No.2-2:ダンジョン?
「とりあえず俺は大会に向けて武器を新調したいんだが、それすると向こうで宿取れなさそうなんだよな」
「ヘストにパーティの専門鍛冶師としてついて来てもらえばよかろう。噂で聞く限り、鍛冶師としての腕は千年前の基準でAランクじゃろうからな。少し道は逸れるが道中に鉱山もあるから鉄はそこで取ればよかろう」
「お……思ったより凄い人なんですね。ていうか私よりも推定ランクが上だなんて」
「まぁの。少し前まではエイダ聖国で唯一のSランク鍛冶師じゃったからな。二つ名に神とつくだけの腕はあるじゃろうな。Aまではまぁ千年前でいうCということも多いじゃろうが、Sとなると流石に別格じゃよ」
「けど来てくれるか?鍛冶師としては超一流なんだろう?」
「じゃが今はまともに鍛冶を出来てないと聞く。交渉次第でなんとかなるじゃろう。儂も名前は知ってるがあったことがないのでな。交渉はソフィアに任せる」
たしかに。俺があの店はボロ屋だったからなぁ。客も入ってなさそうだったし。
「そうか。じゃぁ今から・・・っていまは夜だったか。さすがに今からはないな」
さっき戻ったときは昼間だったからつい昼間の感覚でいた。
「じゃな。行くなら明日朝じゃろう。儂もそろそろ寝るしな。お主らはどうするんじゃ?」
そっか。NPCは寝る必要があるんだよな。とするとどうしよっか。夜はすることなくて暇だな。
「鉱山の位置ってどの辺かわかります?教えてくれれば夜の間に鉱石とか色々私たちで採掘してこようと思いますけど」
「あぁ、それはいいな。ついでに鉱山の情報も教えてくれるとありがたい」
ということでグレースから鉱山の大まかな場所と情報を聞いた。その鉱山は現在は廃鉱山になっており、魔物の湧きが早いという理由で早々に手放したらしい。今はそれなりの腕を持つ冒険者が採掘にくる程度だとか。特に管理されてないそうなので、何かあっても自己責任だそうだ。
場所は東門から出て二つ目の街の手前から北に行った先にあるそうで、坑道入口の手前に広い廃村があるためわかりやすいだろうとのこと。
「じゃぁ行ってくるわ」
「おっとそうじゃ。これを持っていけ」
「これは?」
宿を出る前、グレースから指先程のサイズの石を渡された。
「通話魔石といってな。これを通せばどれほど遠くにいる人とだろうと通話できるというすぐれものじゃ。かつての使用可能距離は無制限じゃが、かわりに対となる石同士でしか通話できないという制限はあるがの」
「それって何気に凄くないですか?」
現実でいえば電波の届かない山奥や地下深くだろうとこれを使えば通話できるということだろう。1対1の通話という意味では現実を越えてるかもしれない。
「正真正銘の神器じゃからな。凄いに決まっておろう。なくすでないぞ」
「あぁ、もちろんだ」
「神器ですかぁ。千年前は素材が手に入らなくて神器は結局作れなかったんですよねぇ。機会があれば作ってみたいですねぇ」
素材が足りなかったか。人魔大戦の影響で手に入らなかったんだな。ってかその言い分だとBランクで神器作れるって話本当っぽいな。さすがに盛ってると思ってた。
「そうなのか。今の世はあの時よりも平和だから、その辺も手に入りやすいだろう。探してみるといいぞ」
「ですね。頑張ってみます」
「じゃ、行ってくるわ」
「うむ、行ってこい。何かあったら連絡してくれ」
「あいよ」
そして俺らは街の東門から外に出る。さすがに夜遅くということで東門は閉まっていたが、門番にお願いして開けてもらった。再生者だと言えば通してくれた。
「さて、そこそこ遠いみたいだがどういく?走っていくか?」
「私は空を飛べるのでそうしますけど、ソフィアさんは空を飛べないんですか?」
「飛ぶというか駆けるといった感じだな。魔力で足場を作ってそれを蹴って走ってる」
「さすがソフィアさん。じゃぁ早速いきましょう」
「おう」
と、いうことで俺らは空を飛んでグレースに教えてもらった鉱山に向かって一直線に進む。空を飛べる魔法使いはチラホラいたが何度みても凄いな。本当にどうなってるんだろうな。
「それは私のセリフですからね」
……偶に俺の心の声が読まれているはなんでだ?声に出てるのか?
「顔に出やすいんですよソフィアさん」
「そ、そうか」
うーん。そんなつもりはないんだがな。一応気を付けておこう。
「ここ、ですかね?」
東門から出て街道を真っ直ぐ進み、2つ目の街の手前で北側にある山に航路を変えて進むと廃村が見えてきた。
「だろうな。坑道の手前に廃村があるって言ってたしな。思ったよりも綺麗だが」
「たまにくる来る冒険者の方々が整備したんでしょうね。ここまでくるプレイヤーが増えたら村として復活しそうですけど」
そういう開拓系の依頼とかもそのうち出てきそうだな。
「さて、じゃぁ行きますか。照明はどうします?」
「俺はなくても大丈夫だ。暗闇には慣れてるからな。シイラはどうだ?」
「僕も必要ないですね。明かりを付けなくても魔法でカバーできるので」
「そうか。じゃぁこのままいくぞ」
そして俺たちは廃村を抜け廃坑の中へと進んでいく。
「ところで、ソフィアさんは採掘したことあるんですか?」
「あるぞ。何しても物資が足りんっつーことで、採れるものは全部採ってこいって感じだったな。それっ」
たまたま近くに鉄鉱石を見つけたので剣でいい感じに切りぬいてその部分だけとりだす。
「とまぁこんな感じだな。ピッケルすらないから大雑把だが。よっと」
「えぇ……流石に雑過ぎますよ。これじゃ殆ど石じゃないですか。あ、魔物です」
「鉱石も中にあるからいいだろう。これなら鉄と銀か?ほいよっ」
「まぁありますけどね。もっと綺麗に取ってください。こんな石の塊渡してもヘストさんきっと困りますよ。あと、そんな風に採掘したら崩落の恐れがあるので、今後は僕が採掘しますね。魔物は任せます」
「そうか。まぁ、採集についてはシイラの方が詳しいだろうし、お前に任せるよ。今後二人で活動するときはそうするか」
「ですね」
そんな感じで駄弁りながらも、寄ってくる魔物は倒し、採掘は続けていく。シイラの採掘は薬草採取と変わらず魔法を使った採掘で、歩いているうちに鉱石の方から勝手に寄ってきてるように見える。本当に凄いな。
「ところで、そのマジックバックの容量どうなってるんだ?もうかなりの量入ってるんじゃないの?」
「あぁ、これですか?これは僕の錬金術で中身拡張してるんですよ。やり方は教えませんけどね」
「別に聞いてないって。どれくらい鉱石はどれくらい溜まったんだ?」
「えーっと、鉄が50kg、魔鉄が30kg、銀が3kgくらいですね」
「思ったより少ないな。もっと取ってるかと」
「小さい化石とか宝石とかも一緒にとってますからねぇ。そう見えるだけでしょう。まだまだ時間はあるので奥へいきましょう」
それから更に先に進むと現れる魔物も少し変わって来た。
「オークか。こいつ結構美味いんだよなぁ」
「あっ、わかります!美味しいし、何より肉特有の臭みが全然しないんですよね!おかげで屋内で食べても匂いが部屋につかないし最高なんですよ!」
『ブバアア!!』
「……なんか違う気がするけどまぁいいか。っと」
こちらの姿を確認して襲ってきたオークの首を落とし、シイラが瞬く間に解体する。
「ふぅ。なぁ、シイラ。何か変じゃねぇか?」
「そうですね。僕も同じこと思ってました。こんな洞窟の奥でゴブリンとかコボルトとかオークが出るなんて」
そうなのだ。魔物はどこにでもいるといっても、大抵はその場所に合わせた種族が生息する。今いる場所でいうならゴーレムや蜘蛛、蛇、アンデットなど暗闇でも問題ない種族がそれだ。しかし実際に現れたのはゴブリン、コボルト、オークといった本来暗闇で活動するには向かず、明かりを必要とする種族。
もしこれが他のゲームならダンジョンと呼ばれるものになるのだろうが、前作にはそういうのはなかった。前作から今作までの千年の間に登場したという設定の可能性もなくはないが、無知のまま進むのは少々危険かもしれない。
「で、どうする?」
「んー。これが他のゲームだったならダンジョンなんでしょうけど、僕たちの知るダンジョンと同じかは不明ですからね。千年の間に魔物の生態が変わってるという可能性もあるかもです。それに直ぐ手放した廃坑という割には随分と広い気がします」
「だよな。感覚的に3kmくらいは歩いてるのに一向に奥が見えないもんな。長い間使われた坑道って感じがする。まぁ、魔法で一気に掘り進めたとか、大人数で短期間で掘り進めたとかもありえるけど」
「確かにそうですね。まぁ、鉱石は十分集まったので戻りましょう。戦闘は引き続き任せました」
「はいはい」
一先ず必要分の鉱石を採掘した俺らは戻ることにした。奥に行けばそこそこ強いのがいたのかもしれないが、今回の目的はあくまで鉱石の採掘だ。俺の目的にシイラを無理に付き合わせるのも悪い。どうせまた来るだろうから、楽しみはその時に取っておくとしよう。
———あとがき—————————
結局通話魔石くんの出番はありませんでしたね。またいつか出てくると思います。(そのうち存在を忘れそう・・・)
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