第24話 襲撃 前半


ここ20日間、ただ遊んでいた訳ではない。


だいぶスキルも強化された。本当に訓練ばかりしていた。それは、マリアさんから俺を探している集団がいる事を知らされたからだ。



ファイアボール12発+ファイアアロー5発(魔力値19→29)。岩の重量上げ130kgは余裕、170kgが限界。垂直跳びは150cm。


魔力も身体強化スキルも高まっている。更に魔力値が増えると共にその威力も徐々に上がった。のファイアボールは隠し球だが、直径80cm程の大穴が開く威力だ。


ゴブリン討伐に至っては、10体程の集団なら余裕を持って攻略出来る。対人戦へ向けた多少のウォーミングアップだ。


身体強化スキルは既に『忘却の騎士』と憑依した時に匹敵する。2ヶ月経たないまでに結構成長した。


見た目も少しずつだが変わった。成長期だろうか、20日足らずで身長が164cm→168cmへアップした。そして、身体も程よく筋肉がつき始めて細マッチョの様になり始めた。



そしてお待ちかねのガチャは、『運び屋ブリン』という召喚獣を引き当てた。本当に当たりだ!


何と異世界転生ご用達の収納スキルだ。この召喚獣は戦闘力が皆無な代わりに、さなざまな物を持ち運んでくれる。


何度も物を出し入れして、『運び屋スキル』に慣れていく。使用方法や原理などを体に理解させていく。3日間暇な時は運び屋スキルを使い続けた結果だ。


『運び屋スキルを獲得しました。』


運び屋スキルは魔力を注ぎ込めばその分持ち運べる容量が増える仕組みだ。


試しにやってみると、大体一辺3m程の空間が出来た感じがする。ただ、残念ながら時間経過はある様だ。まあ、そこは今後どうにかしていこうと思う。






それと俺は盗賊達の事を逆に探ってもいる。俺を襲った盗賊達は、このアイスラン町では比較的大きな組織である事が判明した。


厄介なのは、本来は盗賊達を取り締まる側の領主と癒着している。盗賊達が領主に良い様に使われているだけとの解釈も出来るが、用心するに越した事は無い。


この盗賊達はここ1年位で大きくなって、この辺りに幅を利かせている様だ。この手の話は、盗賊達の資金源である娼館で収集した情報だ。


噂話の類やデマ情報の可能性もあるが、この情報を元に他所からの情報と照らし合わせていく。


色々と盗賊達を調べると、少なからず領主と何らかの関係性がありそうだ。


そうなると、どうするかだな・・・。


どっちみち、トリートの件があるので、領主とは敵対する方向であった。ただ、なるべく穏便にだ。今後も孤児院はアイスラン町にあるので、そこには迷惑を掛けられない。


色々と考えてはいるが、何かしらの犠牲が出てしまう結末しか思い浮かばない。いっその事、武力で押し倒すか?今の俺ならと考えるが、流石に無理だな。





転生57日目の夕方。



東の森からの帰り。



・・・・つけられているな。


ワザと路地裏に入り、相手を待ち構える。1つ2つと角を曲がった。次の角で相手を待ち構える。


相手は角を曲がると目の前に俺がいたので、泡立て攻撃を仕掛けて来た。これで、敵なのは確定だな。


ヒョイヒョイと相手の攻撃を交わして、相手の鳩尾を一発殴る。モロに拳を受けた相手は、一瞬動きを止めるが、再度ナイフで斬りつけてくる。


全て躱して4〜5発追加で攻撃すると、相手は敵わないと悟ったのか逃げに転じた。しかし、そんな事を許す俺では無い。


一本背負いの様に相手を投げて、地面は叩きつける。相手は息が出来なくて、苦しがっている。そこを難なく拘束した。ここからが、事情聴取タイムである。




本当にこの世界に慣れてしまったと思う。エドの記憶があるから、人の死が身近に感じているのかも知らない。


血生臭いことは、モンスターの解体で嫌と言うほど体験した。盗賊とは言え、人も殺めてしまっている。大抵の残忍な事は孤児のエドの記憶から共有されている。



果たして、目の前の無抵抗な人間に対しても実行出来るかだな。ただ、相手はさっきまでナイフで俺を殺そうとしていた人物だ。


ここは周りに人気が無い廃墟だ。口には布を噛ませている。


「こんにちは。これから俺がお前に質問する。答える気になったら上を向け。何で俺をつけていた?」


「・・・。」


「そういえば、なぜ盗賊のお前が何で堂々とアイスラン町の中を歩いていれる?」


ちょっとだが、反応があった。


「・・・。」



カマを掛けたが、盗賊なのは正解の様だ。


「俺が逃した無口な男は元気にしているか?」


「・・・。」


そっちじゃ無いか。


「あのヘラヘラ野郎は元気か?」


「・・・。」


こっちもハズレか?


「あっ、そいつは無惨に死んじまったか。悪い悪い。ただの五月蝿い野郎だったな。」


「っ・・・。」


ちょっと怒気を感じる。やっぱり、あいつの仲間か。となると、コイツらは領主と繋がってるんだよな。



「何か喋ってくれよ。」


フェアリーを召喚して、右足にファイアアローを放つ。


「うぐぅー。」


「何で俺をつけていた?何を企んでいる?」


盗賊は首を横に振っている。


「そっか、ちょっと痛くなるぞ。」


盗賊を地面に仰向けに寝転ばす。そして、左足の上に運び屋スキルにしまってある直径1mほどの巨大な岩を勢いよく落とす。グシャ。っと鈍い音が鳴った。


「ウグゥ〜うーうー。」


「何かまだ喋れないか?」


俺は同じ大きさの岩を持ち上げて、盗賊の下半身部分で停止させる。


「間違って手を離しちまいそうだ。おっと。」


ドガン。盗賊の右足に落ちてしまった。


「すまんすまん。落とす手が滑っちまった。まだまだあるから、心配するな。」


「うーうーうー。」


「喋る気になったか?」


盗賊は首を必死に前後に振っている。


「今から布を取るが、俺の質問以外は喋るな。もし、喋ったら次は右腕に岩を持たせてあげよう。」


コクンコクン。盗賊は必死になっている。



そこからは素直だった。が、こんな事をしている暇は無かった。既に盗賊達は俺の事を突き止めて、今まさに孤児院を襲撃しているとの事だった。


コイツは廃墟になった孤児院を俺に見せるために俺を捕まえる役目だったらしい。


ただ、あの盗賊はフェアリーによって跡形もなく消し飛んでその役目は果たせない。



俺は全力で、孤児院へ向かって走るのだった。



「間に合ってくれ。」



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