茎の半分から上をナイフか何かで切り取りましょう。こうすれば数日で生えてきますので」


・強引な話題転換に草を禁じ得ない

・草だけにな

・凄い役に立つ

・それっぽい

・今ギルドの資料室で調べながら見てるんだけどその通りだったわ


「おお~、良かったです。ってことは前作と生態系は大体一緒なんですね。コメントしてくれた方ありがとうございます」


 なるほど。情報が集まるってこういうことか。見てる人が多いから、間違ってるか正しいのかも教えてくれるっていいな。


「とりあえず森まで行かなくてもこの辺で依頼分は回収できそうなので一通り回収しますね。それから森を探索しましょう。それっ」


 シイラが両手を上にあげると、周囲から草が浮かび上がりシイラの手元に集ってくる。回復草がざっくり20本くらいだろうか?依頼で必要な分だけ取ったようだ。魔法ってあんなことも出来るだなすごい。


「はいっ、面倒だったので魔法でチャチャっとやっちゃいました。」


・可愛いかよ

・超絶イケメンなのに仕草可愛くて草。

・しれっとやってるけどエグくない?

・魔法ってそんな便利なん?

・魔法のスキルレベル上げてけば俺らも出来るようになるんかな?


「んー、魔法って一言に行っても色々あるので何とも言えないですねぇ。同じファイアボールでも人によって中身は全然違うとかあるので」


「察してると思うけど俺とこいつみたいな前作をそこそこやり込んだプレイヤーは大分ズレてるはずだから目標にしない方がいいと思うぞ」


「……まぁ、そうかもですね」


・草

・だよな

・初期スキルで魔法選択したけどシイラ君が使ってるみたいに自由度はないしな

・頑張ればそういうの出来るかもっていうだけで十分

・そうかもっていうかそう。

 

「さて、折角ここまで来たので森の中を探索してみましょうか。索敵は僕がやるので、戦闘はお願いします」


「了解」


 依頼を追え、時間が余った俺らは夜の森の中へ入っていった。 

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