第29話 銀プレートってこんなもんか


俺がそのまま、冒険者ギルドを立ち去ろうとしたとき。


「ちょっと、兄ちゃん。そっちじゃねーよ。こっちだよ。」


俺の肩を掴んでギルドの中へ戻そうとする手があった。さっさとトンズラここうと思っていたが、捕まってしまったか。


「いや、俺はこっちで良いんだが。」


「兄ちゃんは良いかもしれねえが、俺達が駄目なんだわ。」


「そういうのは良いから放っといてくれ。なあ、許してやるから。」


「なあ、兄ちゃんこの状況を分かっているか?(テメェはこれから俺達に食事を奢ってくれるんだよ。わかるだろ?)」


面倒だから俺は男の手を振りほどいてギルドの外へ出ていった。すると、中から3人の男が出てきて2人が俺の両脇に並んで肩へ手を回して「ちょっと来いよ。」と冒険者ギルドの裏へ連れていかれる。


「なあ、お前は馬鹿なのか、3対1だ、どう考えてもお前に勝ち目は無いだろう?素直に俺達に飯を奢ってくれれば痛い目を見なくてすんだのに、なあ銅プレート。」


「・・・逆だろ。俺が見逃してやったのに、何で態々突っかかってくるんだ?実力も分からないトーシローなのか?それともただの馬鹿なのか?」


俺はリュックを地面に置く。そして、両手両足のリストバンドを外す。


「・・・ふざけてんのか?俺は銀プレートだぞ。ガキが粋がるのは十年早いんだよ。」


流石に相手も最低限のことは考えているのだろう。剣は抜かなかった。抜いたら、間違いがあっては言い訳が出来ない。


何やら構えるとそのまま俺の方へステップを踏んで近寄ってきた。男が鋭い踏込みで俺の顔面目掛けてジャブを放ってくる。


シュッ。


俺はそれを見切って、ギリギリで躱す。躱されると思っていなかった男は、ちょっと驚いた顔をしていた。しかし、すぐに真剣な顔になり、先程よりも更に鋭い左ジャブからの右ストレートを放つ。


俺は難なくそれを避ける。更に左右の足から蹴りも繰り出されるが、俺はその攻撃を難なく避ける。


銀プレートでもこんなもんか・・・。いや、コイツは雑魚とつるんでる様な奴だ。既に上を目指すのを止めて、時間も経つのだろう・・・。


現役の銀プレートはこんなもんじゃ無いはずだ。



俺が、奴の右ストレートに合わせて鳩尾へ一発喰らわせる。「うぐぅ。」かろうじて膝を付かないでいるが、立っているのがやっとの状態だ。


「誰が十年早いって?」


そこへ追撃を掛ける。


右アッパーカットで奴の顎を下から上へ突き上げる。少し浮き上がっているところへ更に左でボディーブロー。


そこから、倒れることを許さず、左右の連打を繰り出す。


ドカ、ボゴ、ボゴ、バコ、ドガン・・・・。


後ろの2人はまさかこんな状況になるとは思っておらず放心状態だ。酔も冷め始めている。


「った、た、の、む。」


俺は奴が意識を保っていられるように、絶妙な力加減で殴り続けている。


何か聞こえたが、まだ20〜30発しか殴ってないので、不完全燃料だ。聞こえなかったことにして、左右攻撃を続ける。


その時、右アッパーがモロに入って、顎からバキッと今までにない大きな音がした。返しの左フックをキメて奴をダウンさせてあげた。


「・・・銀プレートってこんなもんかよ。普段から格下としか戦ってないから駄目なんだよ。あと2人か、さっさと終わらせようぜ。」


俺は、残りの2人の方へ向き、手前の奴に向かって距離を詰め右ストレートを決める。


「あれ?」


そいつはその一撃でノックアウト寸前だった。左手で胸ぐらを掴み右手でパンパンと往復ビンタを喰らわせる。


「お、おい。何一発で伸びてるんだ?さっきの奴はもっと頑張ったぞ。」


往復ビンタをバシバシとキメていく。「ご、ごめん、なしゃい。」手を放すと這いつくばりながら俺の方から逃げている。


残りの1人はというと、2人目が往復ビンタを喰らっているスキにギルドに逃げ帰った。


「何だったんだ・・・。」


取り敢えず、這いつくばりながら逃げている奴の近くへ行き、「あいつを頼む」と一言だけいって、俺は穴熊亭へ向かった。




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