第12話 強敵との死闘
「ワオーン」と遠吠えが聞こえると、ウルフ8匹と全身真っ赤な毛をしたレッドウルフ1匹が姿を表した。
レッドウルフがグループのリーダーだろう。中心におり、一歩下がった位置で全体を見渡している。
レッドウルフがウルフ達に何か合図を送ると、2匹のウルフが俺の左右から同時に飛びかかってきた。
とっさに腰に挿してあるショートソードを右手で持つと、冷静に且つ正確な剣捌きで2匹のウルフの命を断つ。
レッドウルフは少し考えている様だった。そっちが攻撃して来ないなら・・・俺が一番近くのウルフへ向かって距離を詰める。ウルフも警戒しており、飛び退いて後退する。
レッドウルフは時間を置くとマズイと判断したのか、7匹で俺を囲むようにゆっくり動く。
次の瞬間、ウルフ達が一斉に動き出す。俺の足、胴体、腕、頭と様々な場所へ鋭い爪や牙で攻撃してくる。
致命傷は避けているが、全ての攻撃を躱しきれずに所々から血が滲み出る。反撃で1匹のウルフを倒したがまだ、6匹残っている。
ただ、幸いな事にリーダーであるレッドウルフはウルフとさほど変わらないスピードだった。
「これなら何とかなりそうだ。」
そう呟くのも束の間。残りの6匹は息をつかずに俺へ向かって波状攻撃をしてくる。全ての攻撃を躱す事など難しいが、致命傷を避けながら、1匹ずつ確実にウルフを倒していく。
残り3匹になって、少し余裕が出来た為一瞬気を緩めてしまった・・・。
「っう。」
利き手とは逆だが、左手をレッドウルフの牙が襲った。
少し気を緩めてしまったが、決して油断していた訳では無い。レッドウルフのスピードが一気に上がったのだ!1.5倍程になっただろうか。そのくらいの差に感じた。
俺の反撃を躱す様に後ろに飛び退いたレッドウルフは、少し笑っている様だった。
アイツは多分最初から油断を誘う為に、実力を隠していたんだ。そして、俺が警戒を下げた段階で隙を見て本来の実力を出した・・・。モンスターなのに色々と考えてやがる。
このチャンスを逃すまいと、3匹は一斉に俺に襲い掛かって来る。
「そっちもか・・・。」
リュックとリストバンドを外す。ドスン。
俺も命の掛かるこの場だが、訓練をしていたのだ。今まで傷らしい傷を負った事が無く、ピンチも訪れて無かったので、何処か楽観視していた。
「っお、体が軽いな。」
今までの動きが嘘っだかの様に迫り来るウルフの攻撃を躱して反撃の一撃を加える。瞬く間にウルフ2匹を片付けた。
残るはレッドウルフ1匹だけとなった。今まで相手してきたモンスターの中では、明らかに1番強い。だが、今の俺からすれば倒せない相手では無い。
レッドウルフが一瞬で俺の懐に飛び込み鋭い爪で攻撃してくる。俺は爪の猛攻をショートソードで捌く。剣術スキル様々だ。
スピードは俺がやや優勢。力は互角って所だろう。
左腕の傷が痛み早目に決着をつけたい。出し惜しみ無しだ。ファイアアロー。
俺の目の前に火の矢が2本現れてレッドウルフにもの凄いスピードで迫っていく。レッドウルフは1本目の火の矢をギリギリで躱すが、2本目を前足に受けた。そこから、火の手が上がる。
「よし、上手くいった。」
奇襲に近いので、初見だから食らったのだろう。そのまま、レッドウルフへ近づきトドメを刺さなかった。
物凄いスピードで真っ黒いウルフが現れたのだった。これは明らかにブラックウルフだ。
俺の横を通過すると同時に俺の右足と右腕に爪での攻撃を放つ。激痛と共に俺の右足の太腿と右腕から血が出る。
コイツはやばい。エドの知識で言うと、ブラックウルフはBランク下位のモンスターだ。今の俺が相手に出来る訳が無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます