No.2-29:これから


「で、何があったんだ?」


 その辺ってダンジョンで座り何があったのかを聞いた。グレース曰く、ダンジョンにある廃坑に入った後、突然ダンジョンが揺れておくから大量の魔物が現れたそうだ。それ自体はシイラが対処したそうだが、その間にシイラとグレースの警戒を潜り抜けてハンスを攫って行ったとのこと。そいつは全身が黒いローブに包まれた男だったという。またあいつか??何なんだよあいつ。


「で、お主の方の話も聞こうかの」


 俺の方からもダンジョンで何があったのかを説明し、お互いの情報を共有した。


「むむ……、お主より格上か。面倒じゃの」


「不完全体だったようだが、それでもかなり強かったな。俺と神聖騎士団6人で相手してやっと互角だったかなくらいだ」


「恐ろしいですねー」


 恐ろしいですねって。シイラは随分と他人事だな。

 

「情報共有はこんな感じですかね?とりあえずハンス君を取り返しにいくのは間違いないとして、ギルドにも報告は必要ですか?」


「ギルドへの報告は不要じゃ。神聖騎士団のものが変わりにやってくれるからの。護衛という依頼に関しては失敗扱い。代わりにハンスの救出および、依頼主であった公爵殿も行方不明のためその調査の依頼が入った。ギルドからの依頼じゃ」


「そうか。ところでギルドがそういう依頼を出すことってあるのか?」


「魔物氾濫みたいなことではないかぎり滅多にないがの。ギルドから聞いた話じゃが、依頼主はヒューマ帝国初代帝王の血を継ぐ者の一人じゃそうな。そんな重要人物をこの国で失ったとなれば、どんな難癖付けられるかわからぬ。ギルドとしても死活問題だそうじゃ」


「それ依頼する相手間違えてないか……。なんで冒険者に依頼したんだよ……」


「さぁのぉ。ギルドもそのことは依頼を受けた後に知ったそうじゃからな。貴族の権力って面倒だと、イストワンまで出張に来ていたハゲも嘆いていたぞ。何でという所は当人に聞かないかぎりわからぬじゃろうな」


 はぁ……。マジかよ。想像以上に重要な依頼だったわけだ。ちょっと舐めすぎてたかもしれねぇなぁ。千年前と比べたら大したことない奴しかいないだろうと思ってたが、そんなことも無かったか。気張ってかないとな。



「捜索するのはいいが、あたりはついてるのか?」


「それならばこのシュロウに任せるとよい。こやつは斥候のスペシャリストじゃ。追跡はお手の物よ」


「グルゥ!」


 シュロウも自信満々に吠える。俺に任せろと言わんばかりの強い目だ。本人がそういうのだから信じるか。


「そういえばヘストさんはどうします?パーティに入ったんですよね?」


「あぁ、そうだったな。色々ありすぎて頭から抜けてた。とりあえず始まりの街に戻ろう。それがいい」


「ぬ、宿はどうするのじゃ?もう夜遅いじゃろう」


「それについては心配ない。さっさと行くぞ」


「「???」」


 二人は首をかしげているが説明するより見せたほうが早いからな。そして俺らは宿屋の主人に一言いい、街から出て始まりの街まで向かった。



「お帰りなさいませ。ソフィア様。お連れのかたは冒険者パーティCrossのメンバーでよろしいですかな?」


「あぁ、そうだ」


 ヘストが報酬として受け取った拠点そのものを見せると、全員驚いていた。まぁ当然だな。俺も驚いたし。


「お、おぉ……凄いですね」


「説明はあるんじゃろうな?」

 

「ヘスト、報酬、これ」


「何で片言なんじゃ!」


 仕方ないだろう。それ以外に説明できる要素がないんだから。


「夜遅くにすまないな。こいつらをリビングへ案内してくれ。俺はヘストの元にいく」


「かしこまりました」





——カンッ!カンッ!


「おおーい!ヘストー!戻ったぞー!」


 金属の打つ音が響く鍛冶場に入り、ヘストに帰ってきたことを伝える。


「あぁん?おぉ!!お帰り!!魔物氾濫があったらしいが大丈夫だったか??」


「大丈夫ではないな。それ関連で話したいことがあるんだが、大丈夫か?」


「おう、そろそろ今日の作業は終わりにしようとしてたところだから大丈夫だぞ」


 ということなので、ヘストを連れてリビングへ。


「ズズゥー、美味いのぉ」

 

「美味しいですねぇ」

 

「グルゥ」


 リビングでは2人と一匹が茶を飲みながらゆったりしていた。なんか茶菓子も出てるし。


「どうぞ」


「あぁ、ありがとう」


 適当にソファに座ると、使用人が紅茶を出してくれた。何の紅茶かは知らないが、普通に美味しい。


「で、話っていうのは?」


 一息ついたところで、ヘストに今の俺らの現状を話した。


「ははぁ、そりゃ面倒だなぁ。言っておくが私は戦力にはならんぞ。鍛冶師だからな」


「といっても留守番になるけどいいか?」


「あ、それなら僕も留守番したいですー。戦い苦手なので」


「お前は魔法使えるだろうシイラ……」

 

「固定砲台としてなら強いですけど、純粋な戦闘は弱いですよ?僕も生産職なので」


「シイラの言ってくることは間違ってないぞソフィアよ。こいつは本当に戦闘が苦手じゃ。これまでは相手が弱いから問題なかっただけじゃ。じゃが、相手は恐らく儂等よりも格上じゃ。気軽に行けるような場所じゃない」


 あぁー、まぁ、そうか。確かにそうかも?


「かといって俺とグレースだけじゃ足りなくないか?」


「冒険者ギルド基準でAランク以上が最低でも5人は欲しいかのぉ」


「そんなに集められるか?心当たりはあるけど多分これないぞ」


 神聖騎士団第八天使部隊を応援に呼べればいいんだろうけどなぁ。色々と人手が足りてないって言ってたしどうだろう。

 

「儂は一人いるが、来てくれるかどうかわからんの」


「あっ、じゃぁ配信で集めればいいんじゃないです?」


「配信というとあれかの。お主ら再生者・来訪者が使える権能システムの事かの?」


「そうそう、それです。沢山の人が見るので、多分集まると思いますよ」


「でもそんな強い奴いるか?同じ再生者ならいるかもしれんがどれくらいいるか」


「むしろ再生者に見てもらうためでもあります。拡散してくれれば数人は集まるんじゃないですかね」


 んー……どうだろうな。前作を俺らくらいやり込んだ奴がどれくらいいるか。そんな奴がいれば、まず間違いなく俺らと同じように運営から招待されてるだろうけど、配信を見てくれるかどうかか……。


「まぁ、とりあえずやるだけやろう。グレースも心当たりある人に声かけておいてくれ」

 

「うむ、了解じゃ」


 人では一旦いいとして……。次は装備周りか。


「ヘストは今作ってる武器どれくらいで出来そうだ?」


「どのレベルを求めるかによるぞ。最低限使えればいいなら1日、そこそこでいいなら三日、最高品質を求めるなら一週間。どうする?」


「あー、それなら1週間で頼む。今回のには間に合わないな。シイラ、暗器をいくつか用意してくれ。服も指定する。真面目にやるぞ」


「はーい、了解でーす」


 あとは出発をいつにするかだが、明日の夜には出たいなぁ。場所がわかってるのなら尚更。


「ここを出るのは明日の夜目標でどうだ?」


「グルルッ」


「む?明後日の朝までは問題ないじゃと?さよか。じゃそうだぞ」


「シュロウお前千里眼も持ってるのか……?」


「儂にもよくわからぬが、偶に見えることがあるらしいぞ」


 そんな都合のいいことあるのかよ……。いや現にあったんだけど。これで戦闘能力まであったらチートもいいとこだな。


「そ、そうか。じゃぁ明後日の朝までに人集めて行動開始。それでいいな」


「うむ」「もちろん」「はい」「グルゥ」


「よしっ、じゃぁ解散。俺は寝る。おやすみ」


 あ-、濃い一日だったな。さっさと寝て明日に備えよう。これゲーム内で寝てたら勝手にログアウトして寝過ごしたとかないよな?……ちょっと不安だから一旦ログアウトしリアルの方で3時間睡眠にしておこう。




—―—あとがき———————

 この世界では睡眠時間を自在にコントロールできる睡眠装置が販売されていて、ソフィアはそれを使って3時間睡眠してます。フルダイブVRとかいう精神を仮想世界に飛ばす技術があるんですから、睡眠をコントロールする装置くらいあるでしょう多分。

 

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