第11話 レッドウルフ


転生18日目の朝。


昨日は、『火魔法スキル』を取得して、指先に火を発動させることが出来た。昨晩になったら魔法が使える感覚があったので、部屋の中で火の大きさを変化させる事に挑戦した。


大小の火を発現が出来た。そして、寝る直後になると、左右の指で同時に火を発現させるまでになった。




毎朝晩の訓練の成果も徐々に出てきている。今ではどんどんと負荷を掛けたトレーニングをしている。20kgのリュックと5kgの両手リストバンドを装着して、腕立て伏せや剣術の稽古を行っている。


その結果、70kgの岩を余裕で持ち上げられる(限界は100kgほどだ)。垂直飛びは、100cmまで到達した。一般人の2〜3倍ほどの能力までは発揮できている。


午前中に行っていた肉卸店での運搬作業は、現在行っていない。随分と先の予定の荷物まで運搬を完了させてしまったらしい。更に病気だった者も随分と前から復帰している。


そのため、今日からは午前中も西の森で魔法の訓練が行える。今日はファイアボールの特訓である。発現させる所までが目標。



早速、森に着くと右手の人差し指に意識を集中させる。昨晩の訓練の通り、直径15cmほどの火の玉が現れる。この状態で、岩へ向かって放つが、途中で火の玉が消えてしまう。


次はもっと火の玉を濃密にするイメージを取る。中心に魔力(今後、魔法を使う不思議な力を魔力と表現する。)を溜め込むイメージを持ち、その周りを薄い膜で覆うようにする。


先程と見た目が同じ直径15cmほどの火の玉だが、岩へ向かって放つと・・・そのまま岩まで到達して小さな爆発を起こした。岩には直径5cmほどの小さな穴が開いている。


「おぉー小さいが自力でファイアボールを発動させたぞ!!」


ファイアボールの発動まで、1日は覚悟していたが、失敗を繰り返しながら、半日程度で成功させた。


今回は、『忘却の騎士』にハイラビットの狩りを任せている。自衛のために可能な限り魔法の習得を急いでおきたい。


その日は、昼過ぎまでにファイアボール3発の発動に成功させたが、ここで魔力が尽きた。勿論、剣術スキルと身体強化スキルの鍛錬も同時進行で行っている。


この町を出るためにハイラビットで金策を行ってきたが、ある程度金にも余裕は出てきているが。この世界で初めて知り合った人々と分かれるのも少し寂しい。特にマリアさん・・・だが、あの人は競争率が高い。まあ、あの見た目で愛嬌もあり、一緒にいると退屈しないし分かる気がする。それで、決まった人が居ない訳がないだろう。


それに孤児院も気になっている。最近、少しずつ景気が更に悪くなっている。この状況で、この町のアキクズラ=アイスラン男爵が孤児院に対してどう対処してくれているのか・・・。期待はしてないが少しくらい施しがあっても良いと思う。


エドの体に転生した俺には、エドの意思も少し残っているのか、どうしても孤児院が気になっていた。


実際、俺自身には関係ないので、どうとでもなるが、心理の部分で引っかかりがある。




転生19日目、20日目と日が立つ内に魔法の扱いにも慣れてきた。


19日目には、ファイアボール4発+ファイアアロー1発。岩の重量上げ、垂直跳び変化無し。


20日目には、ファイアボール4発+ファイアアロー2発。岩の重量上げ、垂直跳び変化無し。


徐々に徐々に魔法の発現回数も増え、魔力の総量的なモノが増加してきた感覚だ。魔力の総量を増やすには、ラノベと同じだろう、限界まで魔力を使用して、そこからまた限界まで追い込んでを繰り返すと増える。


ドラゴンボー◯の超サイ◯人が極限状態から回復すると戦闘力が上がるチート仕組みのようだ。まあ、俺はサ◯ヤ人じゃないが。




・・・・・


転生30日目には、ショートソードを購入し、銀貨21枚とぼちぼち拠点を移動しても生活出来る資金も溜まった。


ファイアボール6発+ファイアアロー4発。岩の重量上げ80kgは余裕、120kgが限界。垂直跳びは110cm。着実に力を付けている。



今日は朝からハイラビットの姿が中々見れなかった。その代わりにウルフとやたらと遭遇する。


ただ、ウルフは今の俺の的ではない。5匹以上の集団では攻められた事が無いが、それ以下なら数が多くても対処できる。しかも、魔法も使えるので、戦略の幅も広がっている。


4匹・・・7匹・・・9匹・・・・12匹・・・14匹とウルフを倒した総合計が増えて行く。1日で遭遇したウルフでは、今日が最多だ。


それに比べて、お昼を過ぎたというのにハイラビットは1匹である。収入も1日銀貨1枚を最低目標としているので、未達である。



俺もハイラビットが出てこないから、宛もなく歩き回っており、いつの間にかいつもより森の深い所まで入っていた。深いといってもまだまだ入り口付近である。



ガサッ。


ラビットが3匹、草むらから現れたが、俺を無視して、一目散に茂みに逃げていく。


次の瞬間、「ワオーン」ウルフよりも少し声が低く重低音の遠吠えが聞こえた。個体差によって、ウルフの声も多少違うだろうが、明らかに違う種類だ。


そこには、ウルフ8匹と全身真っ赤な毛をしたレッドウルフ1匹が姿を表した。



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