第38話 魔力溜まり


ゴブリンソードがむくりと起き上がり、怒りを露わにしている。怒りで我を忘れてくれれば、扱い易い。


早く彼女達を追わないと、ゴブリンが相手だから殺されはしないが、また捕まってたら大変だ。



ゴブリンソードが俺の方へ突っ込んでくる。俺は迎え撃つ形だ。ゴブリンソードは大剣を豪快に振り回してくる。


それに対して俺はショートソードを使い手数で勝負している。一進一退の攻防が数分続くが、それでは手遅れになるかも知れない。


仕方ない…。


俺はもう1体の召喚獣をゴブリンソードの後方へ召喚した。召喚獣は大体10mほど離れた場所に自由に召喚できる。


俺とゴブリンソードが一進一退の攻防を繰り広げている中、ゴブリンソードの背後から召喚獣の渾身の一撃がゴブリンソードに決まった。


ゴブリンソードはその不意打ちに驚くと同時に、後方の相手へ向かって回し切りの反撃を行う。その会心の一撃が召喚獣の脇腹を捉える・・・。


ガキン。


轟音と共にそこに立たずむのは、【忘却の騎士】だった。当然、忘却の騎士には物理攻撃は無効化だった。


その隙に俺はゴブリンソードへ追い討ちを掛ける。腕を切り落とし、最後は首を刎ねた。



どうするか迷っていたが、奥の手を使った。だ。


ここから、アイスラン町まで移動させるのに結構時間が掛かるので、やめていた。ただ、時間との勝負であり、誰も見ていないので二重召喚を実行した。






ゴブリン達に捕まっていた女性達と分かれて10分ほどは経過している。俺は全力でフェアリーの痕跡を追いかけた。


フェアリーには俺に解るように魔法の痕跡を残させている。


直ぐに追いつく事が出来たが、恐れている事が起きていた。フェアリーは魔力が限界で魔法を打つ事が出来ない状況だった。


そして、彼女達の周りにはゴブリンナイトが2体と無数のゴブリン達が集まっている。彼女達は必死に戦っているが、既にゴブリンナイト達は遊びに入っている。


ゴブリン達は彼女達を簡単に捕らえられる獲物と思っている。なるべく傷を付けずに捕獲する為の行動を取っていた。


「きゃーーーーた、助けてーーーー。」


1人の女性が捕まり、仲間から引き離される。また、悪夢のような強姦が始まってしまう。


俺は全力で移動して、疾風の如くその集団を通り過ぎる。


遅れて旋風が吹く中


・・・バタバタバタバタ。


一瞬にして20体あまりのゴブリン達がその場に倒れた。


「っふぅー。間に合ったようだな。もう、大丈夫だよ。」


俺は、息を切らしつつも、平静を装って、彼女達を安心させるように言葉を掛けた。


「うう・・・うわぁ〜〜ん。」


一人の女性が俺の胸に飛び込んできた。それを皮切りに女性達が次々と俺に飛びついてくる。


女性達は殆ど裸同然の格好をしているので、正直対処に困るが、落ち着くまでそのままにさせておくことにした。


落ち着いた女性達に羽織る物を渡して、一緒に歩いて町へ戻ることにする。


忘却の騎士(シキ)には、周辺のゴブリン狩りをさせている。そのため、近場にゴブリンの姿は今の所見えない。


その後は、町へ戻るまでゴブリンに遭遇することは無かった。


今回、冒険者の女性達を5人助けることは出来たが、を発見した。これは、今後の事を考えるとすぐに手を打たないと大変なことになる。



・・・・



町へ戻ると冒険者達の保護も含めて冒険者ギルドへ向かった。そして、副ギルド長へ今回の経緯を報告した。


魔力溜まりについてはかなり疑われた。しかし、助けた女性達の証言があり、さらに条件を付けて証拠を見せることにした。


俺のスキル情報は秘密との条件で、運び屋スキル収納からゴブリンソードと200体以上のゴブリンの亡骸を見せる。


すると副ギルド長の顔色が変わった。


「エド、ご苦労だったわね。今回の情報はかなり優良だったわ。それにこのゴブリンソード討伐という成果・・・・あなた、収納スキル以外にもまだ何か隠しているわね。」


「・・・さあ。これ以上は、何も無いさ。ところでこれからどうする?」


これ以上追求されても仕方ないので、今後の事に話をすり替える。


「・・・まあいいわ。これからは、周辺の町村も巻き込んで冒険者ギルドから緊急招集が掛かるわね。勿論あなたもよ、エド。」


「内容にもよるだろうが緊急招集は、銀プレート以上が相場だろう!?」


副ギルド長リディアは、ほくそ笑む。


「今回は、そうは言ってられないわね。銅プレート以上は強制参加よ。特にエドは、ゴブリンソードをソロで倒すくらいだもの、金プレート級の活躍を期待しているわ。」


「・・・俺は銅プレートだぞ。」


「あら、そうだったかしら?でも、きっとそんな事を言ってられない状況に陥るわ。その時はよろしくね。」


俺は、ダルそうに多少諦めムードで答える。


「まあ、可能な限りは頑張らせてもらうがな・・・。」



その後に他所も調査して欲しいとの副ギルド長リディアからの依頼で、俺はもう少し周辺を調査することになるのだった。





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