No.2-3:憲兵

「ふむ、それはダンジョンの可能性が高いのぉ」


 朝7時。宿に帰って起きていたグレースに廃坑のことを離すとダンジョンの可能性があるといった。


「ダンジョンっていうのは?」


「本来湧かないハズの魔物が湧き、謎の宝箱があり、外見と中の広さがどう考えても一致しないエリアの場所じゃな。例えば外見は小さな洞窟なのに中に入ったら海が広がっていたりな」


 どうやら俺らが想像したものの通りのようだ。


「千年前には無かったよな?」


「ない。人魔大戦の影響で生まれたとされるが、それが本当かもわからん。最初に見つかったのも700年前のことじゃ。以降、ダンジョンは徐々に増えているとされる。あれが何なのか、いつからあるのか、何もわかってないがの」


「そうなんですねー。人魔大戦というよりその前の破壊神ラグナロクが崩壊したのが原因ですかね?それとも、その後の破神族とその他神々の戦争の影響ですかね?」


「この大陸に元からあったという可能性もあるがの。まぁ何にせよ、何故生まれたかなぞ早々わかることじゃないしの。あまり考えても仕方あるまい。気になるならダンジョンの奥に進んでみることじゃな」


「確かにな。まぁ、ダンジョンのことは置いといてだ。この後はヘストのとこへ向かうということでいいか?」

 

「儂は冒険者ギルドにダンジョンのことを報告してくるから、先にいっててよいぞ」


「必要なのか?」

 

「別に必要はないが一応じゃ。偶にあそこを使う者もおるからの。Aランク冒険者として下のものの面倒は見んとな」


 どこかドヤ顔なグレースが微妙に腹立つが、ちゃんとAランクしてるからいいか。

 

 そして俺とシイラはヘストの元へ。グレースは冒険者ギルドに向かった。グレースについては本当に報告だけしてくるとのことなので、直ぐに合流できるだろう。




 鍛冶屋ヘストに向かうと、店の前を白の鎧を着た人らが店の前を取り囲んでいた。


「何かあったんですかね?」

 

「さぁ?その辺の人に聞いてみようぜ」

 

 その場にいた口の軽そうな野次馬に声をかけて何があったのか聞いた。彼自身もよくわかってないが、何やら鍛冶屋ヘストがこの街の副代官を殺したという話らしい。あの白い鎧をきた彼らは聖皇国の憲兵とのこと。・・・その割には品がないというかなんといか。どいつこいつもニヤニヤして気色悪い笑みを浮かべてる。あれを憲兵とは思いたくないが、貴族社会だと憲兵といえどそんなものなのかねぇ。


「どうする?」


「ソフィアさんはどうしたいです?」


「今は静観だな。ただ放置するつもりはない。俺の剣を作ってくれないのは困るからな」


「助けたいとかじゃないんですね」


「別に親友でも何でもないし、ヘストが無罪だという証明も出来ないしな。今無理に動いても悪者にされるのは俺らだよ」


「そうですか。ではこの辺でグレースさんが来るまで時間潰しますか」

 

「そうだな」


 今動くのは流石にないので、近くの喫茶店に入りグレースを待つ。グレースには通話魔石を使用して連絡済みだ。




「済まぬ、遅くなった。それで憲兵がいたということだが?」


 30分後、冒険者ギルドでの用事を終わらせたグレースと喫茶店で合流した。その頃には既にヘストが店から連行された後だ。


「まぁな。一応確認だが、憲兵っていうのは白い鎧を着て、天秤の紋章が描かれたマントを着てる奴らのことでいいんだよな?」


「うむ、合ってるぞ。しかし憲兵か。何かあったのかの?」


「噂じゃヘストが副代官を殺したという話らしいぞ。」


「うーむ……。確かに街の副代官が殺された事件があったが、あれは既に犯人が見つかったという話じゃったがな。それにあの事件は内部犯ということで公にはしてないはずじゃぞ」


「そうなのか?なら何でそういう噂が上がるんだ?」


 何で公になってない情報を知ってるんだとも聞きたいが今は我慢だ。そのうち機会があったら聞こう。


「大方、今度の闘技大会に向けていい武具を欲しい奴が、理由をこじつけて攫ったとかじゃと思うがの。腕が良くとも鍛冶ギルドから追放された人間じゃからな。こじつけても特に問題ないと踏んだのじゃろう」

 

「ってことは問題おおありなんですね?」


「当然じゃ。この国での罪の捏造は殺人を犯すよりも重たい罪になる。しかも相手が元とは言えこの国唯一のSランク鍛冶師じゃ。そんな貴重な人間を正当な理由なく捕まえれば、あらゆる王侯貴族から糾弾され、関わった者たちはまず間違いなく打ち首じゃ。更に他国からの印象も悪くなる。それを憲兵が率先して行うなんぞまずありえん」


「だが他国の人間という可能性はまだあるんじゃないのか?今度の闘技大会は世界中から人が集まるんだろう?」


「儂もそう思っとる。ま、恐らくヒューマ帝国の手先じゃろう。こういうことするのは大体西側と決まっとるからな。憲兵の中に内通者がいるのか、なりすましなのかはわからんがの」


「元女王としてはどのタイミングで奪還するのが理想だ?」


「理想は主犯がどこのだれなのかが判明する時じゃが、それじゃ手遅れになるしのぉ。ま、この件は儂に任せてくれ。スマートに取り返してくるぞ。Aランク冒険者は伊達じゃないぞ?」


「ふーん……。そこまで言うなら任せる。仮にも元女王がポカなんかしないよな?」


「ふん、あたりまえじゃ。誰に口聞いとるんじゃ戯けが」


 何となく不安だけど、本人が自信を持って言うんだから大丈夫だろう。最後の一言には女王としての面影も出てたしな。



———あとがき—————————

 次からグレース視点で物語が進みます。


PS.『あとがき』って打とうとすると毎回『あらすじ』って誤字るの何なんでしょうね?一番最後にくるあらすじってなんやねんっていう。


2023/04/05:SFジャンルで日間1位、週間1位ありがとうございます!!



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