★グリフォンの翼②


<ホタン視点>


エドをPTから追い出してから約2ヶ月が経過した。報酬が良いダンジョンのクエストはあれからも失敗続きで、蓄えが底に尽き始めている。


最近は、銅プレートが受けるような仕事をこなしてどうにか、PTハウスと最低限の生活を維持している。そこら辺の落ちぶれた銀プレートと同じような状況だ。


「すべてあいつエドが居なくなったのが原因なんだよ。死んだのに俺達に迷惑ばっかり掛けやがって!」


ドッカっとPTハウスの机を蹴飛ばす。


「ちょっと、ホタンやめてよ。こっちまでイライラしてくるじゃない!そもそも、アンタがクズを追い出すって言ったのが悪いのよ!!」


「確かにな。」


「は〜あ?お前たちもクズに金を払いたくないとか言ってただろうが。だったら、俺がエドを追い出すって言った時に何で反対しなかったんだよ!」


「そ、それは、アンタがリーダーだからその提案に乗ったまでよ・・・。でも、殺すこと無かったでしょ。あのまま生かしておけば、また引き戻すことも出来た訳だし。」


「そんなの仕方ないだろ。もう、死んじまったもんわ!ちきしょー苛つくなぁ〜。」


「ホタンもカレンも喧嘩はその辺にして、少しはこの部屋を片付けてくれよ。担当を持ち回りで決めたのに、結局僕しかやってないじゃないか・・・。」


「「ピットそれは頼んだ。(よろしく。)」」


最近、いつもPT内で喧嘩ばかりだ。何度か臨時でPTメンバーが加入したが・・・上手くいかなかった。



明日も2人臨時PTを組みダンジョンへ潜る予定だ。俺達と同じ18歳の男女だ。銀プレートで、斥候(男)と魔術士(女)のコンビだ。


ダンジョンには何度か臨時PTを組んで挑戦した事があるらしく、お荷物にはならないだろうと考えている。


上手くいけば、そのままPTへ加えることも検討している。




◇◆◇◆◇◆



「っくそ。何でなんだよ。」


ダンジョン探索3日目、地下5階層。俺達は、手傷を追って、ゴブリンナイト率いる軍団に遭遇して、逃走している。


「そうよ。久々にここまで順調に潜って来れたのになんで、ゴブリンナイトの集団なんているのよ。」


「それは、いつもカレンが指示してくれた道を進んで回避してたんだろうが!何で今日はこの階層であんなゴブリンナイトの集団に出くわすんだよ。」


「だから、いつもはあいつエドが事前に6階層までの順路を渡してくれるのよ。だから・・・。」


「カレン、ダンジョンの順路について調べて来なかったのかよ!」


「ピットまで怒らないでよ。仕方ないでしょ。あれから色々と調べたわよ、でも5階層にゴブリンナイトの集団がいるなんて知らなかったんだもん。」


「確かに、それはそうだな。あんな強敵なんて今までこのダンジョンじゃ出くわしてないから、運が悪かったな・・・。」


「「っえ・・・。」」


臨時で入った2人が呆れて言葉を失っている。



(それはそうである。【グリフォンの翼】のメンバーは意外とすんなりとトントン拍子にランクが上がり、銀プレートになっている。


それも、エドが色々と情報を集めて、要領良く最短ルートを辿ってきたからだ。勿論、ある程度力は無いと銀プレートには成れないが、ダンジョンの知識はエドが全てを蓄積している。今の残るメンバーは殆ど無い。


しかも、自分たちをエリートと思っているフシがあり、他の冒険者などを軽視しているので、周囲から嫌われている。更に自分たちはプライドがあるので、中々他人へ頭を下げて情報を貰うことも出来ない。


例え彼らが頭を下げたとしても、素直に他のダンジョンの情報など手に入らない・・・。実際、カレンが今回のダンジョン攻略に伴い情報収集を行っているが、肝心のゴブリンナイトの情報は手に入らなかった。)


「おい、ホタンさんふざけてるのか?今までアンタ達はこのダンジョンに何度も潜っているんだろ?何でこんな俺でも知ってるゴブリンナイトの情報を知らないんだ!!」


「そうよ、この地下5階層では、ゴブリンナイトの集団を如何に回避することが重要だと、私でも知ってるわ。その情報が何で知らないのよ!!」


「っは?何言ってんだ。俺達は今まで地下5階でゴブリンナイトなんて遭遇してないぞ。お前たちこそ何言っているんだ!」


「それはこっちのセリフだ! だから、これまでの冒険でそれを回避して地下6階まで進んで来たんじゃないのか?」


「「「「・・・・。」」」」


【グリフォンの翼】の面々は、互いに見つめ合っている・・・。


「カレン・・・どうなんだ?」


「確かに、エドから渡される地下5階層のルートには、常にドクロマークが記載されてたは・・・。毎回その位置が変わっているから、可笑しいとは思っていたが、その正体までは気にしていなかった。」


「「「っち。」」」



今日臨時加入してくれた2人の顔つきが変わった・・・。


「なあ、アンタ達は本当にこのダンジョンの常連なのか?はっきり言って、戦闘はギリ銀プレート級。だが、決定的にダンジョンの情報や冒険者としての常識が欠落しているよ。俺達はベテランの冒険者PTと聞いたから参加させてもらったが、もう引き返させてもらう。」


「っは?契約と違うぞ!そんな勝手は許さない。ゴブリンナイトの件が無ければ、順調そのものだった。これから地下6階層で素材を収集すれば、十分の元が取れる!!契約違反なんてさせん。」


「何を言っている。契約違反なのは、アンタ達だろうが!安全に地下6階層まで進めて、そこで素材を確保できると説明を受けているぞ。」


「そうよ。こんな地下5階層のゴブリンナイトの常識すら持ってないのにどうなるのよ。まさか地下6階層の一番の危険事項も知って無いんじゃないでしょうね?」


「「「「・・・・。」」」」


ホタン達【グリフォンの翼】の間に沈黙が生まれる。


「っえ!本当にあのことを知らないの・・・。」


「行くのはアンタ達の勝手だが、あの地下6階層の情報を知らないなら、数人は死ぬのを覚悟するんだな。その時後悔しても知らないぞ。俺達は降りる。」


臨時参加PTの2人は、もうそれ以上何も言わずに引き返していった。




その後、士気を大きく下げた俺達は命からがらダンジョンから脱出したのだった。


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