No.1-4:狩り

「さーて、どうすっかなぁ」


 せっかく装備を整えたのだから、早速魔物狩りに行きたいところだけど、今いっても混んでるだろうしなぁ。最初の予定通り情報収集でもするか。


 ということで冒険者ギルドで教えてもらった教会についた。歩いてる最中に既に見えてたけど大きくて美しい。現実にある建物でいうならミラノ大聖堂が一番近いかもしれない。


「ようこそエイダ神教会本部へ。本日はどのような用件でしょうか?」


 教会の門前に着くと門で待機していたシスターに声を掛けられる。


「この国のこととか大陸のことについて知りたいんだが。ギルドに聞いたら一般常識程度なら教えてくれるって聞いて来たんだが」


「再生者……で間違いないでしょうか?」


「ん?あぁ、そうだな。それで合ってるぞ」


「でしたら、再生者向けの講習を行ってますのでそちらを受けることをお勧めします」


「何を学べるんだ?」


「人魔大戦を含めた大雑把な人類の歴史、現存する国家間の関係性、魔物・魔族についてですね」


 おっ、前作のことも聞けるのか。それはありがたいな。


「わかった。ならそれを受ける。何時からだ?」


「一番近いのだと15時からのが空いてますね。受けますか?」


 えーっと、確かメニューで現在時刻見れなかったっけ。あ、見れた見れた。今が丁度13時だから2時間後か。


「あぁ、それを頼む」


「かしこまりました。ギルドカードはお持ちですか?」


「冒険者ギルドのカードなら」


「はい、それで大丈夫です。それをこちらに翳してくださいますか?」


 バーコードリーダーのようなものをシスターが取り出し、それにギルドカードを翳す。するとピッという音が鳴る。


「ありがとうございます。登録完了しました。では15時から講習を開始しますので、その前にお越しください」


 時間が空いたことだし狩りにいきますかね。




 最寄りの西門から外に出る。壁の外は広い平原が広がっており、平原ではプレイヤーと思われる人がスライムやホーンラピット(角が付いた兎のこと)などと戦闘していた。


「外壁のすぐ外に魔物がいる感じか。なるほどね。さて早速・・・の前にアラーム設定とか出来ないかな?講義を忘れたら嫌だし」


 メニューを開いてそういうのがないか確認するとあったので、14時半にアラームをセット。これで遅刻することはないだろう。


「よしっ。じゃぁ適当に狩りしながら進みますか」


 早速スライムを見つけたので近づいてコアを大剣で切断。すると動きが止まり、スライムの残骸だけが残った。


「死体が残るのは仕様なのか、それともリアルモードだからなのか。とりあえず死体の処理は考えとかないとな。スライムは何もしなくていいだろうけど」


 現に残骸はシュウシュウと煙を上げて減っていってるし、直に消えるだろう。


 そして少し歩くと、今度はホーンラビットを発見。向こうから飛び掛かってくるが、拳で叩き落として首を切断。


「んー、ナイフも買っておけばよかった。解体したいけど流石に大剣でやるのはめんどい。とりあえず角だけ貰っていこう。納品依頼とかあるかもしれんし」


 

 こんな感じで魔物を適当に狩りながら先へ進む。街の近くだとスライムとホーンラビットしか湧かないらしかったので、そのエリアはさっさとと走り抜けて次の魔物が出てくる場所へ来た。


「この辺からゴブリンとかコボルトが湧いてくるのか。数が少ないから偵察か?」


 ある程度進むとゴブリンとコボルトを見かけるようになる。とはいえ常に一匹なのでハグレか偵察かのどちらかだろう。


「倒しても処理が面倒だしなぁ。本格的に魔法も覚えたほうがいいか?前作は仲間が処理してくれたから身体強化だけでよかったけど、ソロだとそういうわけにはいかないしなぁ」


 おかげさまで7年のブランクがあっても身体強化は呼吸するように出来る。それ以外は一切覚えてないので、火球を飛ばしたり土の壁を作ったりとかはできない。面倒くさくて覚えようとしなかったからな。あの時は仲間にやってもらってたし。洗浄魔法っていう汚れ取る魔法くらいは覚えたほうがよかったな。あれ身体にも使えるし。


 とかなんとか考え事してると、こちらに気が付いたゴブリンが棍棒を構えてこちらに向かって走ってくる。


「おっ?やんのか?」


 ゴブリンが振り下ろした棍棒を素手で掴む。『ギャッ!?』とか言いながら引き抜こうとしてるが、魔力により強化された力を振りほどくことはできず、びくともしない。パントマイムみたいで面白いな。

 

『ギャ・・・ギャッ!』


 どうしようもないと思ったのか、棍棒を離してこちらに背を向けて逃げだした。


「やっぱゴブリンってバカだな。そーれっ」


 ゴブリンが持ってた棍棒に魔力をまとわせ、逃げたゴブリンに対して投げつける。すると『ビシャッ』っという嫌な音と共にゴブリンの頭がはじけ飛び、ゴブリンは死亡した。


「んー、弱い。肩慣らしにもならない。どうすっか」


 ブツブツとボヤキながら地面に穴を掘ってゴブリンを埋めていく。


「おっ、日光草じゃん。この世界にもあるのね。ラッキー」


 日光草にっこうそう。別名を万能草ばんのうそう。前作ではその別名の通り何にでも使える薬草としてよく知られていた。一番有名な用途は万能薬の素材としてだったが、それ以外にもこれを使って作ったアイテムは効果が高くなるという効能がある。そのため薬以外にも料理や鍛冶や錬金術とか何においても重宝した素材だ。


「これ結構高く売れるんだよなぁ。この世界でも売れるか知らないけど。あ、でも前世の記憶を持ってる奴がいるなら流石に知られてるかな?まぁ売れなかったらその時はその時か」


 あの鍛冶屋の所に持って行くのもありだな。まぁいいや。もう少し奥まで進もうか。


 それからしばらく、ゴブリンやコボルトで遊びながら先へ進んでるうちにアラームが鳴った。


「ん、もう時間か。結構進んだけどスライム、ホーンラビット、ゴブリン、コボルト以外の魔物は見かけなかったな。冒険者ギルドで聞いとくんだったな。失敗した。討伐部位もわかんねぇし」


 一応前作基準で取ったけど、同じかはわからないしな。まぁ今更後悔しても仕方ないので戻るとしよう。


「ありゃ、街が見えん。ちょっと進み過ぎたか。まぁ、丁度いいし7年ぶりに空を駆りますか」


 魔力による身体強化を強め、地面を思いっきり蹴ってジャンプする。『ドンッ!』という音と共に地面がへこみ、15mくらい宙に浮き、街が小さくだが遠く見えた。


「よしよし、良い感じだな」


 魔力で小さな足場を空中に作り、それを蹴って街の方角へ走っていく。身体強化と併用して走ってるのでかなり早い。途中鳥型の魔物が襲ってくるが、すれ違いざまに叩き落として対処。殺すとアンデットになったりするので、殺さない程度に加減している。


 そして門から2kmくらいになったところで適当な場所に降りる。


「思ったより魔物が多くてちょっと時間かかったな」


 とはいえ、体感で15kmくらいの距離を7分程度で駆け抜けたのだから十分なペースだろう。身なりを整え、ある程度身体を綺麗にしてから街へ入っていった。

  


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