旅立ち編

第27話 暫しの別れ


転生58日目の朝。


俺はタンクの肉卸屋で目を覚ました。トリートと同じ部屋に泊まっていたが、別に何かした訳では無い。


流石にタンクさんが居るのによろしく出来ない。トリートとは一度やっているが、あれは付き合っているのだろうか?


「大好き」とか告白めいた事を言われた覚えはあるが、そのまま、流れでヤッタって感じだ・・・。


体の相性は良かったと思う。トリートを別に嫌いじゃ無い。どちらかと言えば好きな部類だ。


だからって、相手は15歳なんだよな〜。俺の体は15歳だから、傍から見たら別に違和感ないだろう。


トリートが本気だったら、責任を取る感じかな。




ソファの上でそんな事を考えていると、トリートが入ってきた。今日は昨日色々あったので、遅く起きてしまった。


「エド起きたのね。朝ご飯出来てるわよ。」


「ありがとう。今行くわ。」


そういって、ダイニングへ向かった。既にタンクさんは朝飯を食べており、俺も隣に座って朝食を頂いた。



「トリート、タンクさん、これからの事でちょっと話があるんだ。」


朝食が終わって食器を片付け終わったタイミングを見計らって話を始めた。2人とも席に着く。


「これからの事って何だ?」


「一応、俺は今回盗賊に連れ去られた事になっている。そして、実は元冒険者メンバーと一悶着あって、俺は死んだ事になってるんだ。だから、そいつらに町中や冒険者ギルドでばったり会うと厄介な事になるんだ。」


「「・・・。」」


「だから、ほとぼりが冷めるまで、暫くの間この町を出たいと思う。」


「・・・今までみたいに隠れて過ごすのは駄目なのか?」


「まあ、ダメじゃ無いですが、元々旅の資金が出来たらこの町を離れようと思ってたんですよ。その最中に、色々とあって、孤児院にも厄介になって、ズルズルと滞在してしまった感じです。十分な資金も貯まったので・・・。」


「でもよぉ〜。」


「・・・私は反対だわ。せっかくエドと昔みたいに会える様になったのに・・・。だったら、私も連れてってよ!」


トリートは必死に俺に訴えてくるが、俺は首を横に振る。


「いや、危険だから駄目だ。俺は3年前に孤児院を出てから今までずっと冒険者だ。冒険者が大変なのは十分分かってる。一緒に居るとなると、それなりの力が必要だ。」


「だったら、私努力するから、何でもする・・・だから、だから、一緒に行かせてよ。エド。」


トリートは最後は涙を流しながら話しかけてくる。ただ、冒険者は危険な職業だ。それと一緒に旅だなんて危険極まりない。


「・・・トリート、一生の別れじゃ無いんだ。俺もほとぼりが冷めたら顔を出す様にすらからさ。」


俺はトリートの涙を手で拭いてやる。


「それに、『忘却の騎士』をお前と孤児院の守りとしてこの町に置いて行くから、何かあったらそいつに頼れ。トリートとメリーさんの言う事は聴くように命令して置く。」


「でも・・・。」


「2ヶ月後には必ず顔を出すからよ。」


「・・・分かったわ。絶対に戻って来るのよ。」


「おう。約束だ。」




そう言って、トリートとタンクさんと別れた。


その後、マリアさん所にも顔を出した。マリアさんとは意外にもあっさり別れだった。ただ、最後の言葉が気になる。


「あんまり待たせると、他の物になっちゃうからね。たまには顔を出して!」


マリアさんはヒラヒラと手を振って俺を送り出してくれた。何度か体を重ねていたので、少なからず情がある。サラッとした別れで少し残念だが、俺の意志で勝手に出て行くのだ。「待っててくれ」など言えたもんじゃない。


「何かの足しにしてくれ」と言って銀貨20枚ほどを詰めた小袋を渡した。


「マリアさん、また来るよ!」


俺もあまりグダグダせずにスパッとマリアさんに別れをつげた。




最後にメリーさんに会いたいが、流石に今のタイミングは良くない。会わずにアイスラン町を後にするのだった。


ただ、後日、孤児院に俺の手紙と共に銀貨20枚の寄付をシキ経由で渡した。



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