No.2-37:宣戦布告
「ちぃっ!面倒だな!」
戦いが始まり数分、既に苦戦の様相を呈してきたソフィア達4人。いつもならここまで苦戦することはないのだろうが、相手が何の罪もない人間相手だとどうしても手が鈍ってしまう。しかも敵は生半可な傷ではあっという間に再生してしまう。かといって強い攻撃を当てれば殺してしまうかもしれない。そのため中々突破口が視えずにいた。
「皆さん!彼らをアンデットと思って思いっきりやっちゃいましょう!」
更に数分が経過して、助っ人として連れてきたメリルが叫んだ。
「おいおい、ハンスを助けるのが依頼だぞ!?」
「ならハンス以外をやりましょう!どのみち彼らは元に戻りません!」
「何でそう言い切れる!」
「私の固有魔法でそういう結果がでました!」
「その能力は何だ!それを言ってくれないと判断がつかん!」
その言い方的に恐らく鑑定や識別魔法のようなものと思われるが、どういう能力なのか詳細を語ってもらわないと判断がつかない。激しい戦いの最中でありながらも彼らは冷静であった。
「申し訳ないですが、私の持っている固有魔法は特殊なので詳細はいえません!」
しかしメリルから帰ってきた言葉は詳細はいえないということだった。
「むぅ、確かに強力な固有魔法には何らかの制限がある場合もあるのは確かじゃが……シュロウよ。その辺りの判断はつくか?」
「グルゥ」
グレースはダメ元でシュロウに聞いた。するとシュロウからは『メリルの言う通りだ』という意思が返ってきた。
「そうか……はぁ、儂もメリルのいう事に賛成じゃ!どのみちこのままではじり貧じゃぞ!」
「それは確かに。仕方ありませぬな」
「ちぃっ、仕方ねぇな」
このまま手を抜いていても仕方ないと判断した彼らは、本格的な掃討へと入る。いくら身体能力が引き上げられ、さらに再生能力まであるとはいえ、敵は技も経験もない一般人が殆ど。どういう訳かハンスはソフィア達にはあまり攻撃してこなかったため、10分と経たずに敵を殲滅しきった。
「これで、最後!!」
『あ”…ハ…ンス……』
何の因果か、最後に残っていた改造人間はハンスの両親であった。そのことを知らないソフィア達は何の躊躇もなく、ハンスの目の前で殺してしまう。
『あ”あ”……あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!』
それをきっかけに僅かに残っていたハンスの心が折れ、枷が外れてしまう。
「ぬぅ!?まずい!!」
直後、ハンスを中心に大爆発が発生した。それは山の一部を吹き飛ばすほどの威力であり、地下だったところは綺麗になくなっていた。
「ぐ……がはぁっ!」
「つっ……グレース!?」「グレース殿!」「グレースさん!」
予兆にいち早く気が付いたグレースは、自身の全力を持って氷の結界を作り大爆発を防いだ。全魔力を消費しても足りず、生命力まで代償にして使った魔法。その代償として、グレースの身体には大きなダメージが入っていた。
「はぁ、はぁ。儂はもう戦えぬ。あとは任せた……ぞ」
そしてグレースは倒れ、結界は解除された。
「シュロウ、グレースを運んでいけ」
「グルゥ」
シュロウはグレースを背中に乗せ、街へと帰っていった。
「で、ハンスはどうなったんだ?」
直後、突風が吹き土煙が晴れ、ハンスの姿が彼らの目に映った
「……生きているようですよ」
「何とも美しい、されど恐ろしい姿ですな」
額に這えた髪色と同じ金色の角、虹色の眼、背中には悪魔のような黒い翼が生えていた。
「……さない(ボソッ」
「どうしたハンス?」
「ゆるさない、許さない!許さない!!!よくもパパとママを!」
「ぐっ!?」
怒りの形相を浮かべたハンスがソフィア達に襲い掛かった。ただ一直線に飛んできて殴りかかっただけ。ソフィアはそれに反応できず吹き飛ばされた。
「ぬぅ!」
「遅い!」
咄嗟に道程がハンスに攻撃をしかけるが、ハンスの反射神経が道程の攻撃速度を上回り道程もまた攻撃を受け、身体が破裂した。
「これは困りました、一度撤退を……」
「逃が、さない!」
分が悪いと判断したメリルは一度引こうとするも、ハンスは逃がさまいと攻撃をする。
——ブウン!
「あひゃー、今の喰らってたら私死んでましたよ!」
まるで丸太でも飛んで来たかのような物凄い威力のパンチがメリルの頬をかすめた。
「ハァ!」
「がはっ!」
一度目の攻撃は避けれても二度目の攻撃を避けきることが出来ず、メリルは地面に叩きつけられて気絶した。
「ハァ…ハァ…ぐっ、あああああ!!!!」
残ったハンスは、突如として叫び声をあげる。額に這えた角は更に伸び、背中の翼もより立派な物へと進化した。
「クク、クククク、ハハハハハハハ!!!」
変化が終わると、まるで人が変わったかのように笑いだしたハンス。彼はそのまま空を飛び、どこかへと消えていった。
その日、世界に衝撃が走った。大陸西部のヒューマ帝国が魔族と手を組んだことを発表。更に帝国と魔族共同で全世界への宣戦布告が行われた。千年前の人魔大戦が、いま再び始まろうとしていた。
———あとがき———————
一昨日いったライブで疲れたので、昨日は更新できませんでした。すみません。また頑張っていきます。
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