第9話 助っ人
転生4日目の朝。
朝起きてからも『忘却の騎士』が憑依した状態と比べると体が重い。ただ、今朝は早くに起きて宿の裏で、木刀の素振りを開始した。
何か、昨日より木刀を扱う感覚が分かった気がする。体も自然と動くし、剣速も早くなり鋭くなった気がする。
仮説だが、自分で努力すれば、覚えた身体強化スキルと剣術スキルを徐々に自分のモノに出来るのだろう。
そうなると、今日から毎朝晩に訓練だな。腕立て、腹筋、スクワットなどの筋トレを30分。木刀での素振りを30分は最低行うようにしよう。町と西の森の間はランニングだな。
西の森に入り、いつもの狩り場と違う場所へ移動する。一箇所で狩りをしても獲物が減ってしまうことを恐れてだ。エドの知識からは、そんな考えは無いようだが・・・俺が気にしているから場所替えだ。
今日からは俺一人で戦ってみるつもりである。ただし、万が一の可能性があるので、『忘却の騎士』を召喚士して護衛に付けている。
早速、目的のハイラビットが現れた。ハイラビットは可愛い見た目と裏腹に脚力が強く鋭い頭突き攻撃で相手を骨折させてしまう。
身体強化スキルを得ているからといって、侮れない相手だと言える。
先程ここに着いた時に身体能力を図るために岩を持ち上げてみた。憑依スキルを使った時の半分程度の大きさの岩(約50kg)はある程度余裕だった。更に一回り大きい岩(約70kg)はギリギリ持てた。
通常の状態だと、30〜40kgのものを持ち上げるのがやっとだろう。現時点で倍くらいの身体能力が出ているって計算だ。
鋭く踏み込んでハイラビットの首筋目掛けてナイフを振り抜くが、ハイラビットは紙一重で俺の攻撃を躱わす。ハイラビットは躱した反動でちょっと体制を崩すが、直ぐに立ち直り持ち前の脚力を生かして頭突き攻撃を仕掛けてくる。
少し冷静になると対処が出来る。ハイラビットの攻撃を躱し、着地点を読み追撃を仕掛ける。今度はハイラビットの首筋をナイフで切りつけ大量の血を撒き散らして、ハイラビットは倒れた。
「ふぅ〜〜〜。まずは一匹だな。冷静になれば、何とかなる相手だな。」
ハイラビットを近くの川へ沈めて冷やしておく。そして、また違うターゲットを探しに森を彷徨く。
5時間もする頃にはハイラビットを5匹仕留める事ができた。時給3,000ニルになる。今回はラビットと多く遭遇した。
タンクさんの肉卸店を訪問して売却すると、いつもの単価で15,000ニルを得た。
「エド、そういやよ。お前って結構力が強そうだな。」
タンクさんが何故か急にそんな話を振ってきた。
「っえ、そうですか?」
「おう、ハイラビットを今日は5匹も袋に入れて運んで来てただろ。1匹5kgだとしても25kgだ。以前なんて8匹いただろ。」
「そういえば、そうですね。8匹くらいまでならどうにかなりそうですね。でも、アレが限界に近かったですよ。」
実際は、憑依スキルを使っていたので、100kg以上は余裕だが、そんな目立つことは秘密にしておく。
「・・・そうか、だったら明日から少しの間、解体した素材の運搬を手伝ってくれないか?ちょっと、運搬担当が熱出しちまって休んでるんだ。」
少し考えたが、いつもお世話になっているタンクさんの頼みだし引き受けることにする。
「・・・う〜ん。わかりました、いいですよ。タンクさんにはいつもお世話になってますんで。」
「そうか!ありがとうよ。だったら、明日は8時にここに来れるか?」
「大丈夫です。」
「だったらよろしくな。」
「わかりました。」
この世界に来て4日目だが、朝8時は十分に余裕がある時間だ。夜寝るのが早いので、朝5時頃には目が覚めてしまう。そこから1時間の訓練を行い、準備、朝食をとっても十分である。
今日は宿屋に戻ってから、夕食後に時間が十分あったので、訓練時間を長く取った。早くこの身体強化スキルと剣術スキルを自分のものにしたい。1に努力、2に努力である。何事も日々の積み重ねだ。
なお、宿屋は数泊分を追加で払っており、引き続き同じ所に滞在している。
◇◆◇◆◇◆
転生5日目の朝。
肉卸店へつくとタンクさんが出迎えてくれた。
「おはよう。時間より早いじゃねぇか。ちゃんとしている奴は嫌いじゃないぜ。」
「おはようございます。まあ、時間にはしっかりしている方ですよ。」
「こっちへ来てくれ。」
タンクさんが素材倉庫の方へ誘導してくれる。既に3人の従業員がおり、1台目の荷車に素材を載せ終えていた。あと台車が2台あり、そこに今から2台目の台車へ荷物を積み込もうとしている。
「お〜い、ちょっと来てくれ。」
タンクさんが3人の従業員たちを呼び寄せる。俺を見た3人の従業員がちょっとがっかりしたようにテンションが下がった。
「こっちはエド。今日、助っ人で手伝いに来てくれた期待の新星だ。サンドの代わりまでとはいわないが結構力持ちだから期待してくれて良いぞ。」
「「「・・・はい。」」」
そのサンドって人が病気でダウンした人だろう。この3人は事前のタンクさんの説明で俺への期待感が高まっていてたが、助っ人がヒョロっとしたガキだったので落胆したのだ。
まあ、そう明らかにガッカリされても・・・。まあ、サンドがどの程度の力持ちか知らないが、やることはやるか。
「よろしくお願いします。とりあえず40kgまでなら、余裕で持てますので、指示下さい。」
3人は疑うような目で見るが、タンクさんの目の前なので、何も言わずに「よろしく。」と言ってきた。
「じゃあ、よろしくな〜。」
タンクさんが立ち去った後に作業開始となった。
「僕はラリス。とりあえず、エドくんは運搬班へ混ざってくれ。3人が運搬班で1人が積込班だ。運搬班が運び出している間に、積込班が2台目の台車へ荷物を積込準備しておく。運搬班が荷下ろしを終えて戻って来たら、荷積みが終わった台車をまた運んで行く流れだ。」
「分業になっているんですね。分かりました。」
分業になっていて、効率は良さそうだ。俺は何を載せたら良いのか分からないし、運搬班一択だろうな。後の3人は、順繰り交換って感じかな。
「じゃあ、皆気をつけて運搬してくれ、よろしく頼む。」
「「「はい。」」」
そういって目的の商店へ向かった。道中は変なイベントが発生する訳もなく、順調そのもの。問題なく目的地へ着いて、荷を卸すことになった。
「エドくんは、軽い物からどんどんと運び出してくれ。置く場所は、倉庫番の人に確認してね。」
「了解しました。じゃあ、適当に軽い物からどんどん運んで行きます。」
「うん、よろしく頼むね。」
「はい。」
手前にある軽くて落としても破損しなそうな毛皮などの素材を中心に荷卸ししていく。軽いので一度の相当な量を持って、移動させては指定の場所に次々と置いていく。
俺のまだヘナチョコな身体強化スキルでも十分であるが、一度に30kg〜40kg程度を運んでいると、結構良い訓練になる。
ラリスさん達が2人で重い物を1往復する間に、俺が軽い物を3〜4往復していると、あっと言う間に軽い物を運び終えてしまった。ラリスさん達は俺の姿を見て、唖然としている。
「ラリスさん、軽いものは運び終わったんで、こっちの奴も適当に運び出しますね。」
「・・・う、うん。よろしく頼むね。」
「はーい。」
次に鉄製の素材?が入った50〜60kgありそうな木箱を1人で運ぼうとしたとき。
「エドくん、それはちょっと一人じゃ・・・。」
俺は、木箱を持ち上げて少し運び始めたところで、ラリスさんから声を掛けられて、振り返って返事をした。
「これは運んじゃマズかったですか?」
「・・・・いや、大丈夫だよ。よ、よろしくね。」
「了解です。じゃあ、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう。」
それから、次々と積荷を卸していき、予定の1/4ほどの時間で荷卸しが完了した。
「これで、一旦戻るんですよね?」
「・・・そうだね。」
「じゃあ、戻りましょうか!」
そういって、3人で肉卸店へと戻っていくのだった。
肉卸店で2台目の台車への積込が終わっておらず、俺が手伝ってあっとゆう間に終わらせた。そして、2台目の運搬でもさっさと荷卸しを終わらせてしまい。
結局1日で完了させる予定が、半日も掛からずに終了してしまうと言う快挙を成し遂げた。
予定の作業が完了したので、銀貨1枚貰って、俺は昼飯にマリアさんの所を訪れてから、西の森に足を運んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます