No.1-7:パーティ結成

 夕方、街で宿を取り今後の活動方針を話し合うことにした俺ら二人。


「これからどうします?」

 

「俺は強い魔物と戦いたい。少しだけ外でて戦ったが弱すぎて肩慣らしにもならない。最低でも前作で脅威度Cランクくらいの魔物じゃないと。オーガとかゴブリンキングとかその辺」


「もしかしてソフィアさんって前作での冒険者ギルドランクCでした?」

 

「いや、Bだよ。」


「うわぁ、化け物じゃないですか嫌だー」

 

「お前に言われたくねぇよ!」


 魔法師ランクBと総合生産ギルドランクBも大概頭おかしいからな!


「大体このゲームをリアルモードでやってるやつは、前作での何かしらのランクがCかそれに近いD以上じゃねぇの?あの辺は人外に半身浸かってる奴らの集まりだったし。じゃなきゃわざわざリアルモードでやろうとは思えんでしょ」


「まぁ、そうですよねー。っていうかそう考えると前作の世界って世界全体が魔境でしたよね。あの世界のランクCって他のゲームならランクAとかSとかそういうレベルですから。最弱の魔物と名高いゴブリンもやたら強かった印象ですし」


「そうなの?ゲームは前作とこれしかやってないからわかんねぇや」


 何なら初めて買ったゲームがOriginWorldだしな。あそこまでハマるとは思ってなかったけど。


「そうなんですよ。初のフルダイブVRゲームの難易度が異常に高いってことで有名でしたよ?」


「そっかー。そしたら前作で冒険者ランクC以上のプレイヤー探して戦闘を申し込んだ方が楽しいかもな」


「もしかして旅する目的って強い奴と戦うためとかっていいます?」


「まぁ、半分、いや7割くらいはそういう目的があるな。残りの3割が前作の要素を探したいっていう感じ」


「うわー・・・、そんなバトル漫画の主人公みたいなこと言う人本当にいたんですね。そんなに強い奴探したいならリアルで格闘技でもしてればいいんじゃないですか?楽しいと思いますよ?」


「……もう試したよ。タイトルとってPFPも取ったけど最後まで楽しいと感じたことは無かったな」


「……あ、そうなんですね。なんかすみません」


 途端に気まずい空気が流れだす。


「あ、あの。そしたら配信しませんか?多分僕たちがやったら伸びると思うんですよ」


「そうなのか?」


「そうです。間違いないです。自惚れとか無しに僕たちはこのゲームのトッププレイヤーであることは間違いありません。そしてその二人が配信する。しかも美少女と美男子の組み合わせ。伸びない要素がないですからね!」


 すごい剣幕でまくしたてられ、『お・・・おう』としかいう事が出来なかった。


「そして沢山の人に見てもらえればおのずと強い人や魔物などの情報も集まります。僕は珍しい素材とか珍しい生産物の情報が欲しくてその情報も集まるでしょうから一石二鳥!ということで善は急げです!まずはチャンネル名とパーティ名を決めましょう!」


 急にテンションが上がったシイラについていけず、いつの間にかパーティ名やらチャンネル名やらが勝手に決まっていった。アカウントもいつの間にか共通アカウントが作成されてた。なぜ。



「よしっ、ひとまずこんなもんですかね!あとは随時視聴者の意見を聞きながら変えていきましょう」


 パーティ名は『Cross』。互いの外見の印象と実態が真逆だからということらしい。可愛い女の子にみえる俺が強くて、超絶イケメン美男子のシイラが弱いということらしい。・・・魔法ランクBのシイラが弱いとはとても思えないが、本人がいうならそうなんだろう多分。


 そして俺らが使うチャンネル名は『交錯する旅人クロス・トラベラー』になった。パーティー名のクロスに掛けてということらしい。


「ということで早速配信しようと思うんですけど、時間大丈夫です?」


「ん?いまリアルだと何時なんだ?」


「えっと、今リアルだと12時ですね。とすると先にご飯ですかね。あ、ゲーム内の3時間が現実の1時間に相当するとのことなので、覚えておいた方がいいですよ」

 

「なるほど、そうだな。先にご飯にしようか。じゃリアルの13時頃集合でいいか?」


「はい。大丈夫ですよ」




 ということで俺らは一旦ログアウトし、昼食を取って戻って来た。俺が戻るよりも前にシイラは戻っていたようで、宿のエントランスでブラブラしてた。


「あっ、お帰りなさいソフィアさん。配信では外での魔物討伐とか採集とかしようと思うんですけど、その前にギルドで依頼受けてきません?ギルドランクは上げて置いた方がいいと思うんですよね。ついでにもなるでしょうから」


「そうだな。それがいいか。俺は冒険者ギルドだけどシイラはどのギルドに所属してるんだ?」


「僕は冒険者・錬金・薬師の3つですね。でも今回は冒険者ギルドだけでいいですよ。他二つは生産依頼をこなすのがメインになるので、配信で見せても面白くないでしょうから」


「ふーん。そういうものか。まぁいいよ。じゃぁ冒険者ギルドに向かうか」


 と、いうことで俺ら二人は冒険者ギルドへ向かう。


「そういやこのゲームだと依頼ってどう受けるんだ?前作と同じように掲示板から依頼票を取ってって感じか?」


「それか受付にお願いして提案してもらうかの二択ですね。それと依頼には常駐依頼と単発での依頼以外に、全プレイヤー共通で受けれる単発依頼というのがあります。普通は誰かが受けてる単発依頼は受けられないんですけど、それだとあっという間に依頼がなくなりますからね。そうしないための全プレイヤー共通依頼です」


「へー。なるほどな。まぁ、誰か一人しか依頼を受けれませんとか、もう依頼ないですとかってなったらプレイヤーから不満でるもんな」

 

「ですです。」


 とかなんとか話しているうちにギルドに到着。ギルドの中は仕事終わりの時間帯ということもあってか結構混んでた。


「この時間に依頼を受けるって何か変な気分だな。普通は朝だろ」

 

「確かに前作をやってるとそう思いますよねー。あ、受付空きましたよ。行きましょう」


「お疲れ様です。依頼の報告ですか?」


「あ、いえ。これから依頼を受けたいんですけど?」


「??……あー、再生者ですか。すみません、普段は朝に依頼を受けに来る方が殆どですので。では冒険者ギルドカードを提出願いますか?」


 受付嬢は一瞬フリーズするが、直ぐに戻って来た。やはりいつもの感覚で仕事してると違和感しかないのだろう。


「はい、ありがとうございます。再生者のFランクということですので、今受けられる依頼はこんな感じですね」


 薬草採取、スライム討伐、街のゴミ拾い、ホーンラビット討伐、教会の掃除手伝い、孤児院の手伝い、宿屋の手伝い、配達依頼とかか。まぁ、簡単な依頼ばかりだな。言い方的に再生者・来訪者・住人とで受けらえる依頼が異なるようだが、まぁ気にしなくてもいいだろう。


「どうしますか?」


「薬草20個採取、スライム10匹討伐、ホーンラビット10匹討伐の3つでいいんじゃないか?他は今からやるような依頼じゃないだろう」


 えっと、討伐証明はスライムはコアの欠片、ホーンラビットは角か。


「そうですね。ではこの3つでお願いします。ところで薬草にも種類があると思うんですけど、どの薬草ですか?」


「かしこまりました。一般に薬草と言われるのは回復草と呼ばれるものですね。どういう見た目をしているか、他にどんな薬草があるかはギルド二階の資料室で参照できますので、そちらをご覧ください。パーティ登録は行いますか?」


「あ、それもお願いします」


「では、こちらにパーティ名、メンバーの名前を記載してください。」


「はーい」

 

 そしてシイラがパーティ名とメンバーを記入していく。


「ありがとうございます。パーティ名がCross、リーダーはソフィアさんでサブリーダーがシイラさんですね。少々お待ちください」


 何かの作業をしに受付は奥へいった。


「てか俺がリーダーなの?」

 

「ダメでした?」


「いや、いいけど。てっきり発案者のお前がリーダーかと」


「僕はあなたについていかせてもらう立場ですからね。一応」


「そ、そうか」


 自分で一応と言っているあたり、主導権は自分が持ってるという認識なのだろう。俺は俺のやりたいことが出来ればそれでいいんだが。


 そうこうしているうちに受付嬢が戻ってきた。


「はい。登録完了しました。こちらの依頼票を渡しますので無くさないようお願いいたします。これがないと依頼失敗という扱いになりますのでご注意ください。他に何か確認したいことはありますか?」


「いや、特にないな」


「僕もないです」


「そうですか。ではお気をつけていってらっしゃいませ」


 依頼を受け終わった俺たちは、最寄りの北門から外に出た。街から出た北エリアは手前は平原だが、奥の方には森が広がっているのが見える。


 依頼については討伐は俺が、薬草についてはシイラという分担になった。そしてシイラは配信を開始した。


「はい、ということで皆さんお待ちかねの狩りです。ソフィアさんは超強いので楽しみですね!」


「超強い訳ではないと思うんだがな。ところでもう始まってるのか?」


「はい、始まってますよ。何なら昼から戻ってきてからずっと付けたまんまですし」


「ふぁぁ!?」


「いえーい!どっきり大成功!!です!」


 いや、まじで驚いた。何か変なこといってないよな?大丈夫だよな?恥ずかしいんだが。

 


 


2023/03/31 転生者→再生者に変更しました。

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