飛躍編
第36話 副ギルド長
転生100日目の朝。
このモード町に来てから、あれよあれよの間に1ヶ月以上が経過した。
普通に冒険者ギルドを活用しているが、別に【グリフォンの翼】が訪ねてくるなど無い。生きているか死んでいるか分からない冒険者の情報全てを各都市の冒険者ギルド間で共有化など不可能である。
魔法でパパッと管理されるなら良いのだろうが、そんな便利な訳もない。
魂に殺人の記憶が刻まれておらず、その確認と身分証代わりのギルドプレートが有れば、大抵どの町でも生活出来る。
冒険者の稼ぎの方も特に問題なく順調だ。余り狩すぎて目立たない程度に調整して納品している。
ハイラビットやウルフ4〜5匹を長槍に垂らしながら持参。それ以外は討伐部位を切り取って冒険者ギルドへ納品している。1日で大体銀貨3枚程度の稼ぎだ。これだけ有れば、十分な生活と貯蓄も出来る。
因みに討伐部位を切ったモンスターは肉卸店へ持ち込んで乾燥肉へ加工して貰いそれを運び屋スキルに保管している。
やろうと思えば、全てのモンスターを運び屋スキルに収納して冒険者ギルドへ納品も出来るが、そうすれば目立つのためやらない。
ここ最近、特にクレリックジャクの『治療スキル』を獲得してから、魔力の成長が激しい。嬉しい事である。
ファイアボール(消費2)40発+ファイアアロー(消費1)5発(魔力値41→85)。因みに回復魔法は消費2くらいの換算だ。
身体強化スキルの成長は、岩の重量上げ190kgは余裕、230kgが限界。垂直跳びは200cm。着実に金プレート並の身体能力をつけ始めた。
更に身長も5cm伸びて168cm→173cmほどとなった。日本人時代の身長に近付いてきている。
アミノさんとの関係は、まあ現代日本で言うと友達以上恋人未満って感じだ。
関係は良好である。ぼちぼちお互いの家に泊まりに行き交う間柄だ。まあ、日本人でもあり得るよな。体の関係がある女友達くらい・・・。
ただ、こっちの世界だと、一夫多妻は多々ある事なので合法だ。アイスラン町に気になる子がいる事をアミノさんに伝えてあり、それでも今の状況だ。今後の関係について後々話し合う課題はあるけど・・・。
異世界に転生したのだから、自分の特になる事はどんどん活用するつもりだ!合法的にハーレムを形成できる。そこまでするかは、まだ定かでは無いが。
とにかく、エドに生まれ変わってモテてる?とは感じる。まあ、俺が見てもイケメンだと思う。
(エドは実際にイケメンなので、モテてる。)
今日はいつもの様に森で狩りをしているが、いつもと雰囲気が変わっていた。最近何か嫌な感じが漂っていたが、今日は特別に嫌な予感がする。
ここ2日間土砂降りの雨が続き、森は入っていなかったのが原因かも知れないが、それにしても嫌な感じだ。
いつもより、体に纏わりつく空気が重く感じる。
ヒュッ。
不意に飛んできた弓矢が俺の右肩に当たった。ただし、俺の身体強化スキルを突き破るまでの威力は無かく、弓矢がポトリと地面に落ちた。
身体強化スキルにより、皮膚が鉄の様に硬くなり、強靭な防御力を得ている。その防御力は、裏を返せば攻撃にもなる。
シキの様な絶対物理耐性がある訳では無いが、銅プレートや銀プレートの冒険者相手なら、それに近い事を行える。
俺は運び屋スキルから石を取り出して、矢が飛んできた方向へ向かって思い切り投げた。
「ギギガアー」
ゴブリンらしい叫び声と、人が倒れる様な音がした。それと同時に木の上から、無数の木の槍が俺目掛けて降って来た。
嫌な気配が森全体に回っており、気付くのが遅れたが、周囲にはゴブリンの集団がいる様だった。
俺は無数の木の槍を躱したり払い退けながら進むと、次々とゴブリンが現れた。それを次々に切り捨てて行く。
30匹は切り捨てただろうか。まだまだ、嫌な気配は消えない。逆に嫌な気配が強くなるくらいだ。
周囲からはゴブリンの声が無数に聞こえて来る。明らかにおかしな状況だと思う。一旦俺は倒したゴブリンを運び屋スキルへ収納して、この場を後にするのだった。
冒険者ギルドへこの事を報告しに行くと、他の冒険者も同様な状況に陥っていた。多数の冒険者に被害が出ており、ゴブリンの集団に捕まり連れ去られる冒険者もいた。男は食料にされ、女は犯され繁殖の道具とされる。
俺は冒険者ギルドの受付けで、30以上のゴブリンの討伐部位を提示した。
「俺からも報告だ。東の森で無数のゴブリンに遭遇した。とりあえず、適当に討伐して来たが、全然減った感じはしなかった。」
「っえ。エドさんはソロですよね!お一人でこんな討伐したんですか?」
「そうだが、そんな事より、東の森に大きな異変が起きているのは確かだぞ!」
「っあ、はい。その事は他の冒険者からも情報が上がっております。エドさん以外にも多数のPTから報告が来てます。被害も大きく、その対応に追われています。」
「そうか、これ以上被害が拡がらなければいいが…。」
「そうですね…。今は一刻も早い状況確認が必要です。」
「分かった。討伐部位の報酬はまた後で良いからよろしく頼む。」
そう言って立ち去ろうとすると、思いもよらない所から声が掛かった。
「ちょっと、待って頂戴。」
「副ギルド長!どうしたんですか。」
副ギルド長と呼ばれている女性は、俺の方を見ている。
「え?俺の事か?」
「そうよ、貴方に用があるわ。えっと…。」
「ああ、俺はエドだ。銅プレートの冒険者だよ。1ヶ月ほど前からモード町にお世話になっている。」
「そうなのね。私はこの事冒険者ギルドの副ギルド長を任されているリディアよ。早速だけど、エド。あなた・・・・銀プレート並の実力はありそうね…。」
「・・・。」
俺は肯定とも取れる沈黙をする。そうすると、副ギルド長はそのまま話を続けた。
「そこで、東の森の調査をお願いしたいのよ。あくまで、自分の命を優先させて良いわ。やれる範囲で調査して頂戴。報酬は最低銀貨10枚。情報の内容によって追加報酬を出すわ。」
「・・・金以外のメリットは?その程度の報酬では正直受ける気にならない。」
「そうね・・・だったら・・・・。」
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