第37話 お金で買えないモノ


結局、俺は東の森の調査を引き受ける事にした。


追加報酬は調査の出来にもよるが、だった。余り目立った行動はして来なかったので、銀プレートへなるのは相当先のことかと思っていた。


銀プレートを持っていれば、冒険者ギルドなどで絡まれるリスクが減ると思っている。銀は中級者冒険者であり、ギルドからある程度実力を認められている。


青から銅へなるのは割と簡単であるが、銀になるには、実力と実績が必要だ。召喚士の俺が銀プレートになるには中々大変な事である。


その為、今後の事を考えると今回の話は大きい。ただ、今回の調査で銀プレートに相当するだけの情報提供が必要になってくる。無理はせずにある程度有用な情報を提示する…。


結構大変な事である。




・・・・・



早速森へ潜る為の準備を整えてから、目的地へ向かう。やはり、東の森からは、嫌な気配が漂っている。


今回の目的は調査以外もあると思っている。それは、冒険者の救出や援護だ。


現在も何も知らずに森でモンスターと戦っている冒険者もいるだろう。率先してモンスター狩りしているPTは放っておけばいい。


ただ、ピンチに陥っているPTは手助けしたいと思う。更に既に囚われている冒険者がいた場合はその救出も必要だと思う。




油断はしないで、今回は最初から全力でいく。いつもの訓練用のオモリは全て外して収納してある。


やはり、モンスターの数が多過ぎる。比較的森の浅い箇所にもゴブリンが多数いた。既に10以上は狩っている。


更に1時間ほど調査をすると、戦闘の跡や冒険者の遺体も数体見受けられた。食べ残しの肉片しか残っていないので、正確な人数は不明だ。


ただ、複数のPTが敗れている事がわかる。


ゴブリンの討伐数は1時間で既に100を超えただろう。それでも嫌な気配は消えない。


良かったの悪かったのか、戦闘中のPTと遭遇する事は無かった。多分、冒険者ギルドで注意勧告が出ているのだろう。


更に1時間ほど調査すると「イヤー、っあ。」「きゃー。」「やめてー。」「っあ、っあん。」などと複数の女性が囚われて犯されている場所を発見した。


ゴブリンが女性に覆いかぶさって、腰を必死に動かしている。「ゲスが…。」アミノさんがあんな事なっていたら…考えるだけで胸糞が悪くなる。


近くには黒い魔力溜まりがあった。本などの知識で知っているが見るのは初めてだ。


「こりゃ、最悪な状況だな…。」


女性が犯されている状況も最悪だが、この状況を放っておくとモンスターが膨れ上がりスタンピートと呼ばれる現象になる。


大勢のモンスターが一斉に町や村を襲うのだ。


そして、その集団の中に何やらゴブリンとは思えない体格で派手な鎧を纏ったモンスターが現れた。ゴブリンソードだ!!


ゴブリンソードは間違いなく上位のモンスターだ。今の俺ならどうにかなるだろうか…。


女性達はこのまま放っておくと、取り返しのつかない事になるのは明らかだ。全員を倒す必要が無いから、やり方によっては助けられるか…。






俺はなるべくゴブリンに見つからないように女性の近くまで移動する。


一気に詰め寄り女性に覆いかぶさっているゴブリンを次々に駆除する。運が良い事にゴブリンソードとの距離は離れていた。


「大丈夫か!助けに来た。とりあえず、動ける者は自力で移動してくれ。」


「「「「・・・・。」」」」


回復魔法を掛けてやると、へたり込む者、泣き出し発狂する者、逆に報復しに奮い立つ者など様々だ。


ゴブリン達はそれに気付き迫ってくる。俺は周囲にファイアボールを放ち、爆発に乗じて女性達と移動する。


何とか俺達は予め用意してあった荷車の場所まで移動した。そこには武器類を置いて用意しておいてある。一応、冒険者なので、何かの役に立つと思ったからだ。


5人のうち2人はこの場を切り開く為の戦力になりそうだ。3人は精神的にもダメそうだ。


動けない者は荷車に乗せて運ぶ。ただ、それを黙って見送ってくれるゴブリン達では無い。




そんな都合の良く逃してはくれない。


凄まじい殺気が上空から迫るのを感じると、そこにはゴブリンソードがいた。ジャンプして一気に間合いを詰めつつ、大剣で切り付けて来た。


俺はゴブリンソードの強烈な一撃を何とか剣で受け流す。受け流した大剣が地面に当たり、物凄い音と共に地面が砕けた。


俺は彼女達を庇う様に位置取り、指示を出す。


「こいつは俺が何とかするから、どうにかここから逃げろ。後で必ず追いつく。」


ただ、彼女達は先ほどのゴブリンソードの凄まじい力を目の当たりにして、希望を失っている様だった。


「・・・無理よ。あんなヤツにかなうわけ無いわ。」


「っち。」


彼女達は心まで折られている。


俺は【フェアリー】を召喚して、周りのゴブリン達を攻撃させた。それと同時に俺は、勝ち誇った顔をしているゴブリンソードへ向けて一気に間合いを詰める。


俺はなるべく目立つ様にゴブリンソードへ目掛けて、振り上げた剣を叩き付けた。


ガキンと大きな音がなる。ゴブリンソードは俺の攻撃に押し負けて片膝をついたが何とか耐えている。


俺はゴブリンソードの腹へ思いっきり蹴りを入れて吹き飛ばす。そして、追加でファイアボールを放つ。ドドドーン。



「「「・・・。」」」


彼女達は何が起こったのか理解出来ずに呆気に取られている。


「分かったか!?俺はゴブリンソード何かより強い。アイツを倒したら直ぐ追いつくから、そのフェアリーと一緒にとにかく遠くへ逃げろ。」


「「はい。」」


全員の目に光が戻り、荷車を置いて彼女達は町を目指して走っていった。




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