No.1-6:人類の歴史

世界観とかの大枠を説明する回です。

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「えー、では時間になりましたので講義を開始します。今回話すのはこの3つです」


 神官が指パッチンすると、突如空中ディスプレイが表示される。そこには『人類の歴史』『現存する主な国家と関係性』『魔物と魔族』の3つがデカデカと書かれていた。


 どんな話がくるのかワクワクするのはもちろんだが、そのモニターが凄く気になる。何それカッコイイんだが。


「ではまずは、人類の歴史から説明しましょう。人類は今から約1万年前に生命の女神エイダの手により産み出されました。我らエイダ神教が信仰する神様ですね。ついでにここでいう人類とは、我ら普人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族の四種族が該当しますので覚えておいてください。

 話を戻しますが、人類が産まれてから約9,000年という長い時間を掛けて徐々に魔物を退け、大陸を支配していきました」


「そして今から千年と少し前。神界にて破壊神ラグナロクが崩壊するという出来事がおこります。そしてその亡骸の残骸たちが意思を持ち新たな生物が産まれます。破神族―後に魔族と呼ばれる存在です。しかし、この時の彼らには全てを破壊する圧倒的な力はありましたが、繁殖するという行為ができませんでした」


「彼らはそれを打破し、真の生物となるべく行動を開始しました。生命の女神エイダを攻撃し始めたのです。これをきっかけに破神族VSその他の神という神界史上最も大きな戦が勃発。最終的には破神族を撃退することに成功しますが、神々は大怪我を負いました。破神族は神の力により破壊の力を奪われましたが、その代わりに多数の神の血を浴びていた彼らは繁殖が可能になり、魔族という生物に生まれ変わりました」


「運よく当初の目的を達成した彼らは、すぐに神界から脱出し、現世に降り立ちます。その後は人類と同じように自分らの勢力圏を広げていきました。そして彼らと人類がぶつかり、種全体での大きな戦争が発生します。これが人魔大戦と呼ばれる戦いです」


「神の血の多くを取り込み、圧倒的な力を持った魔族に人類は勝つことが出来ず、大陸の外へと逃げ出します。そうして逃げ出した先にあった大陸が、いま私たちがいる大陸です。大まかにですが、人類の歴史についてはこんな感じです。もっと詳しく知りたい方は冒険者ランクをBにするか爵位を得るか、またはそういった伝手を持って学ぶといいでしょう」


 やばい。思ったよりも面白かった。魔族ってそういう存在だったのね。そりゃぁ勝てないわ。むしろよくアレだけ戦うことができたよってレベル。


 あとディスプレイに映る映像が次々と切り替わるの凄い。あれ多分魔法だよな?魔法ってあんなことできんの?


「(なぁ、シイラ。アレって魔法だよな?)」

 

 気になった俺は小声でシイラに聞いてみる。


「(えぇ、魔法ですね)」

 

「(できる?)」


「(僕には無理ですね。緻密すぎます。前作基準でもAとか下手したらその上のSかもしれません。一部のNPCはシステムを使用可能と言われた方がまだ納得できます)」


 だよなー。俺も何となくだけどあれは無理だろって思うもん。運営が用意した特殊NPCとかなんかな?



「さて、では次に行きましょう。『現存する主な国家とその関係』ですね。特に今後旅をするなら知っておいた方がいい内容です。では、本題に入りますね」


 

「大陸にある主な国は私たちが暮らすエイダ聖国を中心に、ヒューマ帝国、サミロ王国、ノブル皇国、ヤマト神国の5か国があり、これらを五大大国と呼びます。各国の位置関係ですが我らがエイダ聖国が大陸中心部に位置しており、西部はヒューマ帝国、南部はサミロ王国、北部はノブル皇国、東部はヤマト神国が支配しています。ですのでその他小国の考え方は各部のトップとなる国の考えに影響されやすいです」


「さて、各国の関係を見る際に重要なのはどのような思想を持つ国なのか。これが大事になってきます。基本的に同じ思想を持つ国同士は仲が良く、違う思想を持つ国は仲が悪いです。思想にも色々ありますが、一番気を付けるべきは全種主義か選種主義かどちらの思想を持つ国かです。全種主義というのは種族関係なく全人類で協力すべきという思想です。対して選種主義というのは特定の種族のみ優遇し、他の種族を冷遇するといった思想です」


「お分かりだと思いますが気を付けるべきは選種主義ですね。中には特定種族以外の種族は自分らの奴隷となるべきだと主張し、実際にそう扱う国もありますので注意してください。このような思想を選種至上主義と呼んだりします。大陸西部にはこの考えの国が多いですね。特に五大大国の一つであるヒューマ帝国は普人族こそ至高であり、他の種族は亜人という人に似た動物であるという極端な考えを持つ国です。なので西部はその影響が大きいのでしょうね」


「他の北部と南部、そして東部でも中央側は全種主義が多く、選種主義でも西程行き過ぎた考えではないのでそこまで気を付ける必要はないです。せいぜい値引きに応じてくれないとか、ちょっと冷たいとか、盗みの対象になりやすいとかその程度です」


「東部の中でも大陸の極東に位置する地域は少々特殊で、神の血を継ぐ大和一族の血が最も大事だとする国です。彼の一族は天皇と呼ばれ多くの人に崇拝されています。基本的には全種主義でよそ者にも寛容ですが、天皇を揶揄したり貶めるような発言をすると彼らは大激怒し、下手すれば殺されますので注意してください」


 

 んー、何ていうか。極東が日本で西が中世から近世あたりのヨーロッパって感じか?白人至上主義的なやつ。でも意外と種族間の差別って少ないのな。肌の色が違うどころか、住む場所が違うとかっていうだけで争いを起こしてきた現実と比べると意外と平和・・・?魔物や魔族っていう存在があるから人類間の争いは少ないとかなのかな?


「さて、いよいよ最後のテーマ『魔物と魔族』についてですね。眠くなってませんか?そういう時は伸びをしましょう。水を飲んだりお菓子を食べたりしてもいいですよ。疲れるのはわかりますがもうすぐ終わりですからね。頑張ってください」


 俺は面白いから特に眠くならないが、他の人たちはそうでもないらしい。眠そうにしている人もちらほらいる。



「では、本題に入っていきます。まずは魔物についてですが、彼らは基本的に絶滅することはありません。何故なら魔力の元である魔素から生まれる存在だからです。もし絶滅するときがあるとすれば世界が滅ぶときだけでしょう。彼らは自分以外の全ての生物を敵視します。人類はもちろん、魔族のことも敵視しており、見かければ襲い掛かってきます。強い魔物ほど良い素材となるので、冒険者ギルドなどではなるべく傷付けずに魔物を倒すよう推奨したりしてますね。私たち人類の敵ですが、同時に人類がよりよい生活を築くのに必要不可欠な生物でもあります」


「次に魔族ですね。彼らの現在についてはよくわかっていません。千年前は人族と敵対し、人族は大陸を追われたわけですが、その後彼らと接触したという話は聞きません。今なお強いままなのか、それとも神の血が薄れて弱くなっているのかも不明です。ただ、元を辿れば破壊神そのものと言っていい存在ですので、もし会うようなことがあれば注意するに越したことはないでしょう」


「以上で講義は終了となります。私は30分程ここに残りますので、何か質問がある方は好きに聞いてください。特にない方は退席して結構です。お疲れ様でした」


 

 そうして講義は終わり、話を聞いていた人は次々と退席していく。


「ふぅ、結構面白かったな。なぁシイラ」


「面白かったですね。前作やってた時にわからなかったことも聞けましたし、今の大陸についてとかも面白かったです」


「それな~、この後はどうする?」


「宿はもうとりました?」


「まだとってないな」


「では、先に宿を取りにいきましょう。安全地帯の確保は大事です」


 シイラの提案に乗り、俺たちは宿を取りにいった。……別にエッチなことするためじゃないからね!このゲームそれもできるけど!しないから!フラグじゃないよ!




———あとがき—————————

 本当にしません。期待していた方、残念でしたね。私も残念です。

 

 

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